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[ 本格 ]
悪魔の報酬
エラリイ・クイーン、別題『悪魔の報復』
エラリイ・クイーン 出版月: 1975年11月 平均: 5.10点 書評数: 10件

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東京創元社
1975年11月

東京創元社
1975年11月

早川書房
1976年10月

No.10 5点 ことは 2023/04/17 22:51
再読。昔読んだときは、結構面白かった印象だったが、今回でだいぶ評価が落ちた。主要2人の恋愛模様が、楽しめなかったのが大きい。(たぶん、昔は楽しめたから面白かったのだろう。この辺の感覚は変わってしまっているのだなあ)
2人の行き違いも、もっと話し合えばいいのにと思ってしまうし、キャラの書き込みが十分でないからなのか、心理に共感できない。視点人物が一定でないのも、キャラに寄り添えなかった要因だろう。
ミステリとしても、全体の構築性が乏しい。
まず、事件に対する議論がない。議論の前に、「なにがあったのか?」のデータが整うのが、かなり後半になってからなので、議論のしようがない。これは、読み終わってから考えると、状況がわかれば犯人がわかってしまうからだと思う。
犯人特定のスタイルはクイーンらしくて好きだが、シンプルな内容なので、状況がわかればエラリーの推理を事前にあてることができそうだ。そのため、ぎりぎりまでデータの提示を遅らせたのだと思う。ぎりぎりまでデータの提示を遅らせた理由も、途中から(彼らが話し合ったタイミングで)なくなっていると思うのだが、読み違えているかな?
よかった点の特記すべきは、犯人の心理状況の設定かな。これは面白い。 
そう考えると、映画化からのノベライズである「完全犯罪」(「エラリー・クイーンの事件簿2」所収)のほうが、よかった点はそのままで、より軽快に、よりコンパクトになっているので、面白いかもしれない。

No.9 4点 レッドキング 2020/12/17 20:00
大富豪の娘と父親と恋人の男。父と男に殺人容疑がかかり、父親にはアリバイがあるが男には「反」アリバイが・・。だが、父親は将来の「義理の息子」を庇ってか己のアリバイ弁明を拒否する。父を助ける事が男を窮地に落し、男を庇うには父を犠牲にするしかない娘。そこに妖婦と悪徳弁護士の露骨に怪しすぎるコンビと、実直な使用人、新聞編集長、偽装探偵(エラリイ・クイーン=ヒラリイ・キング!)等が絡み、誰を犯人にすんだ?と訝っていたら、十八番のロジックで犯人を挙げた。そして確かに「意外な犯人」であった。
一瞬、ん?「カー島荘大技トリック」出んのか!と、トキメイたが・・そこはクイーン、単なる「飛び道具」だった。

No.8 5点 虫暮部 2019/09/30 10:46
 結末で明かされる真相、特に僅かなタイミングの差で擦れ違い修復不能になっていくさまは面白かったが、トータルな物語としてはいまひとつ。特にヴァレリー:上流階級のお嬢さんが没落して、料理も自分でしなきゃならない働かなきゃいけない嗚呼庶民生活は悲しいわ、って感じで全然気の毒ではないのが致命的。

 この話が何故この題? と思い辞書を引いたら、the devil to pay で“何かの結果としてのトラブル”といった意味。慣用表現としてのニュアンスを考慮せずに訳しちゃったか?

No.7 5点 ボナンザ 2019/01/04 21:31
中期の佳作の一つ。ハリウッドを舞台とした国名シリーズとは異なるドタバタ劇を交えた展開は賛否両論だと思うが、今読むと許容範囲。

No.6 6点 E-BANKER 2017/11/29 21:11
「ハートの4」「悪の起源」へと続く“ハリウッド・シリーズ”の一作目に当たる本作。
1938年の発表。
原題“The Devil to Pay”(創元版では「悪魔の報復」だが、「報酬」の方が正しいように思える・・・)

~倒産した発電会社の社長ソリー・スペイスがハリウッドの別荘で殺された。彼は倒産にも関わらず狡猾な手段で私腹を肥やし、欺かれた共同経営者や一般投資家から恨みをかっていた。そして、正義感の強い彼の息子もまた父を憎んでいた。警察は直ちに共同経営者を逮捕したが、E.クイーンにはこの事件がそれほど単純でないことを見抜いたのだ・・・~

これって、年代順でいえば「日本樫鳥の謎」の次に発表された作品なんだね。
何となくかなり後期の作品かなぁっていう感覚だったんだけど、国名シリーズのすぐ後に書かれたというのが意外だった。
(ファンの方にとっては当たり前のことでしょうが)
それはともかく、前評判の低さよりは「まずまず楽しめる」レベルのように感じたのだが・・・

