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[ ホラー ]
闇に葬れ
ジョン・ブラックバーン 出版月: 2006年10月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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論創社
2006年10月

No.2 7点 クリスティ再読 2022/03/09 09:04
評者は子供の頃、ウルトラマンやウルトラセブンよりも、断然「怪奇大作戦」や「ウルトラQ」の方が好きだった....そんなテイストが横溢していて、論創社のブラックバーン3冊の中では一番面白い。ただしSF色がやや強いので、それほど怖くはないな。

本作はレギュラーのカーク将軍もレヴィン卿夫妻も登場しない。レギュラーなしで多視点でモザイクのように話が組み合わさって、群像劇のような印象になって、これがいい。話の中心の十八世紀の奇人芸術家の墓を開けるプロセスが、さまざまな障害に直面して、難航するさまがなかなかサスペンス。中にあるのはロクでもないものに決まっているのだがね。でもダムによる水没のタイムリミットに向けて、墓を開ける側とそれを阻止する側の暗闘が、ジリジリするような気分を盛り上げる。ここらへん、実に上手。

墓が開いたとなると、それからは爆発的な勢いで世界の終末の危機が訪れ、ラストまで一気に押し切られる。ラヴクラフトの「ダニッチの怪」の構成に倣ったのかな。読者をノセて読ませることについては、確かな技量のある作家であることを、改めて実感。

まあ、ネタがチープとか、前半のホラーから後半のSFへの転換とか、切り札の説得力が?とか、あるんだけどさ。評者は映画だって話の筋立てよりも、演出の切れ味とか映像美とかをずっと評価するタイプだから、そんなの気にしない。ブラックバーンはネタ作家ではなくて、優秀なエンタメ作家である。

(ブラックバーンは翻訳はコンプ。もっと出ないかしら?)

No.1 5点 kanamori 2013/04/21 12:43
天才とも狂人とも称される十八世紀の芸術家の遺骸が収められた納骨堂の封印を200年ぶりに破った時、内部から不気味な哄笑が高らかに響いてきて....といった幕開けの、モンスター・ホラー&伝奇ミステリ。

本書は、レギュラー主人公のカーク将軍が登場しない単発作品でしたが、発端のオカルト現象から終盤は怒涛のSFパニック小説に変転するお馴染みのジャンル混合型ミステリです。まあ、小説版「ウルトラQ」ですね。
”それ”の正体を隠蔽したまま終盤近くまで引っ張っているのでサスペンスは強烈ですが、明かされたネタが「またかよ」という側面があるのも事実。
小説技巧のうまさとネタのチープさが混在する作者らしさ全開のエンタテイメント小説でした。


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