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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
三十九階段
リチャード・ハネー /別邦題『三十九の階段』『ザ・スパイ』
ジョン・バカン 出版月: 1959年01月 平均: 6.25点 書評数: 4件

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東京創元社
1959年01月

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No.4 6点 蟷螂の斧 2021/03/26 17:35
(英20位、米22位)1915年の作品。巻きこまれ形の冒険小説です。ノスタルジックな雰囲気を味わうにはうってつけの作品。当時は手に汗を握ったのかもしれませんが、現在ではユーモアたっぷりの作品と感じられます。登場人物も、描かれている風景もいいですね。
(参考)ランク(11位~20位)は『史上最高の推理小説100冊』(1990年英国推理作家協会)と『史上最高のミステリー小説100冊』(1995年アメリカ探偵作家クラブ)の順位を単純に合算したもの。()は(英)(米)の順位<> は参考として日本の「東西ミステリーベスト100」《2012年》〈1985年〉の順位。点数はマイ評価と本サイト平均点(本日現在)
11位『さらば愛しき女よ』レイモンド・チャンドラー(7)(21)《79》〈13〉6点 6.37点
12位『長いお別れ』レイモンド・チャンドラー(15)(13)《6》〈3〉9点 7.64点
13位『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティ(19)(10)《1》〈4〉10点 8.69点
14位『薔薇の名前』ウンベルト・エーコ(13)(23)《7》〈—〉6点 7.70点
15位『ジャッカルの日』フレデリック・フォーサイス(17)(20)《17》〈12〉7点 8.17点
16位『ディミトリオスの棺』エリック・アンブラー(24) (17)《—》〈71〉5点 6.80点
17位『三十九階段』ジョン・バカン(20) (22)《—》〈—〉6点 6.25点
18位『郵便配達は二度ベルを鳴らす』ジェームズ・M・ケイン(30) (14)《—》〈56〉8点 6.54点
19位『ナイン・テイラーズ』ドロシー・L・セイヤーズ(18) (28)《45》〈—〉8点 7.00点
20位『推定無罪』スコット・トゥロー(48) (5)《29》〈—〉5点 7.00点 
*1位~10位は「マルタの鷹」ダシール・ハメットの書評に記載

No.3 6点 クリスティ再読 2021/02/26 14:55
大古典スパイ小説。なぜ今までお二方しか書いてないんだろう...って評者びっくり。
皆さんご指摘の通り、本作は緩めで乾いたユーモア感あふれる、ハードなくせにのほほのんとした良さが溢れる冒険小説。イギリスの北部の田園地帯を駆け回る、何か「人口密度が低い」面白さ、というものを評者は感じたりするのだ。人と戦うよりも、スパイという野獣か自然現象と戦っているような面白さ、なんだろうか。
いや日本って人口密度が高いからか、どうもせせこましくて、世知辛い。本作ってそういう国民性から見ると対極にあるのでは...なんて思う。シビアな国際政治と陰謀を扱っても、どこか大らか。しかも、主人公のハネーくん、南アフリカの国外植民地出身で、イギリス人とはいえ、島国根性はカケラもなし。だからかね。

昔話だけどスパイ小説がもてはやされていた時期に、誰だったか左翼的な見地でスパイ小説を愛国小説みたいに捉えて批判した人がいたんだが、まあそんなの大人気ない、はその通り。でもグリーンとかアンブラーはガチに左翼なんだけどね....で、逆にそういう見方をするときに、本作みたいなのは「実に健全なスパイ・スリラーの代表」という気もするんだよ。
神経症的に周囲の人を外国のスパイ、と見るようなのが、各務三郎が「現代版恐怖小説」と化したとする「病的なスパイ小説」だとすると、本作が追及するのはあくまで「イデオロギーのクサ味も、政治的主張も、まったく関係なしに万人受けする、コモンセンスな面白さ」だ。エンタメで読み捨てても悪影響なんて、まるでなし(苦笑) イギリス人の国民性のいい部分だけが出たような小説である。いいじゃないか。

No.2 7点 人並由真 2019/03/24 04:00
(ネタバレなし)
 「僕」こと37歳のリチャード・ハネーは、6歳の時に父に連れられて英国から南アフリカに渡った。その後、当地で鉱山技師として一門の財を築いたのち、故国のロンドンに帰参した。だが特に親しい友人もいないロンドンはえらく退屈で、また南アフリカに戻ろうかと思案する。しかしその年の5月、ハネーと同じアパートの5階に住む、会えば挨拶する程度の間柄の男フランクリン・P・スカッダーがいきなり訪ねてきて、協力を求めた。スカッダーの話の内容は、ふとしたことから、さる秘密結社が、近日中に訪英するギリシャ首相コンスタンチン・カロリデスの暗殺を企てていると知ったという。だが考えあって警察には行けない。生命の危険まで感じたスカッダーは、身代わりの死体で己の死を偽装して時間を稼ぎ、対抗策を練るので、ハネーの部屋を隠れ家に使わせて欲しいというものだった。ぶっとんだ内容に相手の正気を疑うハネーだが、確かにスカッダーの部屋には闇ルートで調達したという行き倒れの浮浪者の死体があった。これで退屈な生活ともおさらばになるかと思ったハネーはスカッダーの協力要請に応じるが、間もなくそのスカッダーは何者かに刺殺されてしまう。殺人容疑者となったハネーは官憲と謎の秘密結社の追跡をかわしながら、事態の打開を図るが……。

 1915年の英国作品。ヒッチコックの映画『三十九夜』の原作にもなったエスピオナージュの古典名作。内容と現実の史実を照応すれば歴然だが、第一次世界大戦が勃発した1914年の世界情勢を背景にした作品でもある。

