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[ ホラー ]
ローズマリーの赤ちゃん
アイラ・レヴィン 出版月: 1967年01月 平均: 6.50点 書評数: 4件

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早川書房
1967年01月

早川書房
1972年01月

No.4 7点 ◇・・ 2024/07/19 20:11
ローズマリーという女性が妊娠したその日から、奇妙な現象が彼女の身辺で起こる。周りの人はそれを彼女のヒステリー、妄想だと思っているという点が面白い。その謎の正体は何かという関心が読者を引っ張っていく。
通常のホラーのように怖い実態は特に何も出てこないが妙に怖い。読み進めるにつれて、どんどん不安が大きくなる。そのサスペンスが抜群である。

No.3 6点 クリスティ再読 2023/08/13 16:56
「モダンホラー」って何?って正面切って問われると困っちゃうのだが、お約束要素の解体と再構成、といったあたりで捉えるしかないのか、とか思う。
本作、ニューヨークのそこそこ売れている俳優夫妻による、演劇界を中心としたスノッブ日常話に、するりと悪魔崇拝が紛れこんでくる話、と見るのはどうなんだろうか。だから、ホラーかというと、ホラー部分は縦横に張り巡らされた伏線みたいなもの。最後にそれらが繋がって...なんだが、主人公ローズマリーが真相を知って「恐怖のどん底に落とされる」かというと、そうでもないアイロニカルな結末になる。
以前「死の接吻」を「編集感覚」って評者は評したけど、この「怖い」のか「怖くない」のか微妙な匙加減に、作者のクレバーな「抜き差し」の感覚を味わうべきなんだろう。

いやさ、すべてが周産期のローズマリーの妄想だってよかったんだよ。そう思わせるあたりが実は「モダン」な持ち味で、かつ、ある種「奇妙な味」に近い味わいなんだろう。

(余談だが、ローズマリーの夫ガイが、結婚前にパイパー・ローリーと付き合っていた、というのが面白い。キング原作の「キャリー」のお母さんで、「ツインピークス」でゴールデングローブ賞もらっている、「ホラーな女優」さん。キングの「シャイニング」も映画はホラーというより、病んだニコルソンの自滅話とも読める...そのキューブリックも本作名前だけ出る。そんな「ホラー」のネットワークの話なら、また別な面白みもあるのかも)

No.2 7点 人並由真 2018/05/20 12:35
(ネタバレなし)
 洋物のホラー(モダンホラー)はそれなりにスキ(ただしあまり血生臭いのは敬遠)で、偶に手に取っている。しかしジャンル自体をまともに探求したり、その体系に準じて読んでいるわけではない。だからこんな名作も初読だったりする(レヴィンの著作自体は、さすがにこれ以上にメジャーなあの二作はちゃんと読んでいるのだが)。

 原書は1967年の刊行で、翻訳(ハヤカワノヴェルズ版)も同じ年に出ている。物語の舞台は1964~65年の、ケネディ暗殺事件の衝撃がまだ残り、ベトナム戦争がさらに加速化していく時節のアメリカ。

 本作は有名な映画版の影響もあって、大ネタはかなり多くの未読の人にも知られていると思うが(自分も知っていた&映画は未見)、ここではあえてそれについては秘す。
 ただし近代化された大都会の一角に旧弊な魔性の存在が・・・という、今ではあたりまえに成りすぎたジャンルの作品として、本書はその嚆矢といえる一冊のはずである。
 大昔の青春時代、あちこちの古書店をめぐって日本版EQMMとHMMのバックナンバーを集めだし、数年でその時点までの分が全部揃ったが、そうやって入手したHMM初期号での早川書房刊行物の広告ページ(近刊案内)に、本書が(当時としての)かなり革新的な作品・衝撃作としてアピールされていた思い出がある。さもありなん。少なくとも私はこれ以前の早川で、モダンホラーに類する作品が刊行された記憶はない。

 それで今回、初めて本書を読んでみると、確かにこの魔性の存在は、前述した当時のアメリカ全体を覆う黒い時代性の暗喩であろう(Amazonのレビューでも同じことを言っている人がいたが、その見識に同意する)。

 さらに加えて、あの瀬戸川猛資などがのちにスティーヴン・キングの諸作について語った<モダンホラーで、現実にはありえないスーパーナチュラルな事物にリアリティを与えるためには、とにかく細部を徹底的に描き込むしかない>という創作法がこの時点でちゃんと実践されているのも舌を巻く。
 たとえば、これは最後までその事実の意味は明らかにされなかったと思うが、壁から外された何らかの絵のあとが日焼けせず残っている、そういったさりげない描写などかなりコワい。
 主人公を取り巻く人間たちのキャラクターシフトも今となっては定型的な部分もあるが、これがこのジャンルの先駆(少なくともその一冊)だと思えばあまりに見事に決まりすぎている。
 ラストの強烈なひねりも絶妙ながら21世紀の現在にも通用する普遍性を誇り、これは確かにモダンホラーにおける「一人の芭蕉」的な一冊だろう。
 自分が愛読したモダンホラーの後続のあの作品もかの作品も、本作があったからこそ生まれたように思える。
 時代の推移のなかでよくも悪くも新古典となってしまったことは確かだろうが、このジャンルでの記念碑的な作品であることは疑いようがない。

No.1 6点 蟷螂の斧 2016/03/28 18:27
裏表紙より~『おぞましい悪夢にうなされた夜、ローズマリーは身ごもった。そのときから、彼女の平穏な日々は奇怪な様相を呈し始める。しきりに襲う腹部の異常な激痛と生肉への執着、そして医師や隣人や夫の不審な言動。そのうえ、彼女に何かを知らせようとした友人は怪死を遂げた。だがそれさえも彼女に迫り来る恐怖のほんの序章にすぎなかったのだ! サスペンスの鬼才が大都会に住む現代人の狂気と孤独を描いたモダンホラーの金字塔』~


話は単純で読みやすい。ローズマリーの心理の変化や、恐怖心がよく伝わってきます。米ベスト100位、ミステリー映画ベスト20位。




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