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[ 青春ミステリ ]
ディオゲネスは午前三時に笑う
小峰元 出版月: 1977年10月 平均: 5.60点 書評数: 5件

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講談社
1977年10月

No.5 6点 クリスティ再読 2023/01/15 22:37
小峰元はリアルタイムだったからね、本作あたりは中学生。流行ってたなあ。全共闘と新人類の間のシラケ世代に当たる、評者からはちょいと年上の兄ちゃん姉ちゃんたちが主人公の小説、というくらいの親近感。「青春ピカレスク」というわけで入試やら浪人やら何やら掻き分け掻き分け生きていく姿を、妙にまぶしく思いながら読んでいた....わけだけども、本作はショック。

(ネタバレかな?)
開巻イキナリだからバレでもないのだけども、主人公とヒロインの情死行で始まるわけ。「あれは男の天然自然の現象さ」の達観に横たわる物悲しさがキートーンになり、周囲の「優しさ」に支えられながらも「不条理」に死を選ぶ二人の心情に、引き込まれるように感じていたんだな~なんて今は思う。
...いや死ななきゃいけないほどの理由はないんだ。しかしここで「死ぬ」という選択もまた「青春」の一つとして妙に腑に落ちるところがある。ディオゲネス気取りのフォークシンガーによる、深夜放送での大爆笑だけが二人への手向けなのが、「しらけ」の世代のリアリティというものだ。

考えてみようか/馬鹿だなあ おれは/考えてこれほど辛いめにあったのに

(歌詞が早川義夫っぽいなあ...意外かもしれないけど、「虚無への供物」と似たところがあるよ)

No.4 6点 nukkam 2017/05/04 22:57
(ネタバレなしです) 1976年発表の長編第5作はどこか松本清張の「黒い樹海」(1960年)を連想させる作品です。清張作品では主人公の姉が事故死し、本書では主人公の姉の恋人が事故死します。どちらも事故であることは間違いないこと、姉の行動に謎があり主人公が何があったのかを追求するというプロットが共通しています。清張作品の主人公が大人の女性であるのに対して本書では主人公が男子高校生であるところは大きな違いで、小峰得意の青春本格派推理小説要素が見られます。ユーモラスな場面もありますがかなり悲劇色が濃いのも本書の特徴です。謎解きが終わった後の主人公の(最後の)決断には共感できないという意見も多いかと思いますが人間ドラマとして強い印象を残していることは確かです。

No.3 5点 ∠渉 2014/01/07 22:31
アルキメデス~パスカルまでの流れが結実した作品という印象。もうソクラテスがピークかなと思っていたので読んでびっくり面白い。物語の全体に漂う物悲しさ、虚無感。そして反対に青春を生きる若者のエネルギー。表裏一体で脆く繋がっている二つが良く描かれています。構成の妙もあって好い。
そしてなんといってもミステリが本作は仕上がってるというか、納得できます。そりゃケチをつければきりないんだろうけど。
あと小峰作品に総じて言えることだけれど、なぜ小峰作品に登場する若者達はどうしてこんなにギリシャの偉人にこだわるのかが少しわかった感じがした。タイトルにこじつけてるからと言ってしまえばそれまでだけれども、彼らにとっての拠り所なんですね。とくに哲学なんかは全てに通じる概念のような感じもあるけど意味がないっちゃあ意味がない。究極に。そういうところが物語の中にも浸透していて虚無を生んでるのでしょう。以上。

No.2 5点 2010/08/26 10:02
「アルキメデスは手を汚さない」「ピタゴラス豆畑に死す」「ソクラテス最期の弁明」などのピカレスク青春推理モノは、今なら中年オヤジの懐古趣味でしかないが、これらにくらべれば本書はすこしは一般受けしそうだ。ミステリとしての完成度が高いかどうかは今となれば不明だが、虚無・悲劇系の青春ミステリであるうえに、異常な青春風俗が描かれていたそれまでの作品とはちがって、常人でも共感できるような雰囲気づくりがされていたことも一般受けする要因なのだろう。

でも私は、関西風味の、あの救いようがないほど変な風俗描写が小峰青春推理の持ち味だと思っているので、本書ではそんな描写が少なめだったことがちょっと残念でもあった。ひとことで言えば、歪んで解釈された関西風俗かな。たとえが変だが、CMでいえば、赤○英○さんの引○社のCMか、黒○年○さんのオ○ミ住○のCMみたいな(ローカルですみません)、関西の恥部のような感じだ。でもそんなCMでも見慣れると中毒になってしまうのも事実だ(笑)。小峰元が描く青春風俗はそんな変な関西風の味付けがされ、しかも当時でもだれもが反発するような異様な描写だった。

No.1 6点 kanamori 2010/03/16 01:37
姉の不倫相手が北陸の列車事故で死んだ・・・。
これまでの小峰元というと、いかにもオジサンが書いた明るめの青春ミステリという感じで、トリックもイマイチなのが多かったですが、これはまあ感心しました。
作風もシリアスが入って、大人が読んでも楽しめます。


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小峰元
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