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ミステリの祭典

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ミステリ初心者さんの登録情報
平均点:6.16点 書評数:416件

プロフィール| 書評

No.116 6点 霧越邸殺人事件
綾辻行人
(2018/08/21 16:56登録)
 ネタバレを含みます


 連続殺人は、一人の犯行であるパターンが多いことを逆手に取ったミスリード的なものが良かったです。自分は、なんとなく"どうせ犯人っぽい槍中犯人だろう"と決め付けていたのですが、最初のアリバイが完璧すぎて頭を悩ませていましたw
 主人公の独白?の"彼は見事に犯人を言い当てた"的記述にも嘘がなく、よかったです。

 以下好みではなかった部分。
・余分な文章がおおく、無駄に長い気がする
・複数犯人を示唆する部分があり、フェア度が高いが、すべてを推理するには難易度が高すぎると思う。
 甲斐は睡眠薬を見ていない→どれが睡眠薬かわからない→甲斐は犯人ではないという良いロジックがありましたが、甲斐は医学の知識もあるんですよね? 睡眠薬は医師忍冬しかわからないもんでしょうか?
・槍中視点で見ると、都合の良い偶然と都合の悪い偶然がおきすぎている。
・死体を冷凍して、犯行時間を偽装するトリックは簡単すぎてあまり魅力に感じなかった。

 ページ数の割りに地味な印象を持ちました。


No.115 7点 贈る物語 Mystery
アンソロジー(国内編集者)
(2018/08/13 01:29登録)
ネタバレをしています。面白かったり、気になった作品の感想を書きます。


○暗黒の館の冒険
 面白かったのですが、犯人本人が自分の色覚異常に気づかないということはありえるのでしょうか?

○密室の行者
 まったくわかりませんでした。今読んでも新しさを感じます。アニメ日本昔話の吉作落としを思い出しました。

○長方形の部屋
  ちょっと私のおつむが追いついていません。ラルフは、トムに何と言って刺すことを指示したのでしょうかね? トムはラルフを神格化?してたのはわかりましたが、自分自身も神だと思っていて、復活する気だったのでしょうか? 部屋を墓と見立てていたのは? LSDの影響は? ちょっとよくわかりませんでしたw

○カニバリズムの小論
 食人に関する話も面白く、だれなかったです。排泄物が必要でなにかしたのかと思ってましたが、排泄自体が目的だったんですね。
 238ページの主人公が秋山駿だ!と反応するシーンが好きです。あそこで、"あれ?秋山駿ばかり読んでいるのはだれだっけ?"とページをめくって読み直すと、大久保信で、あっ…みたいなw
 こういう叙述ものは割とよく見ますが、それでも短編にかかわらず2度おいしい作品でした。

○達也が笑う
 こんな面白い催し物があったとはw 内容も、短編であるにもかかわらず長編本格並みの面白さでした!
 自分は、芳江と部屋で会話したにもかかわらず嫉妬しない兵太郎の様子から、浦和が女性と予想して、"性別を隠すように書いているのならどうせ犯人だろう"と論理もへったくれもないことを考えていましたw 浦和の義兄の事件は、密室状況が完璧すぎたため、おそらく自殺を他殺にしているのだろうとは予想しましたが、細かい点はわかりませんでした。女性は3人→ミミは男性も予想外でした。

 ちなみに、犯人が主観もので、犯人の不利な情報を書かないのは、犯人自体が文を書いたから…という解釈でいいのでしょうか? だとすると、これ系がもう4作目であり(それぞれオリジナリティーはありますが)ちょっと食傷気味ですw


No.114 6点 シャッター・アイランド
デニス・ルヘイン
(2018/08/10 02:32登録)
ネタバレを含みます。

 設定に引き込まれました。精神病棟の島、患者や医者だれがうそをついているのかわからない。ロボトミー手術などのホラー的な要素(過去に実際やっていた手術だそうですが、とても怖いですね)やサスペンス的な要素。だれない展開のため、2~3日で読了できました。

 ただ、最後の展開は、これ系小説にはありがちなラストであり、この小説ならではの個性やどんでん返しに乏しかった印象でした。主人公の夢?にでてくる暗示が、ヒント過剰なのかもしれません。作品の紹介文に"密室"と書かれていましたが、まったく密室ではなく、さらにそこにはほとんど触れられずにスルーされています。
いっそ、偽のレイチェル(エミリー)の語った、病院が人体実験を行っていて~主人公を薬でおかしくさせて~という展開のほうがぞっとする怖さはあったかもしれません。


