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漂う提督 クリスティ、セイヤーズ、チェスタトン、バークリー他 |
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リレー長編 | 出版月: 1981年03月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1981年03月 |
No.2 | 6点 | おっさん | 2011/02/27 12:37 |
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ゲイロード・ラーセンの『ドロシーとアガサ』のなかで、ディテクション・クラブ編の本書に言及があったので、何の気なく、ほぼ30年ぶりに再読(昔は「ミステリマガジン」の分載で。今回はハヤカワ・ミステリ文庫版で)していたら、kanamori さんの書評がアップされて、ビックリしました。
リンガム村の土手のあいだを流れ、やがて海にそそぐホウィン川は、潮流の影響で、一日に二度、大きく流れを変える。 ある早朝、満潮に乗って漂うボートの中で、最近、村に越してきた退役軍人の刺殺体が発見される。 ボートは、川をはさんで被害者の家の向かいにある、牧師館のものなのだが・・・さて、犯行現場はどこで、犯人はなぜ死体をボートに載せて流したりしたのか? というお話を、リレー形式で、打ち合わせ無しに(各自、自分なりの解決案――小説本編のあとに、まとめてオマケとして掲載――を念頭に置きながら)展開させていったメンバーは、順に以下の通り。 G・K・チェスタートン(最後に「プロローグ」を執筆)、C・V・L・ホワイトチャーチ、G・D・H・&M・コール、ヘンリイ・ウェイド、アガサ・クリスティー、ジョン・ロード、ミルワード・ケネディ、ドロシイ・L・セイヤーズ、ロナルド・A・ノックス、F・W・クロフツ、エドガー・ジェプスン、クレメンス・デーン、アントニイ・バークリイ クラシック・ミステリ・ファンにとっては、まずはオールスター・キャストといっていいでしょう。 とはいえ連載で読んだときには、堂々巡りのストーリーが間延びして感じられ、やけに退屈した記憶があります。優雅な遊びとして、悪い印象はありませんでしたけどね。 読み返してみても、お話としては率直に言って凡作レヴェルで、結局、最後にきちんとまとめてオチをつけたバークリイの剛腕が光る、という評価につきるのが正直なところです。 しかし。 今回、各章を読んだあと、その執筆者の「予想解決篇」にじっくり目を通してから、あまり間をおかず次の章に進む、という読み方に徹したところ、“真相”の推移がゲーム・ブックのように楽しめたのは意外でした。これは本筋よりも、むしろそこを楽しむ本なのですね(ちなみに「解決篇」のなかで、いちばん驚かされたのがクリスティーのもの。しかし・・・無茶だわこりゃw) 全体を通して印象に残った場面は、セイヤーズの担当分で、潮流問題に頭を痛めたラッジ警部が岸辺に腰をおろし、川を眺めているところ。頭の中で歌が流れ始めます。 お爺さん川(オールドマンリヴァー)よ、ああ、お爺さん川 何か知ってるはずだけど何にも言わない そして、いろいろな川の特徴をあげてぼやき始めます。 ――ところが、このホウィン川ときたら、何やらこそこそとしてばかりいるとんでもない代物で、誰の役にも立たないのだ。満潮と干潮で三フィートも水位が日に二回も変る川なんて、何の存在理由があるというのか。 同感ですなあw 最後に、訳者あとがき(中村保男)では、本書を1932年作としていますが(扉うらのデータ記載もしかり)、それはアメリカ版で、英本国では31年に出版されています。同様に、ディテクション・クラブの結成年を1932年としているのも誤りで(30年説が有力)、将来、重版される機会があれば訂正が必要です。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2011/02/26 15:40 |
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英国ディテクション・クラブ創設期に13名の会員によって書かれた初のリレー本格ミステリ。
プロローグを担当した会長チェスタトンを始め、最終章の解決編担当のバークリーほか、クリスティ、セイヤーズ、クロフツなど黄金期の巨匠がそろい踏みで、内容はともかく(笑)、執筆陣の名前を見ているだけで楽しい。分量を見る限り、セイヤーズとバークリーが主導的役割だと思う。 受持ちの一章だけでなく、それぞれが予想解決編を別に用意していて、それにも作家の性格が現れている気がする。中ではロナルド・ノックスの、「私は以前に、探偵小説に中国人を登場させてはならないとルールを定めたが、本書で提督を始め何人かの中国在住経験者がいるのは同じように遺憾である」というような冗談か本気かわからない言い分が笑える。 |