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[ その他 ] カード師 |
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中村文則 | 出版月: 2021年05月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
朝日新聞出版 2021年05月 |
No.1 | 6点 | 猫サーカス | 2021/10/23 18:26 |
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理不尽な運命にどう向き合うのかを読者に問いかけている作品。主人公は、信じてもいない占いをなりわいとし、違法なポーカー賭博のディーラーも務める「僕」。正体不明の組織から「占い狂」の会社社長・佐藤の専属占い師になるように命じられ、これまで何人もの占い師が「失敗」して殺されたと明らかになる。追い詰められた「僕」が知ることになる佐藤の過去と末路とは。未来は誰にも分からない。選択の葛藤と結果の悲喜こもごもが、カードをめくるかどうかに集約される。佐藤が異様なほど占いに固執するのには、この国を襲った数々の災厄が濃い影を落としている。「古来、人は先のことさえわかれば悲劇を避けられたのにという願いをずっと待っていた」。それは「占いが人類史上、敗北し続けている」ことを意味する。1970年代にオカルトブームが到来した時代の流れとも、物語は響き合う。作品には現代の空気感もにじみ出ている。自分の考えを一時的に放棄し、他の誰かに、何かに決めてもらうことを望むから、占いというものがあるのだろう。それでも結末には、そこはかとなく希望の光がともる。未来のことは分からない。だからこそ、絶望することも出来ない。 |