No.113 7点 生ける屍の死
山口雅也
(2018/08/06 03:19登録)
ネタバレをしています。



 紹介文をみてすぐ買いましたw ちょうど新装文庫版が発売されていました。
 人を殺しても生き返る(?)世界でのミステリはオリジナリティが高く、かつ登場人物も面白い人が多く、単純に読み物としての評価が高いです! しかし、上巻途中までの衒学がすこしだけ冗長に感じることもありました。ほとんどは楽しく読めましたが・・・ 逆に、衒学の中にヒントがあるのなら、仮死状態→復活を何かトリックに使ったのか?とか序盤は考えていました。

 この本はいろいろな要素が入っていますが、もっとも大きい謎は、生き返るのになぜ殺すのか?ということだと思ってます。
ジョンの、遺産相続のなんやかんやで殺されたことを演出することは生ける屍についての法律がよくわからなかったのでピンとはきませんでした(記述があったら申し訳ありません)。 
モニカのほうは、納得がいきました。モニカの殺害動機がこの作品のなかでもっとも好きな部分です。

 あまり不満がありません。
あえてあげるなら、生ける屍がその1度目の死を隠し、生きている人間ではおこるデメリット(睡眠薬で眠らないなど)を回避することやそれを使ったトリックはあまり驚きがなかったです。
生ける屍を化したモニカの身体能力も、生ける屍のサンプルがグリンだけであったためピンときません(最初にすこしありましたね)。さらにモニカの痴呆具合もやや不明で、スマイリー達がモニカの足の不自由を隠していたとしても急にたってしまったりしないのか疑問でした。
と、文句を書きましたが、かなり楽しめた作品でした! 次は日本殺人事件を買おう!


No.112 8点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2018/08/06 02:56登録)
ネタバレをしています



 以前、東野圭吾さんの本を読んだときには相性がわるいと感じたのですが、この作品はとても面白くかつほぼ1晩で読めてしまいましたw クローズドサークルということもあったんでしょうが。

 こってこてのクローズドサークルのように描かれたようで、設定からラストまで実はお約束を裏切る展開で好きです。誰も山荘を出ないがクローズドサークルではないことや、全員役者、舞台稽古風(?)とお決まりの展開から外れたオリジナリティがすばらしかったです。特に、感動的なラストのクローズドサークルは見たことがなく、いい意味で違和感がすごい!
推理小説は普通、犯人が探偵やそれ以外をだますためにトリックをつかったり、作者が読者を直接だますためにトリックをつかったりします(この作品もそうですが)。が、犯人が第三者をだますために演技をしているのは新しいな!と感動しました。そのために犯人と被害者が協力関係にあり、犯人と神の視点はある意味で協力関係でない。

 神の視点=登場人物主観系は、他にも読んだことがあり、その作品よりもこの作品のほうが早く出たということに驚きましたw 他の作品も大好きなのですが、そちらのほうがそのトリック自身を生かしており、お互いにオリジナリティがあると思っています。

 自分は、独白のある久我のみ事情を知らされていない探偵で、その他の人物はすべて演技であり、カメラで撮っているのでは?と、論理も動機もまったく無視した的外れなことを考えていましたw 一種の作中作のような感じの考え方ですが、よく考えたら久我が探偵役として無能でも優秀すぎても成り立たず・・・


 あえて気に入らない点を上げるとすれば、由梨江殺害役が雨宮をがやっていること。ただ、これも、犯人がこれからの被害者に犯行を依頼するという、この作品でないと見られないような変わった光景がみれるという意味ではすばらしかったです。


No.111 7点 夜歩く
横溝正史
(2018/07/18 16:38登録)
 自分が過去に読んだ他の横溝作品よりも本格度が高く、楽しめました。


 以下、ネタバレを含む、ちょっと気になる点
 直記の部屋から取り出した日本刀で首をちょん切ったようですが、日本刀である必要があったんですかね? 念密な計画を練ったようだし、もっといい凶器があったのではw
 あと、血のついた凶器をそのまま直記の部屋の部屋においておくのはリスキーでは・・・? 金庫にしまうときも、犯行時間をずらすトリックが矛盾するとは思わなかったんでしょうか? 探偵小説家のサガでしょうか?

