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[ クライム/倒叙 ]
予告された殺人の記録
ガブリエル・ガルシア=マルケス 出版月: 1983年04月 平均: 7.33点 書評数: 3件

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新潮社
1983年04月

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1997年11月

新潮社
2008年01月

No.3 7点 クリスティ再読 2022/11/04 14:34
昔映画を見て、その流れで原作を読んだ記憶がある。映画は当時評者がご贔屓だったフランチェスコ・ロージの監督作。ボリビア・ロケを敢行し、ギラギラ・埃っぽい映画だった記憶がある。

改めて読んでみて、何というのかな、大変「儀式的」な事件だったようにも感じる。「宿命」の流れが街の無意識と化して、祝祭によって解き放たれた...それが演出する、一大ページェントのような事件なのだ。だから誰もがサンチャゴ・ナサールが「殺される」ことを予期し、さらにはそれを止めようとした友人たちも「無意識」に呑まれてしまって、止めることができない...いやいや「犠牲の羊」たるサンチャゴでさえ、例のセリフによってあたかもこの結末を予期していたかのようなのである。こういう事情が事件に関わったそれぞれの人物の視点で何度も何度も繰り返し語られる構成。記述は重複しつつもそれが「ゼロ時間」である殺人の現場へと次第に吸い寄せられていくような複雑な運動感を示している。

「ジュリアス・シーザー」みたいなものなのである。予言されたからには、それに呪縛されて誰もそれが止められない...

これほど十分に予告された殺人は、例がなかった。

この「予告」は「予言」やら「神託」と同等のものなのである。「予告された殺人の記録」というタイトルに、この作品の内実がすべて集約されている。

No.2 7点 2019/05/08 13:28
南米のとある村社会で起きた殺人に関するルポルタージュ小説。
(以下、ややネタバレ気味)

花嫁となるアンヘラ・ビカリオに関する、ある理由で、アンヘラの過去の相手だったとされるサンティアゴ・ナサールがどのような経緯で殺されたのかが主題で、さらに当事者たちのその後のことも語られている。

釈然としない点はある。
こんな理由で、こんな経緯で、惨殺といってもいいほどのやり方で殺されることが、あまりにも不条理すぎる。
アンヘラの家族・ビカリオ一家(殺害者側)や、バヤルド・サン・ロマン(アンヘラの結婚相手)にとっては、いまの日本とはかけ離れた南米の村社会においては、不名誉で屈辱的なことなのだろうと、理解するしかない。

でも釈然としなくても面白い。いや釈然としないからこそ惹きこまれるのでしょう。
それに、なんといっても、時間軸を行ったり来たりしながら語られる手法が、興奮が持続して、いいのかもしれません。時系列にせずに、静と動が入り乱れるように、最後にクライマックスをもってくるあたりに、著者のエンタテインメント作家としての力量を感じられます。

数年前に本書を初読し、このたび評をアップするために、あらすじを必死で思い出そうとしましたが、細部を思い出せず、結局再読しました。
映画化作品もあるので、110分でおさらいするのもいいでしょう。ただ、原作が140ページ程度なので、集中して一気読みすれば時間的な差はほとんどないはず。と思って再読を選びましたが、やはり思いのほか時間がかかりました。

(余談ですが)
本サイトでタイトル検索をすると、同名の国内作品(高原伸安氏の作品)が出てくるのには驚かされます。
ガルシア・マルケスという作家は、1982年のノーベル賞作家で、国内外で人気が高く、影響を受けた作家も多いようです。高原氏もそんな作家のひとりなのでしょうか。

No.1 8点 斎藤警部 2019/04/04 06:23
まさかそこで終わる! 凄まじく勇敢で凄烈な、いろんな意味で武士道を感じる、ラスト数ページ!

実際に起きた”●●のための”予告殺人の背景と顛末が ”わたし”の調査により 色彩豊かに解き解される様を描いた中篇。事実に基づいたセミ・ドキュメンタリーだが、(出版に反対する関係者の多くが鬼籍に入るのを待ったため)長い長い時を経ての大胆な事実再構築となった結果、むしろディープなミステリ興味の薫るフィクションとして完成されている、そんな感じです。

即興で唄った、結婚のあやまちの唄。。。

他の書評サイトを見ると、とある ”さりげない台詞” にゾッとした、なる意見多し。さもありなん。 しかし 終わってみると “あの男女” の数十年後のエピソードこそ、眩しく残る海底の宝石だな。

こんな呆気ない長さの小説ながらその昔中途リタイアした (読書じたいほとんどしない時期だった)のを、リトライ再読しました。


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ガブリエル・ガルシア=マルケス
1983年04月
予告された殺人の記録
平均:7.33 / 書評数:3