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[ SF/ファンタジー ] 迷犬ルパン異世界に還る 迷犬ルパン |
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辻真先 | 出版月: 2023年12月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 辻真先 2023年12月 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | 2025/01/17 06:37 |
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(ネタバレなし)
チャウチャウと柴犬の混血で、一見どこにでもいる愛玩犬ながら、多くの難事件を解決に導いてきた? 名探偵・迷犬ルパン。そのルパンは彼女であるマルチーズのサファイア、そして自分の飼い主の少年・川澄健と健の幼なじみの少女・木暮美々子とともに異世界に転移した。異世界で人間の姿を得たルパンとサファイアとともに、健と美々子はその世界での国難に巻き込まれるが。 ベテラン・辻真先が1983年からスタートさせ、すでにのべ20冊以上もの関連作品がある「(名探偵)迷犬ルパン」シリーズだが、なぜか本サイトには現時点まで、ただの一冊もレビューがない(……)。 みなさん、そんなに迷犬ルパンがお嫌いですかあ? とさえいいたくもなる現状だが、かくいう評者も振り返ってみれば、このシリーズはリアルタイムで最初の第1冊めを読んだだけなのであった(笑・汗)。 そもそも言うまでもなく、本シリーズは赤川次郎の「三毛猫ホームズ」シリーズの堂々たる二番煎じ企画のハズだが(もしこの認識が間違っていたら、どなたかご指摘の上、仔細をご説明ください)、本家の第1作目の方が(トータルとしてミステリとしてはそんなに高い点はやれないものの)、アレやアレとかの趣向二つ三つでいまだ印象に残っているのに比べ、「迷犬ルパン」の第一作目はまったくもって内容を覚えてない(記憶にあるのは、物語の序盤で本家の三毛猫ホームズがカメオ出演したという、お遊びの趣向だけだ)。 というわけで正直、実は本シリーズには評者自身もさしたる心の傾斜など、まったくないのだが(大汗)、それでも一昨年2023年の冬コミケで、(当時)齢90歳(!)の大巨匠が同人誌の形(!!)で本作を刊行、しかも懐かしの(←いや、お前、懐かしがっていないだろ)「迷犬ルパン」シリーズの27年ぶりの新作(!!!)だと言うので、そりゃスゴイ! と、ついこっちまで浮かれて、Amazonの通販で、一冊購入してしまった。 で、一年経って、ようやく現物を読む。その感想がこのレビューである。 でまあ、冒頭から、シリーズに慣れ親しんだファンならいいのかもしれんけど、わかりにくい叙述が多くてイラつく。 たとえば主要登場人物の一人が、男子主人公・健の姉で女性タレントのランなのだが、地の文で「姉」と「ラン」を最初から別々に書き、それが実は同一人物だと理解するのに手間暇をかけさせられた。意味ないでしょ、それ。 高齢の書き手の著作だから仕方ないが、これが商業出版なら少なくともプロの編集者が<シリーズに初めて出会う読者><本当に久々にこのシリーズを読むファン>の目を意識してチェックし、作者に推敲を指示しているのではないか?(だって30年近く間があいたシリーズ新作なんだから、そういう送り手と受け手の微妙な距離感は、十分に想定できるはずだよね?) 物語そのものも、作者だけが面白いつもりらしい異世界でのロジック、その機微を連ねた展開がダラダラ続き、正直、ストーリーの大半の部分が読むのに苦痛だった(空間魔法を使った実質瞬間移動のアイデアだけは、なかなか面白かったが)。 まあ全体のページ数が短めで物理的・精神的な負担が軽微だったことは、有難かった。あと物語の後半で、辻先生自身がかつて関わった70年代の某・特撮怪獣番組ネタが出て来るのは楽しかった(でもあの怪獣ってツインテールですか? 何か勘違いされておられませんか?)。 つーわけで、壊滅的にツマンナイとまでは思わなかったが、実質「迷犬ルパン」に縁のない一見の読者が読んで、そんなに面白い一冊ではない。 ただまあ、ずっと「迷犬ルパン」に親しんできた往年のファンたちには、27年目の奇蹟のような贈り物(新作)だったのだろう? とも思う。イヤミや皮肉などの意はまったくなく、そういう素直な気持ちでこの作品を大喜びで迎えられた人は本当に羨ましい、とも実感した。 実質4点。前述の怪獣ネタと、高齢でも筆の勢いが衰えることのない、不滅の作者への自分なりの敬意の念を込めて、この評点で。 |