 他、細かい不満がありますが、楽しかったです。高木作品に似た雰囲気のものがありましたね!


No.110 7点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/06/06 01:47登録)
ネタバレをしています。※無駄に長い書評になってしまったため、大幅削減しました(笑)

 クローズドサークル×ゾンビパニックという、いままで読んだことのないミステリでした。非常に読み易い文章ですいすい読めてしました。現実にはありえない状況のミステリにもかかわらず、その作風はきわめて強い本格であり、大変満足です。こんなに若く、オリジナリティーを出し、それでいて本格度の高い作品が書ける作家が世に出て興奮します(笑)。

 満足度の高い作品ではありますが、難癖ポイントもあります。それは、無駄に叙述トリックが使われています。ミスリードに使われていますが、本格度が高いフーダニットと叙述トリック・意外な犯人・どんでん返しは相性が悪いと自分では思っています。つまり、叙述トリック部分は無かったほうが良かったと思います。


No.109 7点 体育館の殺人
青崎有吾
(2018/04/28 10:56登録)
 若干のネタバレがあります


 犯人を一人に断定できる、本格度の高い作品でした。帯に書いてあった、"クイーンの論理+学園もの"の看板に偽りはありませんでした。

 難癖をつけるとしたら、犯人の手際がよすぎて、まるでアサシンクリード。他の方のレビューでも指摘されていた点ですが、被害者は悲鳴とか抵抗とかなかったんでしょうか?
 あと、探偵のキャラクターが好きになれないというか、苦手でした。ネタのわからないことばかり喋っていて、さっぱり?でした。唯一理解できたネタは、バキとジョジョの"!"と"ツ"のつけ方のくだりだけでした。

 表紙の傘をさした女性は誰だったんでしょうか? 柚乃…?


No.108 8点 折れた竜骨
米澤穂信
(2018/04/21 02:24登録)
ネタバレをしています。


 剣と魔法のファンタジー小説としても雰囲気がよく、推理小説としても本格度が高い2度おいしい作品でした。無駄な点が一切なく、ファンタジーとして楽しみつつ、ファンタジーの部分に論理的に犯人を除外するヒントも混ざっていました。
 最後に近づくにつれ、なにやら寂しいというか、この小説が終わってほしくない感じがありましたw 続編とか、書かないんですかね? (ニコラとアミーナは再会フラグが立っていますね)

 気に入らない点をあえて上げるとすれば、エンマが呪われたデール人である→彼女は犯人ではないという描写がわかりづらい。エンマ以外の傭兵の"犯人ではない根拠"には納得がいきましたが、この点についてはややヒントに乏しいと思いました。ただ、水中から上がってくるところで、普通の人間ならば死んでいるところを生還したので、私自身も"デーン人か?"と感じていまし、それほどアンフェアではないですが、もう少しヒントがあってもよいとは思いました。


No.107 7点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2018/04/17 23:58登録)
ネタバレをしています。


 とても読みやすく楽しめました。雰囲気がいいですね。
たぶんほかの方も書かれていると思いますが、横溝作品のような趣があり、大きいミスリードになっているような気がします。伝説や被害者の名前、主人公の名前などからそれを感じます。

 ややこしいので、初めて主人公と出会ったみかげが2代、その母が初代、18年後の主人公の娘のみかげが3代と書きます。
 最初からミスリード全開でしたね。主人公と2代の出会いや、キャラクターから2代みかげを探偵役と錯覚します。ただこの作者はひねくれている(?)と私は思っているので、"どうせひどいやつなんだろう"と予想しましたが、予想をはるかに超えて屑でしたねw
 18年前の事件でのライターの問題はかなり面白かったです。この小説内でもっとも説得力のあるヒントでした。

 中盤ぐらいまでの私のふわっとした予想は、山科あるいは初代によるみかげ試験かなにかと思いました。もし初代が生きているのであれば、スガルか光恵さんのようなあまり登場のしない女性か? 結果的大外れでした。よく考えてみたら、2代が名探偵であれば初代と父が大量殺人者と指摘してしまい、警察の協力が得られないだろうし。
しかし18年後の3代の扱う事件においては、何だかそれ近くなったのがなんともいえない。
 2代が結果屑だったのは予想しましたが、それによって後味がよくなった(?)かもしれませんね。3代は容姿は"みかげ"で性格もよさそうな究極完全生命体なので、種馬マンにとって救いがw 続編は書いてほしくないw 

 以下気に入らない点。
・的外れな意見かもしれませんが、2代や3代の偽推理でも説得力がある点。
・クラウスを使ったトリックや腹話術(いっこく堂顔負け!) 成功するのか疑問。 クラウスちゃんが死んでショックでした。 ややバカミス感がある気がしますがどうでしょう?


