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[ サスペンス ] 目撃者なし |
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樹下太郎 | 出版月: 1961年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
新潮社 1961年01月 |
光文社 1985年08月 |
No.1 | 6点 | 雪 | 2018/07/18 22:56 |
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坂口受信機事務課に勤める平社員水品は、妻のしのぶが目黒の交差点で交通事故に遭ったという連絡を受けた。病院に向かいながら彼はある疑惑を抱く。「なんの関わりもない目黒で、妻はいったい何をしていたのか?」
病床のしのぶを見舞う水品だが、彼女の抱えていた風呂敷包みの中身を見た事で疑惑は確信に変わる。問い詰めても答えをはぐらかされ、その後間もなく彼女は失踪してしまう。 最後に残した伝言は「十日間待って下さい」 仕事上のストレスも重なり鬱々とする水品だが、約束の十日目、夕餉を用意し自宅で待っていた蒼い顔のしのぶが見せたのは―― 「夫」「妻」「夫」「妻」の四部構成。水品夫妻は双方とも秘密を抱いていて、語り手が交互に交代する形。その背景にはサラリーマン社会の悲哀が通奏低音のように流れています。全体にミステリ味は薄いのですが、その中で作品の面白さを支えているのは夫のある秘密。初刊時は「ホワイトカラー殺人事件」の副題付きでした。ここから来る彼のコンプレックスが、最後の悲喜劇に繋がります。 四部にするほど長い物語ではないですが、しみじみして良い感じですね。しのぶが水品の以前の雇い主を田舎に訪ねるシーンとか、この人が彼を婿養子に迎えて店を継がせる節があったのを考え併せると味があります。 本当に最後にミステリとしてのサプライズはありますが大した事はない。やはり移り変わってゆく登場人物の心情と、そこから生み出されるドラマがこの作品の持ち味でしょう。妻の行為や後味悪い系の結末にも拘らず、読後感は不思議に爽やかです。 作者が決して安直な悪人を描かないからでしょうね。筆致はだいぶ乾いてますが、そのへんは天藤真作品を思い起こさせます。点数は7点寄りの6.5点。 |