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[ ハードボイルド ] クランシー・ロス無頼控 |
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リチャード・デミング | 出版月: 1963年01月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 3件 |
早川書房 1963年01月 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2017/02/01 22:55 |
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どうせ通俗ハードボイルドを読むんなら、おもいっきしマンガみたいなのがいいよ。本作だったらどうだ、クランシー・ロス、人気ナイトクラブの経営者で、女に強いがヤクザにも強い。町のボスの風下に立たない一本独鈷で男前、会う女会う女に惚れられるが絶対本人は惚れず全部遊びで、殺し屋に背後から襲われても切り抜けるスゴ腕...とくればまあ、完璧超人である。「陶器を思わせるブルーの瞳」とか「左のあごを走るほそい傷あと」とか、こういうクリシェと唯一の乾分サム・ブラックをお供に大活躍。「トラブルは俺の商売だ」とでも言いたいくらいにトラブルの方がクランシーにご執心で、基本巻き込まれ型である。
ま、アタマを空っぽにして読む娯楽小説としては、クランシーがカッコよければそれでよし。そういう面では大の合格点。「酔いどれ探偵町を行く」もそうだけど、本作も訳者の山下諭一が、翻訳というよりもローカライゼーションって感じのいい売り方をしていて、これが成功している。「無頼控」ってタイトルからして柴錬インスパイアなんだし、最初の短編も原題が「The War」なのが「おれのお礼は倍返し」になる..というこういう翻訳を超えたウリな感じが「いい時代だったね!」という感じで何がうれしい。駄菓子って言えばホントに駄菓子で、 このお女性も、この部屋には何度も出たり入ったりしているはずだぜ。びっくり箱のお人形みたいね。 「お女性」って言い回しに下品な味があって実にイイ。 |
No.2 | 6点 | mini | 2015/06/16 09:57 |
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* 私的読書テーマ”今年の生誕100周年作家を漁る”、第7弾はリチャード・デミングだぜ
通俗ハードボイルドは長編よりも短編の方が似合うジャンルかもしれない、数多くの短編群がパルプマガジンに掲載され、一部の恵まれた作家・作品は別にして、今では短編集に纏められず埋もれたままになっているものも多い そのハードボイルドの聖地とも言えるパルプマガジンの代表が戦前から有る『ブラックマスク』誌で、初心者やもぐりのミステリーファン以外でブラックマスク誌の名を知らないなんてのは、本格派しか読まずハードボイルドには全く興味無いって読者くらいだろうよ しかし『ブラックマスク』誌は戦後40年代には下火になり残念ながら1951年に休刊してしまったんだな(後に復活するが) ところがこのブラックマスク誌を引き継ぐかのように50年代に登場したハードボイルド専門誌が有ったんだ、その名は『マンハント』誌 当時御馴染みのEQMMやヒチコック・マガジンやマイケル・シェ―ン・ミステリマガジンなどと覇を競ってたってところか 戦前の『ブラックマスク』誌は元々が純文学の出版社が赤字解消のために大衆向け雑誌を別に発行した経緯が有るんだな だからなのか、ブラックマスク誌が通俗な中にも何となく気品の片鱗が感じられるのに対して、戦後に登場した『マンハント』誌は割り切って徹底した大衆文化路線で、下衆、いや通俗の極みみたいな雑誌だったようだぜ 例えば創刊号だと思うが、W・アイリッシュの「ヨシワラ殺人事件」が掲載されているんだな、アイリッシュ短編群の中でもとりわけ通俗調のこの短編、初出自を考えると納得だぜ さて前置きが長くなっちまったが、仁賀のガイド本でも言及しているが、『マンハント』誌に掲載されたシリーズもので特に人気が有ったのが次の2つ 1つはE・マクベインの別名義カート・キャノンの『酔いどれ探偵街を行く』と、もう1つがリチャード・デミングの『クランシー・ロス無頼控』だ デミングには長編も有るみてえだが多作が災いしてか結局はパルプ作家止まりだったようで、今では『クランシー・ロス』だけで知られている印象だ 内容は当サイトでkanamoriさんが的確に書評されてるので、俺っちごときが付け加える事は殆ど無いぜ 山下諭一の翻訳文もなかなか見事、本文も良いが特に題名の付け方が最高だぜ 実は案外と原題名は素っ気無いんだけど、これを「おれのお礼は倍返し」とか「おれの命は買えないぜ」とか、通俗ハードボイルドはこうでなきゃ それにしても”倍返し”って(笑) |
No.1 | 6点 | kanamori | 2012/07/04 23:58 |
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ハードボイルド連作短編集。’50年代に「マンハント」誌に断続的に掲載されたクランシー・ロスもの6編をまとめたものです。
クランシー・ロスは私立探偵ではなく、ある地方都市でナイトクラブと非合法の賭博場を経営する伊達男で、ハードボイルドの主人公としては異色です。 腕っぷしと銃撃は敵なしなうえ、登場する妖艶美女には毎回惚れられるという設定は通俗ハードボイルドそのものですが、いちおう各編ともラストに構図のどんでん返しを用意しているのでミステリ趣向も楽しめます。ただ、仕掛けがパターン化されているので、後半の作品になるとマンネリ感もありますが。 部下のクラブ・マネージャーや町を牛耳る組織のボスなど、脇を固めるレギュラー陣とクランシーとの粋なやり取りも(翻訳の山下諭一氏の功績もあって)連作もの特有の面白さを味わうことができた。 |