No.106 7点 マジックミラー
有栖川有栖
(2018/04/12 14:30登録)
ネタバレをしています。


 推理小説を読み終わった後、"なんで自分はわからなかったんだ~よく考えたら当てられたのに~"という感想がでる作品ほど好みというか、価値が高いと思っています。まさにこの作品がそうでした。大トリックというわけではないのですが、職人的な印象があります。
 時刻表トリックが苦手で、時間と場所の情報が頭に入りづらい私ですが、途中の小桑の推理によって、つまり論点は何か?とわかりやすく説明されているため読むのが苦ではありませんでした。
 その他、空知が主人公や探偵のような雰囲気を出しながら否定するミスリード(違う?)、はじめの文が小桑兄弟であること(たぶん)も好みです。アリバイ講義も面白く、「これは好みのタイプだな」とか「これは嫌いだな」とか「あの作品もこのタイプだ!」など脳内に浮かびおもしろいです。今よりもっと推理小説を読んだら、また違った思いがあるかもしれませんね。
 題にもなっている、マジックミラーの使い方も好きでした。

 私は、第一の殺人で新一と健一があらかじめ入れ替わって生活しているとか、すさまじく的外れな推理をしていましたw
さらに、第二の殺人では、空知が犯人であり双子がほぼ同時に殺され、かつアリバイに利用されるところまで予想しましたが(だれでもそうか)まったくトリックを思いつきませんでした。


No.105 7点 蝶々殺人事件
横溝正史
(2018/04/06 17:21登録)
ネタバレをしています。


 自分はこれまで金田一シリーズしか知りませんでした。なのでこの作品を読んだとき、作者のイメージと違いました。金田一シリーズに比べ本格っぽさが強く、好みでした。かつそれでいて読みさすさがあり、ほぼ2~3日で読めました。
 たぶんメイントリックは、第一の殺人のトランクとコントラバスケースによる殺害場所の偽装と思いますが、私は事前にあの作品を読んでしまったためにある程度は予想できてしまいましたw しかしこのトリックは面白く、のちの名作につながる意味でも評価したいです。

 以下好みでない点。
 登場人物のうそや隠し事が多い。殺人事件をはあまり関係ないところでの事件を絡め、ミスリードに使うことはアガサの作品に多かったと思います。好みの問題ですが、あまり話が複雑だと難易度が上がってしまいますね。
 手記の記述者=犯人。これ自体嫌いではないのですが、名作に先例があると思うし、挑戦状までつけてやることではないような・・・。もちろんフェアと思いますが。これまで読んだこれ系トリックとしてはもっと軽かったです。


No.104 5点 密閉教室
法月綸太郎
(2018/04/02 17:48登録)
ネタバレをしています。



 非常に多くのミスリードが入っていて、読者の裏をかいてやるぞ!という意気込みが感じられました。よく考えると、あの主人公のきどった(?)物言いやキャラもミスリードぽいですね。

 ただ、この作品ならではの個性が薄いように感じました。この方の小説は、他に短編を数作読んだだけなのでまだ作風がいまいちわかってないのですが、いわゆるウミガメのスープゲーム的な感じがするのは私だけでしょうか?


