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[ ホラー ] 踏切の幽霊 |
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高野和明 | 出版月: 2022年12月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
![]() 文藝春秋 2022年12月 |
No.3 | 6点 | パメル | 2025/04/03 19:25 |
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一九九四年十二月、月刊女性誌の記者の松田法夫は、大物政治家の収賄事件の取材から外され、読者投稿の心霊ネタ取材に回される。
都会の片隅にある踏切で、偶然撮影された心霊写真。この踏切では、ここ一年列車の非常停止が多発していた。踏切に現れる幽霊について取材を始めた松田だったが、その日の深夜、不気味な無言電話があった。 元社会部の敏腕記者が日常に発生した心霊現象に対し、あくまで調査報道の手法というこの世の理で丹念に真相に迫っていく展開は、怪異が日常に生じさせる不条理な裂け目を因果によって押し広げ続け、信じさせるための手続きをする。その描かれる調査に、主人公が妻を喪った虚無を抱え続けていることが重なって、鎮魂のための怪談というような作品となっている。 心霊現象とその背後にある現代社会の闇や人間の業を描いた社会派ドラマとしての側面も持ち合わせている。幽霊という題材を借りながら人間の内面や社会の脆さを問い掛けている。踏切が生と死、過去と現在、そして異なる世界を繋げる象徴として機能している点が印象的。結末は死生観が胸に落ちてくる戦慄とともに温かな救いが共存し、読後に余韻が残る仕掛けがされている。 |
No.2 | 6点 | 文生 | 2025/03/02 17:40 |
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前半の正統派心霊ホラーの怖さと、後半の哀愁漂う泣ける社会派ミステリー。どちらもよく出来ていて読み応え十分なのですが、2つの魅力が相乗効果でより面白くなっていくというより、個人的には2つの良さが相殺されているように感じたのが残念です。自分の趣味からいうと、前半の心霊ホラーの路線のままホラーミステリーとして着地した方が良かったかも。 |
No.1 | 5点 | 八二一 | 2025/02/26 20:15 |
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夜中の一時三分に鳴る電話。ただでさえ、なんでこんな時間にと怖いのに、幽霊からだったら。
ぞくぞくする心霊話と、社会派ミステリが融合したようなストーリーに震える。下北沢の踏切で亡くなった「彼女」は一体何者で、なぜ殺されたのか。ラストがひたすら切ない。 |