 それで本作は、たしか丸谷才一だったと思うが1960年代半ばのハヤカワ・ミステリ・マガジン誌上で「この作品をまだ読んでない人が羨ましい。人生の大きな楽しみがまだ手つかずで残っているのだから」とかなんとか、そんな感じで激賞していたのをずっと覚えていた(例によって、評者が古書店で後年に入手したバックナンバーの記事で読んだ記事だが~笑~)。
 まあ今となっては、それももう半世紀以上も前の発言だが、それでもソコまで褒められた古典スパイ冒険小説の名作、これはいつか読まなきゃな、くらいには以前から思っていた。
(本作に続くハネーシリーズで邦訳のある二冊『緑のマント』『三人の人質』もいずれ楽しんでみたいし。)
 
 それで本書の創元文庫版、あるいは角川文庫版を実際に手にした人はすぐ分かると思うが、本作はかなり薄い。今回、評者は創元の「世界名作推理小説大系」版の6巻で読んだが、これにしても二段組みで紙幅約130ページほどの厚さである。それだけにプロットはまあシンプルなのだが、英国の田舎を逃げ回りながら態勢の立て直しを図るハネーの挙動は、ロードムービー風に出会う人々とのエピソードを重ねる形で語られ、そのひとつひとつがいかにも英国流のドライユーモアに満ちていて面白い。ハネーが邂逅した市井の人たちの大半がいい人ばかりなのは都合よすぎるとともリアリティが薄いともいえるが、その独特のゆるめの感覚こそがこの冒険スパイ小説の固有の魅力になっている。
 選挙に立候補するためスピーチの原稿を急いで仕立てねばならないが、それが苦手でハネーにネタの案出とか応援演説とかの助力を願う田舎の青年貴族ハリー卿や、ハネーが変装・身代わりを買って出る工事人夫の老人アレクサンダ・タンブルなど、各人のキャラがいい味を出している。それに応じたエピソードもそれぞれ印象深い。そんな描写にクスクス笑いながら、ああ、なるほどこの作品は、こういうところで勝負していた「名作」だったのか、と認識を新たにした。もちろん、スカッダーがハネーに託す形になったキーワード「三十九階段」の謎とか、秘密結社の暗躍、後半の(中略)作戦とか、ハネーの窮地からの脱出とか、マトモな冒険スパイ小説としての要素(当時なりの、ではあるけど)も相応に盛り込まれているが、何よりこの作品の強みは、物語の随所に浮き出るくだんのユーモア感覚であろう。その意味で、短さをものともしない、なかなか腹ごたえのある作品だ。
 他方、ラストのあっけなさはちょっとどうかと思うところもあるが、ハネーが最後にとった行動は、ロマンあふれる物語世界の中から、書き手も読者も巻き込んでいく当時の現実に帰らざるを得なかった、そんな時代の空気の投影なのだとも見える。そう考えると、鮮烈に作品を引き締めて終えるクロージングといえるか。

 あと、この作品ではまだアマチュアだったハネーは今後シリーズキャラクターになり、英国に献身するプロのスパイ軍人になっていくわけだが、そういう展開を意識しながら読むとその辺の情感もじわりと心にしみてくる。評者が大好きなフレドリック・ブラウンのエド・ハンターものの、その第一作『シカゴ・ブルース』に通じる興趣を感じないでもない。

No.1 6点 mini 2012/02/03 09:59
本日は節分、昨今は恵方巻なる怪しげな?食べ物が巷で流行っている
この恵方巻、関東人には昔は馴染みの無い風習だった
関西では昔からの伝統的行事だったのかなと思っていたが、疑問もある
一説では大昔には全国的に有った風習だが、昭和になって大阪鮨業者組合が復活させた意図的なものだとの話もある
だとするとこの埋もれていた風習に目を付けたのは大阪の手柄なのは否定しないが、関西の人の中には古い伝統という意味では関西でもそんなにメジャーな風習でもないと言っていたのも肯ける

うわ~話が道草だぁ、で、今年の恵方は北北西だそうだ
北北西?
そう聞くといやでもあの映画の題名を思わせるではないか
ヒッチコック自身ではないらしいが某脚本家によるオリジナル脚本で、直接の原作なるものは存在しない
しかし、影響を受けたと思しき作が無いわけでは無い
バカンの「三十九階段」なんてその1つなんじゃないかな、考え過ぎか?
敵のある認識間違いによって追われる立場となった主人公
敵以外にも警察に駆け込んで一切正直に話すわけにもいかない事情を抱えている為、警察からも追われる主人公
途中で飛行機による上空探索を試みる敵
ヒッチコック映画側が何の影響も受けてないと考える方が無理があるだろ
「三十九階段」はスパイ小説の元祖的に言う評論もあり、たしかに背後に政治絡みの意図は働いているんだけど、話の展開自体はかなり冒険小説寄りだ
やはり冒険小説とスパイ小説とは根は1つ
昨今は冒険小説とハードボイルドとを同系統に考える悪しき風潮が有るようだが、この思想は完全に間違ってる
冒険小説とハードボイルドとは全く起源発祥が別物であって、ごちゃ混ぜに考えるのなら冒険小説とスパイ小説の関係の方がはるかに近い
あ~また道草だ~、で「三十九階段」は面白いのかって?、そりゃ書かれ年代を考慮すれば古臭いのは仕方ないよ、でも古さ考えたらまぁまぁじゃないの


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ジョン・バカン
1959年01月
三十九階段
平均:6.25 / 書評数:4