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[ クライム/倒叙 ]
サーカス殺人事件
刑事コロンボ
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 出版月: 2003年03月 平均: 5.67点 書評数: 3件

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二見書房
2003年03月

No.3 6点 人並由真 2020/11/24 15:08
(ネタバレなし)
 経営不振の大手サーカス団「ガーニィ・サーカス」。70歳過ぎの団長ネッド・ガーニィは、興業エージェント、ジョン・ハウスマンの提案を受けて、別の組織との合理化合併を考えた。だがサーカスの花形で、ネッドに養育された綱渡り師の青年リック・バナーは、組織が改組されると自分のスター性が希薄化すると不満だった。リックは女実業家のダイアナ・ゲイツと連携してサーカスの掌握を狙い、同時にネッドの娘の美女アリシアとの関係も深める。そしてリックは、とある特殊な技術で、ネッドを心臓麻痺に見せかけて殺害した。計画はうまく行ったかに見えたが、たまたま甥たちを連れてサーカスに来ていたコロンボが……。

 文庫オリジナルで、小鷹信光が英語のシナリオをもとに執筆した和製ノベライズ。
 もともとは、旧作「コロンボ」シリーズでもファンの評価が高いといわれる二本「祝砲の挽歌」「策謀の結末」を書いた脚本家ハワード・パークが1975年ごろに執筆したシナリオだが、なぜか映像化されずにオクラ入りになっていた話だそうである。
(その辺の事情について、ごく勝手な仮説を考えるなら、どこかの実在のサーカスから撮影協力を受ける話で、番組制作陣が構想を進めていたが、何かの理由でそれが中座。そのまま幻の作品になったとか?)

 とある機械技術を用いて遠隔殺人を行い、アリバイを作る主人公リックの犯行トリックは、半世紀近く前の70年代半ばならそれなりに目新しいものだったろうが、さすがに今となっては素人作家でも書かないだろうもの。
 コロンボがネッドの死因に不審を抱く流れなども良くも悪くも王道だが、最後にリックへの嫌疑を高めていく決め手はちょっと面白かったかも。まあそれもシリーズの平均点レベルといえばそれまでだが。

 コロンボの相棒として「悪の温室」「魔術師の幻想」に登場するウィルソン刑事(本書での名前表記はケイシー・ウィルスン)が顔を見せる。見当違いな推理を語って、別の人物を容疑者と誤認。それで得意がるなどちょっと愉快な存在感を示した。

 あと、団長ネッドが可愛がっていた土地の野良犬をコロンボが面倒を見て、途中からその世話を独身のウィルスンに押し付ける。
 あ? この犬が「黒のエチュード」で初登場のコロンボの愛犬、またはその原型か? と一瞬思ったが、調べたら「黒の~」はすでに72年にオンエアされていたので、これは別のイヌだろう。実際、この物語の最後でも(中略)。
 
 特化した長所はないが、まだ出会っていなかった「コロンボ」の正編(のようなもの)を、まるまる一本楽しめた。そんなお得な気分は味わえる。「コロンボ」シリーズとして佳作。

No.2 6点 2011/09/07 09:49
ノベライズ作品。といってもシナリオだけで映像化はされなかったようだ。理由は不明。
ノベライズ・倒叙スタイル物だから深く考えずに読めた。手口はわかっているので、読みどころはコロンボの手口解明のロジックと犯人との対峙場面だ。コロンボが最初に不審に思うきっかけとなった花と犬についてはうまいと思ったが、密室トリック解明のヒントがあまりにも安直だったのには驚いた。こんなに安っぽくていいのかなという気がした。それとも手口がわかっているからこそ、そう感じてしまうのかな。まあ、その後の展開にはほどほどに楽しめた。犯人との心理戦がやや薄めだったのは残念。
サーカス小屋というノスタルジックな香りのする舞台設定や、部下のウィルソンとの迷コンビぶり、被害者の犬との関係など、非ミステリ的にも楽しめる要素があるのは好印象だった。話の背景にはサーカスの身売り、買収、リストラなどがあり、企業社会に置き換えても面白いのではと思った。会社でも「綱渡り」みたいな仕事もするからね(笑)。

No.1 5点 大泉耕作 2011/04/13 15:07
やはり、高名な旧シリーズ・刑事コロンボのラストエピソードの脚本を手掛けたハワード・バーグだけあって見事です。このシナリオが採用されなかった理由は分からないが映像化したらシリーズ中、最も幻想的な作品になっていた筈だ。最後の謎解きの場面では心にグッとくるものがありまして、解説のとおり、コロンボのサーカスに対してのミスマッチは見どころ。


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