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[ 本格 ]
災厄の町
エラリイ・クイーン、ライツヴィルシリーズ 別題『ライツビルの殺人事件』
エラリイ・クイーン 出版月: 1950年01月 平均: 7.33点 書評数: 30件

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新樹社
1950年01月

早川書房
1972年01月

早川書房
1977年01月

早川書房
1977年01月

早川書房
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2018年04月

No.10 8点 蟷螂の斧 2013/07/28 20:09
前半は人間模様が描かれ、既読の氏の作品と雰囲気・趣が違っていました。動機の隠し方、手紙の扱い方が秀逸であり、人間ドラマとミステリーが融合した佳作であると思います。

No.9 7点 TON2 2013/01/03 21:45
ハヤカワ・ミステリ文庫
 ライツヴィルシリーズ第1作。
 初期作品のパズルのような論理的トリックとは異なり、人間の心のひだの中にひそむ悪魔を扱っています。
 法廷シーンの検察官と弁護士のやりとりは現実味があり見事でした。

No.8 8点 あびびび 2011/05/04 01:17
あるインタビュー記事によると、この作品は作者のお気に入りの第3位らしい。確かに国別シリーズとはまた異なる作風で、殺人事件より、その背景、心理的描写が骨格となっている。

しかし、エンディングは確実にミステリであり、思わぬ犯人が指摘される。こんなレベルなミステリをずっと読んでいたい気もする。

No.7 8点 りゅう 2011/03/28 19:37
 クイーンの文章は退屈で読みにくい印象があり、本作品も読みやすいとは言えませんが、ストーリーに起伏があって、法廷場面は特に楽しめました。エラリイの法廷での発言には驚かされました。毒殺事件の犯人とその手法については私も推測どおりで、ある程度ミステリを読んだ人にはわかりやすいと思います。ただし、全体の謎は複雑で、私は見抜くことが出来ませんでした。エラリイが確認したある事柄によって、完全にミスリードされてしまいました。エラリイの説明には、複雑に絡んだ糸がスルスルとほどけていくような爽快感があるのですが、謎作りのためのご都合主義と感じられる部分もあります。


(完全にネタバレをしています。要注意!)
・ エラリイが、ローズマリーの受取りのサインとローズマリーから来た手紙の筆跡を鑑定することによって、ローズマリーがジムの妹であることを証拠立てる場面があるのですが、これによって見事に騙されてしまいました。
・ (エラリイの説明によると、)ジムは、元の妻(ローズマリー)の殺害を計画した際に、自分に罪がないように見せかけるため、日付の異なる三通の手紙を妹あてにあらかじめ書き残しています。結局殺害は実行されなかったので、手紙も発送されず、この手紙が後日発見されて、毒殺事件の欺瞞のもととなっています。しかし、こんな手紙がカモフラージュになるとは思えませんし、あらかじめ書き残しておく理由がわかりません。この手紙の存在は不自然で、謎作りのためのご都合主義に感じられます。

No.6 8点 kanamori 2010/07/20 21:26
国名シリーズなどのロジック重視のパズラーになんとなく小説としての物足りなさを感じていたので、クイーンがライツヴィルを発見したのと同様に、本書で新しいクイーンを発見した気分だった。
初期の作品群に比べればプロットも単調で真相も分かり易いですが、人間の謎に踏み込んだ内容は厚みがあり、読み応え充分でした。

No.5 8点 Tetchy 2010/02/08 23:59
扱う事件は妻殺し。夫であるジムは金に困り、飲んだくれ、しかも殺人計画を匂わす手紙まで秘匿していた、と明々白々な状況証拠が揃っていながら、当の被害者である妻が夫の無実を信じて疑わないというのが面白い。
そしてその娘婿の無実を妻の家族が信じているというのも一風変わっている。この実に奇妙な犯人と被害者ならびにその家族の関係が最後エラリイの推理が披露される段になって、実に深い意味合いを帯びてくる。

渦中のジムを取巻く真の人間関係についてはすぐに察したが、それ以降のジムがなぜ真実を告げないのかと終始いらいらしながら読んだ疑問が最後に哀しみを伴って明かされるのは秀逸。

『スペイン岬の秘密』でも見られた、真相を明かすこと、犯人を公の場で曝すことが必ずしも正義ではないのだというテーマがここでは更に昇華している。知らなくてもよいこと、気付かなくてもよいことを知ってしまったがために苦悩している。興味本位や己の知的好奇心の充足という、完全な野次馬根性で事件に望んでいたエラリイが直面した探偵という存在の意義についてますます踏み込んでいる。

ただ残念なのはクイーンが最後に披瀝する真相を裏付ける物的証拠が何らないことだ。状況証拠を積み重ねた帰納的推理に過ぎない。
やはり犯罪を扱い、犯人捜しをするのならば、肝心の証拠・証人を押さえて然るべきではないだろうか。

No.4 8点 2010/01/06 21:06
ずいぶん前になりますが、本書を初めて読んだ時にはうならされました。『日本庭園の秘密』で多少萌芽が見えていたとはいえ、クイーンがこんな感動作を書いていたとは…第1章のクイーン氏のアメリカ発見というところからして、架空の町ライツヴィルの造形には驚きです。軽いユーモアも感じられますが、直前の3作のような笑わせではありません。
配達されなかった3通の手紙の発見からサスペンスを盛り上げていって、ついに起こる殺人。多少のご都合主義偶然には敢えて目をつぶって書き進められる、ハロウィーン・クリスマス・元旦・復活祭といった祭日をポイントにした構成が効果的です。最後の推理部分の設定も味がありますし、「今日は“母の日”だぜ!」というエラリーの幕引きせりふもお見事。
真相自体については、ある仮定に立てばすぐ見当がつくでしょう。また犯行方法には偶然もからんでいて、実行は微妙です。まあ状況からすれば、それを手元に用意してさえいれば、さりげなく何とかできないことはないと思いますが。しかし、その謎解きの問題点を差し引いても、作品としての充実度はやはりきわめて高いと思います。

No.3 5点 ElderMizuho 2008/09/09 21:27
非常に評価の悩ましい作品
警察が捜査の第一歩の情報すらまともに調べられていない、そしてその極めて重要な事実を登場人物も読者も知らないままだったことは憤った。いくら伏線があるとはいえこの点に関しては明らかにアンフェアで大きな減点対象なのだけれど、そのおかげであの見事かつもの悲しいラストが見られたという考え方も出来る。
まあそこは相殺としても中だるみが酷いのは何とかしてほしかったかな。町人の描写は物語の根幹なので仕方ないが、少し分量が多すぎた。

No.2 9点 こう 2008/05/17 21:55
 国名シリーズ以降の作品の中で一番気にいっている作品です。殺人トリックは実現可能かどうか疑問ですが、小道具の手紙の使い方はうまいと思います。ロジック一点張りの国名シリーズと違う硬質ではないエラリーもよいです。
 以前テレビでアレンジされた日本国内を舞台にした作品を見た覚えがありますがそれも秀作だった記憶があります。

No.1 7点 あい 2008/03/29 17:55
ここまでくると本当にこれがエラリーなのか疑いたくなる程、落ち着いた性格になっているエラリー。作品も一応ミステリ主体ではあるが、なかなか人間的な作品に仕上がっている。はっきりいって犯人は簡単に分かるが、新しいエラリーの一面を見ることができる作品


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