確かに作品全体に“浮ついた感”みたいなものが漂ってる。
これはハリウッドの成せる技なのか、はたまた作風の転換を図っていたためなのか・・・
主役級の男女ふたりのやり取りがどうにも“イタい”印象はあって、これに馴染めないという方も多いのだろう。
これを最後の最後まで引っ張る当たり、小説家としての(ミステリー作家としてではなく)クイーンの才能にやや疑問符すら感じてしまう。

ただ、終章でみせるエラリーの真相解明場面は一定のキレっていうか、「あぁやっぱりクイーンだね」という満足感は覚えさせてもらった。
物証なんかは後出しというか、読者が推理できるほどの伏線になっていないようには思えるんだけど、冷静に考えれば真犯人には行き着くよう配慮がなされている。
第三者が“余計な手出しをする”というプロットもマズマズ機能しているのではないか?
ということで、そこそこor水準級の評価はしたい。
でも、他の佳作と比べちゃうと、どうしてもねぇ・・・っていう感じにはなる。
(エラリーの変装は絶対気付くと思うんだけど・・・)

No.5 4点 クリスティ再読 2017/08/15 22:34
ハリウッド全盛期のスクリューボール・コメディが夢物語だっていうことは否定できないことなんだけど、そういうのを狙ったにしても、主として経済的方面での切実さみたいなものが足りないので、どうも主人公カップルに感情移入とかしづらい作品だ...破産してアパートに引っ越すんだが、5部屋もあるんだぜ。ドッチラケも甚だしい。もっとマジメにやれ、と言いたいくらいだ。
でまあ話は主人公と未来の義父が互いにかばいあって事態を紛糾させるわけだが「犯人以外の善意の第三者による工作」って、パズラーとしては一番推理しづらい要素になりがちなので、評者ははっきり気に入らない。犯行手段も...ちょいと確実性が薄すぎるように感じるな。大丈夫か。
あとピンクくん、どう見てもゲイだろ。全体として雰囲気が浮ついてて、今一つな作品。

No.4 6点 青い車 2016/02/26 21:48
殺害トリック、犯人特定のロジックはともにクイーンの安定を感じます。新味に欠けるとも言えますが。とはいえ、国名シリーズの諸作よりサプライズが劣るのはあくまで比較したらの話で、パズルとしては一定の水準を超えた出来です。男女間のロマンスを積極的に取り入れ、物語に華を加えようという作者の試みは評価に値すると思います。現に最初期の頃と比べリーダビリティは格段に上がっており、読み物としてはさらに高ランクなものと言っていいのではないでしょうか。

No.3 4点 Tetchy 2011/11/13 19:45
国名シリーズの後に書かれた3作は通称ハリウッド三部作と呼ばれているが、本書はその第一弾。しかし撮影現場の華やかさとか映画産業の喧しさとかは全く描かれていないため、ハリウッド三部作といいながらも全くハリウッド色を感じさせない。

さて今回エラリイが挑む事件はたった一つ。ある富豪の不可解な死。地味な事件で、なかなか前に進まない印象を受けた。事件は早々に起きるものの、真犯人を特定する証拠、証言に手間取り、またレッド・ヘリングのためか全く関係のないエピソードが挿入され、右往左往しているだけと感じた。
もちろん彼が犯人だと至るエラリイのロジックは相変わらず冴えており、事件の容疑者に当て嵌まる条件から消去法でどんどん犯人へと絞り込んでいく。
しかし残念ながらこの作品に書かれているようには今では犯人は捕まらないだろう。それは全て状況証拠に過ぎないからだ。こういった推理だけならば今の読者は納得しないだろう。作者クイーンの詰めの甘さをどうしても感じてしまう。

No.2 5点 2009/05/07 21:28
直前の過渡期2作がむしろ渋い味わいのある作品だったのに対し、突然やけに軽い印象があるものを書いてくれたクイーンですが、解決がいまひとつすっきりしないところが不満でした。真相は単純明快なのですが、犯人の計画そのものが、目的を達成するための最適な方法とは思えないのです。エラリー以外の視点から書かれた部分の扱いも『ドラゴンの歯』ほどには成功していないと思います。
犯人が他人に罪を着せようと考えた経緯は納得できますし、論理的に穴があるとかいうほどの欠点はないのですが、特におもしろかったところと言えばエラリーのふざけた変貌ぶりぐらいでしょうか。

No.1 7点 nukkam 2009/01/16 14:59
(ネタバレなしです) 1938年発表のエラリー・クイーンシリーズ第12作はハリウッドを舞台にした作品で、国名シリーズやドルリー・レーン4部作とは全く雰囲気が違い、どたばたとお笑いに徹しているのが特徴です。おふざけが目立ち過ぎてクイーン作品の中では一般的評価は低い方ですが本格派推理小説としての手抜きはなく、クイーンならではの論理的な謎解きがちゃんと楽しめます。


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