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[ SF/ファンタジー ] アンドロメダ病原体 |
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マイクル・クライトン | 出版月: 1970年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1970年01月 |
早川書房 1976年10月 |
早川書房 2012年04月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2022/07/04 23:48 |
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宇宙空間から微生物を回収して、それを生物兵器に転用する米軍の秘密の作戦「スクープ計画」で打ち上げられた人工衛星スクープ7号が、事故で衛星軌道から落下して、ついにはネヴァダ州の寒村の外れに墜落した...しかし衛星の回収に向かった軍人が連絡を絶った! 偵察機による偵察によると、その村人のほぼすべてが絶命しているらしい。「地球外生物がもたらされた場合、その生物を調査・分析して地球上での伝播を防ぐ」ことを目的に定められた「ワイルドファイア計画」が発動されて、ストーン博士以下4人の科学者がその対策のために結集した!血液を血管内で凝固させて即死に至らせる「アンドロメダ病原体」の正体を暴き、有効な対策を見つけてその蔓延を防ぐことができるのか?
映画にもなったマイケル・クライトンの出世作。というか、「ジュラシック・パーク」より前なら本作が代表作だった時期もあるんだよ。 クライトンと言えば医学生時代に書いた医学スリラーの「緊急の場合は」がエドガー賞を獲ったりしたわけだが、典型的な「理系作家」である。それを生かして、本作は架空の科学ドキュメントの要素を取り入れていて、架空の謝辞が入った「まえがき」やら、衛星との通信記録やら、コンピュータからのアウトプット、血液検査のデータなど、臨場感を出すために生のデータをフィクションの中に持ち込む、という手法を確立したことでも有名な本である。言ってみれば「鼻行類」みたいなパロディ学術書のテイストがある。ここらが読みどころ。 さらに、ミステリ的な興味。このアンドロメダ病原体の猛威で全滅した村の中で、赤ん坊と胃潰瘍を患う老人だけが生存していた理由を解明したり、突如その村の上空で墜落したファントム機の墜落理由の謎やら、ミステリ仕立てな「謎」として提示されて解明される。そもそも「生物兵器として、宇宙空間で独自の進化をした細菌を使う」のはスパイ小説的なアイデアだしね。広義のミステリな興趣が結構この小説にあるよ。 それでもまあ、クライマックスの事故とその後始末を巡るあたりで、ちょっとお約束な「段取り」みたいに駆け足なところもあって、もう少しシツコくやってもよかったのかな..とちょっと残念。でも読んで損な小説ではないし、書かれた年代を考慮すれば十分「凄い」小説ではある。 |