No.103 7点 炎に絵を
陳舜臣
(2018/04/01 10:52登録)
 ネタバレをしています。





 結構古い作品にもかかわらず、かなり読みやすかったです。
 どんでん返しも楽しめ、伏線も多く読み返しても2度おもしろい良い作品でした。キャラクターの印象も初見とは180度ひっくりかえるんですね・・・怖いですね。
 個人的にもっとも気に入った点は、嫂が足をひねっていた点。

 以下、好みでなかった点。
 春名・植原などの別の事件も絡んでくるため、話が少々ややこしい。
 主人公が犯人の想定通り動いてくれるかは偶然が絡む。
 犯人には共犯が多く、すべてを推測するのは困難。
 上に書いたことと矛盾するようで申し訳ないのですが、伏線の過剰さで大体の真相が予想できてしまう。

 最近の作品は、ちょっとした叙述トリックの亜種が多いような印象です。この炎に絵をのような、叙述トリックを使われていないどんでん返しは価値が高いと思いました(もしかしたら、私の読解力が足りてなく、叙述トリックがあるのかもしれませんが)。


No.102 5点 さよなら神様
麻耶雄嵩
(2018/03/19 23:52登録)
 さよなら神様と神様ゲームのネタバレをしています。



 主人公に対する、比土と神様のとりまきの反応から、割と前半から主人公は女性なんじゃないかと直感しました。オナベ→レズビアン→前作主人公の母の幼少期の物語!? と早とちり。盛大にはずしましたw

 前作神様ゲームがすごくよかったので、ハードルが上がってしまったかもしれません。前作とくらべ衝撃度もおもしろさも半減した印象です。

 最後の一文は、幸せな人間には神様なんていらないんだな~と思いました。


No.101 7点 神様ゲーム
麻耶雄嵩
(2018/02/08 17:25登録)
 ネタバレをしています。



 とても読みやすく、しかも余計な衒学部分?が一切なかったです。そのため、ページ数が多くなくすぐに読み終わりました。

 ミチルちゃんに怪しい点が多く、たいていの読者が犯人と予想したのではないでしょうか? 英樹を殺した後、その服を着て帰ることができるのはミチルちゃんぐらいだと思います。 ただその後は推理難しく、共犯の可能性が高いことはわかったのですが、さっぱりでした。蓋に隠れられる小学生は、あとは須之内?ぐらいしかいない・・・でも登場すらしていないので犯人ではありえない(本の展開的に)。
 麻耶雄嵩さんの作品なので、大どんでん返しがあるのだろうと予想していました。やはりありましたね! 最初から叙述トリックの香りがする作品でしたが、主人公の推理が見事でそっちもすばらしいと思いました。本当に小学生なんでしょうか…登場人物全員が妙に大人びているw

 以下、難癖をつけたくなるところ。
 主人公の推理でも話が通るし、寧ろ自然な点すらあるきがする。叙述トリック系はほとんどがそうですが、納得のいく解決が複数あること。
 主人公母の"背が小さい"という描写が不十分というか、小学生(小4?)並みに小さいのはちょっと・・・? いま調べてみたら、10歳11ヶ月でもだいたい140cmぐらいらしいですね。まあこれも叙述あるある。
 神様である鈴木くんの"エッチ"という表現。少々ぼやかした表現ですが、いいミスリードかも?

 これは自分の理解力不足かもしれませんが、英樹の服を死体である英樹にもう一度着せたのはなぜなのでしょうか??


No.100 6点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2017/12/10 10:38登録)
 この作品は、過去のさまざまなトリックが使われていて、ねたが割れてしまう可能性があるため、後回しにしたほうがいいかもしれません。

以下、本作品のネタバレをしながらレビューしています。


 設定が特殊で、すぐに夢中になりました。物語パートの間に解答パートがあり、伏線やミスリードがすぐ回収されて読みやすいです。
 メイントリック?は、マジシャンがよくやるマジックと似ていると思いました。マジシャンが、「今あなたが選んだカードを昨日から予想していました」とか何とか言って、昨日からはっつけておいたカードをだすアレです。マジックとミステリってすごく親和性が高いですよね。

 この作品は、叙述トリックや多重解決?ものを皮肉っているのか、リスペクトしているのかよくわかりません。ただ樺山が言いたいこともちょっとわからなくもないです。叙述トリック物だけでなく、アガサや横溝作品他、"誰が犯人でも間違いではない"系が全ミステリのほとんどだと思います。何が伏線で、何がミスリードかは作者が勝手に決めているだけ。ただ、やっぱり名作といわれるものにはオリジナリティーなり、よいトリックなり、読み物として面白さがあるので、本作品はやっぱりその点で劣っていると思います。

 気に入らない点としては、ギャグ調に展開したのに急にホラーのような要素があり、不要に思えました。なんなら、もっとギャグに徹したほうがよかったです。
 あと私のお気に入り"たま人間説"が早い段階で出てしまって残念w アッーーー!には笑いました


