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[ サスペンス ]
男の首
メグレ警視 別題『或る男の首』『モンパルナスの夜』『ある男の首』
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1950年05月 平均: 6.29点 書評数: 7件

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1950年05月

東京創元社
1956年11月

東京創元社
1959年09月

東京創元社
1960年01月

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1960年09月

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2012年12月

No.7 5点 虫暮部 2021/06/12 12:41
 変な話だ。そんな“実験”、アリか? 死刑判決を下した陪審員は安直だが、メグレも彼のどこに首を賭ける程の信頼を見出したのか?
 語られる真相は存外に面白い。しかしメグレの口による間接的な説明なので、どこか薄い膜の向こうを見ているようで勿体無い。この手の心理は、倒叙形式か、そこまで行かずとも犯行前後の諸々を直接描写出来る形で書く方が良くない? こういうのは我が国の新本格勢のほうが上手く書くなぁ。

No.6 7点 斎藤警部 2019/10/25 06:39
あるものの占有率が異様に高い騙し絵ストーリーのような。ギリ本格ミステリの形式を借りパクしたクライムストーリーであるような。出だしの意外性がピカイチですね。或る種の不可能犯罪を扱ったお話でもありますね。

この頃のアメリカ人(で経済的に成功してる人)って、今のIT企業家(で経済的に成功してる人)みたいなイメージだったんですかね。ラデックのような野郎、ネット社会でもいるよな、と思ったらますますそんな気がして。

No.5 8点 クリスティ再読 2019/08/15 14:50
評者もシムノン手持ち札がさすがにそろそろ尽きてきた。なので大定番のこれを投入。言うまでもなくメグレ物としては特殊作品である。もともと戦前に本作の映画化「モンパルナスの夜」が日本でもヒットして、シメノン人気が燃え上がったことから、何となく代表作化しているだけのことである。しかしね、本作はメグレ以上にジャン・ラデックのキャラクターが極めて印象的なことで、特殊作品だけどシムノンの傑作の1つにはちがいない。

(ネタばれ... けど推理に重点が全くない作品だからお許しを)
考えてみればウルタン犯人に納得しなかったメグレが、わざわざ職を賭けて脱獄させたことで、一旦は完全犯罪を達成したラデックに「もう一度、世の中をひっかきまわしてみたい」という自己顕示欲を刺激しちゃったわけだから、何とまあ罪作りなことなんだろうね。しかも「罪と罰」みたいな良心とか道徳とか愛じゃなくて、自己顕示欲の延長線での「捕まりたい」欲望を抑えれなくなったラデックが、自分の「カッコいい破滅」を求めてメグレをわざわざ挑発する....生き急ぎ死に急ぐ、神に挑むようなロマン派的なキャラクターに、評者とか学生の頃は結構イカれたもんだったんだがね。今思うとさすがに青臭いなあとも顧みるんだが、シムノンもこれを書いたのは28の歳。やはりシムノンの青春の決算という色調が強いんだろう。
ただし本作の持っている「青春の毒」は後の作品でも、繰り返し現れるので、そのバリエーションを愉しむのもいいだろう。同じネタでもシムノンの成熟によって、多彩な切り口が現れてくる。「雪は汚れていた」とか「第一号水門」を併読すると味わい深いと思う。
(中盤の「キャビアを好む男」あたりのカフェ・クーポールのシーンは、本当に凄い。映画で演出してみたいくらいだ...)

No.4 5点 蟷螂の斧 2016/02/02 08:53
(1985版東西ベスト83位、2012版ではランク外)2008年、英「タイムズ」紙が発表した最も偉大なミステリ作家ベスト10(選出基準は不明です)。その1位はパトリシア・ハイスミス氏 2位ジョルジュ・シムノン氏 3位アガサ・クリスティー氏。ということで、お初のジョルジュ・シムノン氏の作品となりました。しかし、本作は異色中の異色作ということで、入門には向かないとのことが後で判明。「罪と罰」を念頭に置いて描かれていることは、よくわかるのですが、ミステリーとして、どうもしっくりこない点が3か所ほど・・・。犯人とある人物の接点が何もないというような記述(場面設定)は不自然またはアンフェアですね。このこと(接点なし)を前提として読んでいるので、どんな方法で完全犯罪を実行したのか?とワクワクするわけです。しかし、真相は?、何もありませんでした・・・(苦笑)。また、メグレ警部が手紙を読むチャンスがあったことや、ピストルを操作するチャンスがあったことなど、ご都合主義っぽい・・・。と、辛口になってしまいましたが、まだ1冊目なので、評論家の間で高評価の「モンマルトルのメグレ」や、本サイトで高評価の「倫敦から来た男」などを読んでみたいと思います。

No.3 6点 2010/11/24 10:00
冒頭の脱獄シーンでグイグイと引っ張られ、それにつづく前半部分はよくわからず、その後ところどころに挿入されるサスペンスにわくわくしながら、メグレと犯人との対決姿勢を楽しむ。そしてなぜかメグレだけが知っていた真相に触れ、驚かされる。そんな楽しみ方ができました。この後半の心理戦は読みどころです。動機が変わっているのは特徴です。

犯人はたしかにラスコーリニコフみたいですが、本家よりもさらに強気で自信過剰なラスコーリニコフが出現します。対するメグレも、犯人に負けじと短気で強引だったのが好かったですね。これがシリーズ初期の彼の性格なのでしょうか。

メグレ警視シリーズで最初に読んだのが「メグレと老婦人の謎」でしたが、これとくらべると本書は雰囲気がまるで違います。同じシリーズでも色々なパターンがあるようです。まだまだ初心者なのでよくはわかりませんが、本書のような重厚なものこそがシムノンらしさなのかもしれません。真相は変わっていますが、謎解きを楽しむということはありません。でも、サスペンスフルな雰囲気と、なんともいえぬ非ミステリ的な深みを感じさせてくれる作品でした。

No.2 5点 kanamori 2010/07/22 19:03
メグレ警視シリーズは、これと「黄色い犬」しか読んでいない(2作セットだったので)。たしか、脱獄囚を手引きする真犯人に罠を張るようなストーリーだったと思いますが、読書案内で紹介されている情感に訴えるような作風とは感じられなかった。
サスペンス小説としてはまずまずだったように思います。

No.1 8点 2009/10/27 21:01
半分も読まないうちに、誰でも真犯人と大まかな犯行計画はわかります。しかし犯行計画はともかく、犯人の正体については、作者は最初から全然隠そうなどという気がないのです。本作で読者をだましてくれるのは、実は犯人ではなくむしろメグレ警視です。
ドストエフスキーの『罪と罰』からの影響が大きい作品で、犯人はラスコーリニコフを極端化したような性格設定になっています。メグレ警視が犯人をつけまわすクライマックスの心理戦は読みごたえがあり、本作だけから判断すれば、シムノンの作風は心理サスペンスということになるでしょう。
逮捕後、死刑執行のごく短い最終章もこの作者らしい後味を残す評判どおりの傑作です。


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下宿人
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