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[ クライム/倒叙 ]
黄金の檻
カトリーヌ・アルレー 出版月: 1991年01月 平均: 7.50点 書評数: 2件

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東京創元社
1991年01月

No.2 7点 蟷螂の斧 2021/06/17 15:53
成りすましの物語は予想した方向とは別の展開へ。これが第一サプライズでしたね。主人公にそれほどの下心や悪意がなかった点も好印象。悪女を描くのが巧い著者ですが、数少ない男性主人公かも。そして題名。なるほどね。

No.1 8点 人並由真 2021/05/24 05:31
(ネタバレなし)
 パリ。医学生崩れでナイトクラブのサックスフォン吹き、30歳の美青年リヨネル・モレルは、22歳の美しいアメリカ娘エヴァ・ダグラスから好意を寄せられ、恋人関係になる。実はエヴァは、アメリカの石油王で大統領候補者トマス・ルイス=メイランドの令嬢だった。リヨネルはエヴァを本気で愛する一方で、富豪の娘婿となる打算も抱きながら彼女と結婚。だが結婚直後の旅行中、ひと気のない海岸で、モーターボートの暴走に巻き込まれたエヴァは事故死。ボートを操縦していた若い娘が大やけどで重傷を負った。リヨネルは事故を起こした加害者の、そして大やけどで顔の見分けがつかなくなった女性を生きているエヴァに偽装し、アメリカの妻の実家に向かうが。

 1961年のフランス作品。
 不測の事態を経ての妻(ヒロイン)の入れ替わりという、ちょっとアイリッシュの『死者との結婚』を思わせる序章。リヨネルと大やけどを負った娘シュザーヌ・バランティエがアメリカに渡ってから、物語が本格的に動き出す。そこで、ある意味で本作のもう一人の主人公といえるキーパーソンが登場。

 旧作だから、このドラマティックな趣向の設定だけに寄り掛かった作品だろう? とか軽く甘く見ていたら、お話は半ばから二転三転。コアとなる主要キャラクターはとんがった人物描写も、強烈な印象を与える。
 後半~ラストのまとめ方も鮮やかなストーリーテリングと、作者の意地悪かつ冷めた、でもどこかしたたかでしぶとい人間観が渾然一体となり、実に味わい深い作品であった。
 最後の主張は、ちょっと中二病っぽい感じもしないでもないが、それでも十二分に力強い。いや残酷だとか切ないとか言ってもいいけれど、これはアルレーが語り紡いだダークでビターな(中略)ロマン。堪能しました。

『わらの女』はフツーに秀作~優秀作と思う評者だけど、これはそれとは別の意味で、これまで読んだアルレーの中で一番スキかもしれない。
 シムノン+クリスチアナ・ブランド(の意地悪部分)+ハイスミス÷3かなあ。
 引用したい名セリフは4~5くらいあったよ。大体がその、前述したキーパーソンのものだけど。


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カトリーヌ・アルレー
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