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[ 警察小説 ]
深夜の張り込み
トマス・ウォルシュ 出版月: 1961年01月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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東京創元社
1961年01月

東京創元社
1961年02月

No.2 6点 人並由真 2025/09/27 07:13
(ネタバレなし)
 その年の12月のニューヨーク。ブルックリンの銀行から4万ドルが奪われる事件があり、嫌疑はプロの犯罪者で銀行やぶりを得意とする男ハリー・ホイーラーに掛けられた。刑事係警部フランク・エックストロムの部下である三人のベテラン(中堅)刑事たちは連携・交代しながら、ホイーラーの妻ローズが留守を預かる容疑者の自宅アパートを見張る。が、やがて事態は、関係者たちの思いもよらぬ方向へと転がっていく。

 1950年のアメリカ作品。
 このところ本が読めない上に、タマに読むのも今年の新刊が大半なので、気分を変えようと、新刊とはまったく関係のない旧刊の作品に手を出してみる。

 ごひいきトマス・ウォルシュ(と言いつつ、本サイトでは私自身もそんなに高い評点はさほどつけてないが……)の未読の一冊で、ページ数はそこそこ。さらに話の設定や流れからしても、劇中での時間の推移はせいぜい数日レベルっぽい? じゃあこれは読みやすそうだ、で、たぶんそれなりに面白いだろ、と手に取った。

 でまあ、大設定(ここでは書かない)のイベントの流れが意外にも物語の半ばでひと段落してしまい、後半はいささか作劇の方向が転調した内容になる。

 そういう意味では先が読めるような読めないような、で、なかなか楽しかったが、一方で以前に別のウォルシュ作品のレビューで書いたこの作者の悪い癖(と評者が個人的に思う)である、小説の一章一章が話の流れに比して長め、という弱点が今回も顕著で、読み手側としては、結構リズムの感覚に狂いが生じた。要は、ああ、この辺で、一回、章を変えれば読みやすいのに、まだ続くのか……という感じである。
 主要キャラの関係性のシーソーゲームなど、作りはシンプルながらその分、明快で悪くはないんだけどね。

 後半は肺活量のある作家なら、長々としつこく書きそうなところ、良くも悪くもコンデンスにまとめた感じで、その辺が味なような、ちょっと物足りないような、微妙な気分。決してつまらなくはなかったが、イマイチ推すには弱い……そんな一冊という感じか。

 ちなみにこの作品、その邦題ゆえマッギヴァーンの『殺人のためのバッジ』の映画化だろう? ……と、何十年にもわたって勘違いしていたキム・ノヴァック主演の映画『殺人者はバッジをつけている』の原作なそうである。
 その事実は21世紀になってから初めて気づき、それまではずっと勘違いしていた。
 くだんの映画はまだ未見だが、低価格セットDVDにも入っているので、そのうち観てみたい、とは思う。まあそんな映画も山のように溜まっているが(汗)。 

No.1 7点 2020/12/24 23:19
先入観を覆してくれる作品でした。
読むことにした時点では内容を全く知らず、タイトルから何となくかなり地味目の警察小説かと思っていたのです。ところが粗筋を見ると、「殺人鬼と化していく悪徳警官の心理をヴィヴィッドに描く」ということ。それで犯罪小説的な作品だろうというつもりで読み始めたのです。
なるほど、強盗犯人を殺してその金を奪おうとするあたりまでは確かにそうです。ただ優柔不断な刑事を自分の言いなりにさせようという計画はあまりに危険としか言いようがありませんが。しかしその後は、この悪徳警官の行動は一緒に張り込みをしていた刑事や上司の警部に即座に怪しまれ、半分にも達しないうちに真相は彼等に知られてしまいます。その後は双方の立場を切り替えながら描かれていくサスペンスフルな警察小説展開。
追う者、追われる者の心理描写も悪くなかったのですが、ただ訳文がどうもぎくしゃくしていて。


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トマス・ウォルシュ
1965年01月
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