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[ クライム/倒叙 ]
孤独の島
エラリイ・クイーン 出版月: 1976年10月 平均: 5.17点 書評数: 6件

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早川書房
1976年10月

早川書房
1979年01月

No.6 5点 ことは 2022/06/24 00:09
再読。まったくクイーンらしくない話だが、それなりによかった印象がある。はたして再読でどう感じるだろう?
まず冒頭、悪役側から描かれるが、この悪役に魅力がない。設定は類型的で、知性が感じられず、げんなりしてしまった。
主人公が登場してからは持ち直すが、中盤の裏のかきあいも、いまひとつもりあがらない感じがした。とはいえ、クイーンらしい部分もある。なにしろ、主人公が考える。行動する前に、まず考える。ああ、これはクイーンらしいなぁ。まあ、そのために捜査小説の味がでてきて、サスペンスが弱まってしまっているところがあるかもしれない。
終盤には熱い展開があり、全体的には悪くない。初読時はこの終盤の印象がよかったんだなぁと納得。
「最後の一撃」より後のクイーン長編では、上位になりますね。
1つ小ネタ。主人公が登場の直後、映画の感想をいう場面がありますが、内容からすると、映画は「明日に向かって撃て」ですね。ディリンジャーは「ジョン・デリンジャー」(日本語ウィキペディアに記載あり)のことでしょう。本作も「明日に向かって撃て」も1969年の発表です。

No.5 6点 虫暮部 2021/02/03 11:54
 おまわりに預けよう、と言い出した時、ハハァ、コレは弱味を握っているか、金で転ぶ悪徳警官か、ともかくなにがしかの事情があるんだな、と思った。人質に取り易い家族がいると言うだけなら選択肢は他にもありそうなのに、何故わざわざ警官を巻き込んだ?
 三者三様キャラの立った強盗団に比べて、マローンの性格はあまり読み取れなかった。と言うか、彼本来の性格なのか、状況によって強いられた無理な行動なのか、区別が付かなかった。
 邦題は考え過ぎで合っていない。後半で舞台がどこかの島に移ると信じていたのに。そのまま『コップ・アウト』でいいんじゃないの。

No.4 4点 レッドキング 2020/12/03 21:48
強盗殺人犯トリオ・・冷酷な小男ボス、狡猾な金髪情婦、巨漢の手下・・絵に描いた様な悪党三人組・・対するは、娘を人質にとられた貧しく不器用な警官とその妻。娘と金を巡る虚々実々の無駄のないサスペンス。最高によくできたサスペンスドラマの「ノベライズ」でも読んだような。でもここ、ミステリサイトなんだな、残念なことに。で、本来は採点なし。が、強盗の上前はねた「真犯人」フーダニットと、ラストのカットバック人物トリック描写をもってミステリと評価しよう・・さらにオマケ点も付けちゃう。

No.3 6点 クリスティ再読 2017/04/17 17:19
本作は周知のように、ダネイとリーがちゃんとコンビで書いたにも関わらず、エラリーも出なければパズラーでもない、人質を巡るスリラーである。それこそマッギヴァーンあたりが得意とするタイプの小説だ(「ジャグラー」のプロットと似てるね)。
で...だけど、意外なことに、本作結構面白い。人質を巡るアイロニカルなプロットが二転三転するし、主人公の警官マローンが、自分の子供を救出するために、犯人たちの隠れ家を推理するとか、金の隠し場所を推理するとか、かなり名探偵。サスペンスは持続するし、リーの文章は丁寧で味があっていいし...とあまり文句をつける理由がないんだよね。主人公マローンは後期クイーンがこだわる、ニューイングランド的なキャラ(独立独歩の男。リバタリアン傾向が強い)で、クイーン的な一貫性もある。邦題の「孤独の島」は、そういう孤独な主人公が、物語の最後で町の人々に「宥される」描写からうまく付けた感じのもの。ここら「ガラスの村」のラストと対比してもいいんじゃないかな。
で、原題は「Cop Out」で今だと「責任逃れをする」とか「逃げを打つ」とか、あまりいいニュアンスのある言葉じゃないようだが、「抜け駆けする」というくらいの意味の俗語でとるべきか。とはいえ、本作を読む人ってのは、クイーンのパズラーが好きでしょうがない人だろうから、ニーズを外してもったいない。クイーンという名前がついてるばっかりに、はっきり損している。

No.2 4点 Tetchy 2012/12/26 22:00
エラリー・クイーンのノンシリーズ物。舞台は人口約16,000人の小さな町ニュー・ブラッドフォードで主人公はそこの警察署に勤めるウェズリー・マローン。物語は彼が製紙会社の給料強奪殺人事件を起こしたギャングたちに犯罪の片棒を担ぐよう強要されるところから始まる。
物語は娘の救出、金の紛失、強盗一味の自宅占拠に失った金の在処の捜索、そして再び娘の誘拐と一転二転三転とする。

全く従来のクイーン作品とは趣も文体も味わいも違う作品だ。テイストとしてはハメットやチャンドラーが書いた冷酷無比な悪党の登場するハードボイルドを感じさせる。本書はクイーン作家生活40周年を記念して書かれた作品だが、晩年のクイーン作品の多くがそうであったように、本書もまた他の作家の手によるクイーン名義の作品だと思っていた。
しかし調べてみるにどうも本書は実際にクイーン自身が著した作品のようだ。しかし逆にそれが本書の魅力を減じていると私は思う。

なぜならクイーン=本格という図式が強く根付いているため、本書でもそれを期待してしまうからだ。その先入観が強すぎて本書の世界に浸れない自分がいた。

No.1 6点 2009/08/30 10:43
デビュー40周年記念と巻頭に記された本作は、クイーンの全作(ダネイ、リーが少なくともプロットを考えた作品に限る)の中でも、とびっきりの異色作です。エラリーが登場しないだけでなく、全然本格派でないのですから。映画『俺たちに明日はない』やボガード主演の『マルタの鷹』への言及がされていますが、小説のタイプ自体がそれらの映画をも思わせるハードボイルド的な感じのするサスペンスものです。
型通りの強盗殺人を犯した3人組。しかし死体がすぐに発見されてしまったことから、事件は意外な方向に転がっていきます。とは言え、隠れ家を見つけたり「犯人」を指摘するあたりにはクイーンらしい推理も多少見られますし、邦題の「孤独の島」というテーマもどことなくこの作者らしいところが感じられます。クイーン=論理的謎解きと決めつけて読みさえしなければ、緊迫感も最後まで持続し、楽しめると思います。


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