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[ サスペンス ]
殺人鬼登場
ヘンリー・スレッサー 出版月: 1962年01月 平均: 7.50点 書評数: 2件

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早川書房
1962年01月

早川書房
1962年08月

No.2 7点 蟷螂の斧 2023/02/01 20:54
裏表紙はかなりのネタバレをしています。物語の仕組みが解かってしまうので、その分損した気分となります。被害者の娘がもっと物語に絡んでくれれば、評価は上がったのに・・・と思ったり。一応、後半は、フーダニットものになっています。

No.1 8点 人並由真 2022/11/03 05:51
(ネタバレなし)
 1959~60年頃の夏季のニューヨーク。各地にいくつもの支店を持つ不動産会社の社長で56歳のエドワード・コプリィ・ブランドシャフトは、休暇を利用して遠方にひと月の魚釣りの避暑に向かう。だがひとりではなく、しばらく前に会社に雇い入れた20代半ばの美人社員ディーロレンス・メイスンを同伴してだ。だがブランドシャフトがディーロレンスのアパートに彼女を迎えに行くと、そこに彼女の夫ジョニイ・ロドリゲスがいきなり登場。もみあいの中で銃声が響き、ブランドシャフトは不倫相手の夫を殺した殺人者として逮捕されてしまう。そして。

 1960年のアメリカ作品。スレッサーの第二冊目の長編作品。
 プロローグ編にあたる物語の序盤部(「序幕」と章立て)、その直後、話が急転。くだんの「序幕」部はたった一章分のみなので、あらすじはそのあとの前半部~最初の流れくらいまで書いてもいいかとも思ったが、やはり一応はネタバレ防止で秘匿しておいた方がいい(というわけで本レビュー、上掲のあらすじは、その数ページ分の「序幕」部分のみ)。

 本編の第一章以降はまったく別の登場人物が、メインキャラクターというか主人公として物語を進め、さる案件に関わる彼とその仲間たちの行動が、非常に緊迫したハイテンションのなかで(さらにちょっとだけ苦いユーモアも交えて)綴られていく。
 あー、本作の作品ジャンルは(中略)だったのか? と軽く驚きながら読み進めていくと、主要登場人物、そのそれぞれの心の機微を巧みに掬い上げながら、ストーリーは起伏豊かにスピーディに展開。サスペンス要素も豊潤で、実にかなり高い求心力で、ページをめくらせる。
 そして強烈な加速度でクライマックスに向かったのち、終盤で(中略)。ここで息を呑む。
 いや、予想以上の優秀作~傑作であった!
 
 本書(ポケミス)刊行当時のミステリマガジンの連載月評「極楽の鬼(地獄の仏)」の中で、石川喬司は「スレッサーといえば短編作家として傑出して有名、とても人気がある分だけ、そっちと毛色の違う長編はあまり本領でないような印象があるが、実のところ自分は長編も評価している」という主旨のことを言っていたはずだが、その見解に実に納得。
 いやまあ処女作『グレイ・フラノ』の方はそんな秀作だとも思わないが(悪い作品ではないけど)、本作『殺人鬼登場』の方は、おお正に、そんな石川喬司のホメ言葉に偽りなし、という感じで最後まで楽しめた。
 ラスト最後の1ページの、しみじみした、でも(中略)な余韻のあるクロージングも心に残る。

 スレッサーって、長編はこの二作しか翻訳がないけれど、実はまだまだ未訳の長編の原書があり、70年代の作品なんか当時、木村二郎氏がミステリマガジンの連載エッセイのなかでかなり面白そうに紹介していたりしている。その辺、翻訳されないかなあ。
 昨今のクラシック、準クラシック発掘路線にまた割と活気が出てきたので、どっかでこの辺も目を向けてくれると嬉しいんだけど。


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ヘンリー・スレッサー
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