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[ 短編集(分類不能) ]
伯爵夫人の宝石
英米短編ミステリー名人選集
ヘンリー・スレッサー 出版月: 1999年02月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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光文社
1999年02月

No.2 6点 蟷螂の斧 2023/02/05 15:37
①伯爵夫人の宝石 8点 刑事によると新しい上司は詐欺師という。上司はホテルで宝石の売買をするといって逃亡した。刑事が彼を捕らえた。だが刑事もグルであった・・・担当者は首
②世界一親切な男 7点 妻を見殺しにした四人へ夫は贈り物をした。三人に夫々酒、女、金を与えた。その結果三人は死亡。残り一人には・・・ウィークポイント
③シェルター狂想曲 7点 妻の愛人が離婚話にやって来た。核戦争が勃発。3人と隣人夫婦がシェルターの中へ。離婚話が始まる・・・銃撃
④ハローという機械 5点 殺人ロボットを開発し、妻を・・・留守
⑤壜 4点 骨董品蒐集家は殺人を疑われ・・・グラスにワイン
⑥ハーリーの運命 7点 亡くなった作家の原稿通りに妻を殺害したが・・・刑事は筋を
⑦目 8点 店に犬を連れた老婆が入ってきた。ボーイは「かわいそうに目が見えないんですよ」という。それを聞いて男は安心して老婆の住む隣人を狙撃できると・・・目撃者
⑧不法所持 7点 刑事の相棒が射殺された。霊媒は相棒の妻に聞けという・・・妻の兄の麻薬所持
⑨狙われたハート 5点 医者は看護婦と結婚を決意。その看護婦は3人の夫を亡くしていた・・・病後3ヶ月
⑩濡れ衣の報酬 8点 弁護士は浮気妻を殺害していた。彼は部下に連続殺人鬼がその殺しも彼の仕業だとするよう依頼。条件は彼の子供に信託財産を積むこと・・・浮気の相手
⑪帰郷 6点 息子が死んだ日に生まれた青年が現れ、あなた(母親)の夢を見るという・・・兄弟
⑫遅すぎた手紙 7点 ペニーはマイクと付き合い、ゴードンが嫉妬するのを楽しんでいた・・・結婚反対
⑬明日は我が身 5点 凶暴な浮浪者が現れ・・・妻殺し
⑭内輪の秘密 7点 編集者の原稿は未来の殺人事件であった・・・ストップ
⑮問題の女 7点 妻と浮気したと偽装し殺した。殺された男の妻が付きまとい・・・告白
⑯取引 4点 浮気をして、お互いの連れ合いを殺害しようと・・・相続
⑰第二の評決 9点 無罪の判決を勝ち取ったが、実は殺したと告白された弁護士。そして友人も殺された・・・弁護士の性

No.1 6点 人並由真 2020/06/03 14:59
(ネタバレなし)
『うまい犯罪、しゃれた殺人』『ママに捧げる犯罪』『夫と妻に捧げる犯罪』の短編集3冊でその軽妙洒脱なストーリーテリングと語り口に酔い痴れ、さらに『ヒッチコッック劇場』の再放送で、スレッサーは本当にオモシロイ! と実感した昔日。O・H・レスリーやジェイ・ストリート名義のものまで含めて上記の短編集3冊に入っていない邦訳短編を追い求め、日本版「ヒッチコックマガジン」や「宝石」「別冊宝石」でスレッサーの短編に出会える(「手長姫」とか)と、心の中で快哉を上げたものだった。
(のちに藤子・F先生をはじめとしてトキワ荘の面々もスレッサーを愛読していたのを聞いて、そうでしょう、そうでしょうと得心がいった。藤子・F短編、特に『エスパー魔美』とかのストーリーの組み立て方には、スレッサーに通じるものがある。)

 本書は日本でオリジナルに編纂されたスレッサーの短編集で、非シリーズものの短編集としては上記の3冊に続けて4冊目(1999年に光文社文庫から刊行)。
 全17本の短編が収録されているが、執筆時期は1970年代末~1990年代のものがほとんど(一本だけ1964年の旧作を収録)2002年に物故したスレッサーの作家生活のなかでは後期に書かれた作品群といっていいだろう。
 本書で初訳というものは一本もなく、ほとんどのものは雑誌「EQ」で一度読んでいる。そのために読んでいてオチを思い出すもの、当初から覚えているもの、最後になってああ……と思うものなど、印象はバラバラ。

 正直、この時期のスレッサーは作品の全般に小説的な贅肉がつきすぎた感じもあって、切れ味は最初に書いた短編集3冊のものに比べておおむねイマイチではある。
 あと、お話の流れとしては、順当にオチ・サゲを用意するあまりに真っ当で正当的なショート・ストーリーの作りが、なぜか古く見えてしまう感覚もある。たぶんこの辺は、勝手に書かれた時代を頭にいれながら読み過ぎる評者のワガママであろう。
 実のところ、そういった「スレッサー自身は基本的には昔ながらの彼らしい作りをしているはず(多少筆がゆるくなった感じはあるにせよ)」なのに「どっか時代と乖離している」違和感は1980年代に「EQ」を読んでいる頃からなんとなくあり、そのためこの第四短編集『伯爵夫人の宝石』もなんとなく買わずにいたのだが、数年前に近所のブックオフの100円棚で発見。一応は買っておくかぐらいの気分で購入して、少し前からチビチビ読みはじめ、つい一昨日読み終えた。
 でまあ、総体的な印象はこれまで書いてきたようなちょっと面倒でややこしい所感とあまり変わらないのだけれど、一方で期待値があんまり高くないところから入ったためか、それなりに(思ったよりも)楽しめた面もある。
 もしかしたらオレみたいなおっさんファンがあーだこーだ言わず、ビギナーの翻訳ミステリファンが手にしたらかなり楽しめる一冊なのかもしれない。
 
 万が一、この本がスレッサー短編集とのファースト・コンタクトでけっこう面白い、と思えた方がいたら、上記の短編集3冊を少しずつ読み進めることをオススメします。きっとかなり幸福な読書体験が待っている……と思う。 


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ヘンリー・スレッサー
2007年05月
最期の言葉
平均:6.00 / 書評数:1
1999年02月
伯爵夫人の宝石
平均:6.00 / 書評数:2
1974年04月
夫と妻に捧げる犯罪
平均:6.00 / 書評数:1
1964年01月
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うまい犯罪、しゃれた殺人
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1962年01月
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1960年01月
グレイ・フラノの屍衣
平均:6.00 / 書評数:1
快盗ルビイ・マーチンスン
平均:2.00 / 書評数:1