No.99 4点 動く家の殺人
歌野晶午
(2017/12/09 02:41登録)
ネタバレをしています。



 かなり読みやすく、自分にしてはわりと早く終わりました。
 タイトルや冒頭の探偵の死、偽探偵のありそうな推理など、ミスリードが多くあります。だましてやるぞ!という意気込みを感じました。
 私は、探偵の死(うそ臭い)から探偵が偽者ということを予想して、"探偵犯人物"か"探偵の推理が間違うorうそをつく"のような展開を予想しました。物語を読むと、探偵犯人物ではなさそうだったので、偽推理と決め付けていました。偽推理・真相ともにまったく当たりませんでしたがw(恭子犯人もあるのではないかと思っていました)


 以下、気に入らない点

 結局、他人に殺させた自殺のような真相ですが、タイトルの"殺人"はかなり際どい。ギリギリアンフェアと思いました。犯人が劇中の登場人物を殺人するという解釈…? ただどのみち結果自殺ものなので好みではありませんでした。真相を当てることも難しい。


No.98 5点 密室殺人ゲーム王手飛車取り
歌野晶午
(2017/12/03 23:26登録)
ネタバレがあります。



 設定が凝っていて(?)かなり読みやすかったです。登場人物のキャラ付けや、しゃべり方の違いで、今誰が発言しているのかなどがわかりやすい。私のような、文章を読む力が乏しい人間にはありがたい。一晩で読んでしまいました。歌野さんの本と相性がよいようで、もっと読んでみたくなりました。
 さらに、各登場人物の出題した問題が一つ一つの短編としても楽しめました。ザンギャ君の問題が一番の好みでした。コロンボもよかったですね。

 こういう設定だと、"各登場人物が知らぬ間に会っていた"とか、"知らぬ間に殺していた"という展開はありがちで、あまり驚きはありませんでした。コロンボがいなくなった時点で、殺されたんだな→頭狂人は妹なんだなというのも予想できた展開で、驚きは少なかったです。頭狂人の特徴が男性的であり、男性と勘違いしてしまう叙述トリックのような趣がありますが、そのトリックは他にもっとよい小説があります。女性であることをにおわす伏線も少なかったように思えます。ですがさすがに教授がギャルとは予想外でした。


 ザンギャ君のみせた、生首の下にドライアイスを設置して叫び声をあげさせるトリックは面白かったのです。しかしあれは実際できるものなのでしょうか??


No.97 6点 双月城の惨劇
加賀美雅之
(2017/12/02 17:51登録)
ネタバレを含みます。



 コテコテのド本格要素がたっぷり含まれており、私好みの作品でした。 古い城! 双子! 伝説! 密室四連発! フラグたてまくるトマソン! 案の定殺されるトマソン!
 普段、まったく推理があたらない私が、そこそこあたりました。なので、難易度は低いと思われます。第一の殺人の状況から自殺・共犯ありありなことが推測できます。それを考えにいれると作品の難易度が下がります。(シュトロハイム主犯はわかりませんでした。滑車のトリックもわかりませんでした。ベルトランとの推理バトルを期待していたのもありました)

 これは私が読み飛ばしてしまったのかどうかわかりませんが、第二の殺人は新月の部屋のそとで殺人が行われたんですよね? 新月の部屋に血痕はあったんでしょうか? 犯人は新月の部屋内部で起こった犯行に見せたいんですよね? ある程度派手に血痕がないといけないのでは? どうだったかな…?

 以下、難癖をつけたくなる部分
①共犯者が多い。これだけ多いと、大抵の不可能犯罪が実現できるような気がする。できれば、犯人が一人ですべて犯行を行った作品のほうが好みです。
②自殺がある。①もそうですが、自殺と共犯をまぜると推理がむずかしくなってしまいます。
③投石機って、そんなに精度が高いの!?
④ベルトランの、"シュトロハイムは共犯なんてするわけない"が紛らわしすぎるッ! 主犯だからウソジャネーヨとかうざいッ!

 私が期待していた展開。
シュトロハイムがまず推理を披露する。誰もがその推理を正しいと思う。ベルトランがその推理の論理的欠点を指摘→驚きの新推理による真犯人が明らかになる。やったぜ。

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