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捕物小説名作選一 池波正太郎選 日本ペンクラブ編 |
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アンソロジー(ミステリー文学資料館編) | 出版月: 2006年08月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
集英社 2006年08月 |
No.1 | 6点 | tider-tiger | 2016/11/17 07:35 |
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半七捕物帳を読んで以来、心が江戸から帰ってきません。他にも良さそうな捕物小説はないかと本アンソロジーに手を伸ばしました。
ですが、捕物小説名作選と銘打っておりますが、これってどうやら捕物小説の名シリーズを選抜し、その第一作目を機械的に掲載しているようなのです。看板に偽りあり。捕物小説の名作選とはいえないでしょう。ただ、どのシリーズが面白そうか、当たりをつけるのにはいいかもしれません。 手抜き(のように思える)仕事にマイナスして六点とします。 以下、捕物小説は無知に近いので的外れなことを言ってしまうかもしれませんが、各作品の寸評をば。 お文の魂(岡本綺堂 半七捕物帳より) 半七捕物帳の記念すべき第一作です。やっぱり別格だなあ。全六巻のうち四巻まで揃えましたので、しばらくは就寝前の半七となりそうです。 南蛮幽霊(佐々木味津三 右門捕物帖より) 最も印象が薄かった作品ですが、ミステリ要素あり、江戸風物もありきちんと捕物小説していると思われます。半七と地続きなれど、半七には及ばずという風なので損をしている印象。文章が少し硬いか。右門のキャラは面白い。 捨公方(久生十蘭 顎十郎捕物帳より) 顎の話をされると激怒する武市半平太、じゃなくて仙波阿古十郎が主人公の捕物というよりも冒険活劇。書き出しから一頁ちょいの節をつけて歌い出したくなる文章がとてもいい。講談でも聴かされているような気分を味わえます(実際に聴いたことはありませんが)。内容も構成も豪快で本作品集内でも特に個性的な一篇。リアリティなぞくそくらえ、偶然大いに結構、面倒な話は抜きにしてぶった切りまくりの構成。ぶっ飛んでいる。凄い。 南蛮船(柴田錬三郎 貧乏同心御用帳より) 孤児を九人も養っている同心喜八郎さん独身。彼は別に子供好きでもなく、仕方なく養っています。その経緯が現代では考えられない鷹揚さであります。喜八郎と子供たちとの生活は微笑ましく、子供らの泣かせる活躍あり、話自体がいいのです。誰が読んでも面白いといえそうな作品。本作も捕物というよりは冒険活劇風。 伝法院裏門前(南条範夫 岡っ引源蔵捕物帳より) 心理描写が冴えてます(他の作品では見られなかった、ある意味捕物っぽくない要素)。完成度は非常に高い。話そのものが小粒なのが惜しい。人間の心の動きにリアリティがあります。解説で理知的と評されておりましたが、納得です。 風車は廻る(伊藤圭一 風車の浜吉捕物綴より) 久生作品同様にこちらも他作品とは際立った違いがあります。こちらは講談ではなく、劇画調なのです(褒めているつもりです)。いや、主人公と会話が、すげえかっこいいんですけど。作者は戦記ものを数多く書いている方らしいのですが、そういうかっこ良さとも違うような。 わけあって前科持ちになってしまった元岡っ引の浜吉が女性を巡って猩々のなんちゃらと決闘する話。相手の武器に意表を衝かれました。こんなんだったら俺でも勝てそう、と思いきや敵は啼くものつつくもの。決闘の後、あからさまに浜吉の人生が好転しそうな雰囲気。おそらく次の作品から捕物帳になるのでしょう。これは続きが読みたい。 |