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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2940件

プロフィール| 書評

No.1360 8点 そして扉が閉ざされた
岡嶋二人
(2016/06/27 11:21登録)
(ネタバレなしです) 国内では珍しいコンビ作家の岡嶋二人は1982年から1989年の短期間に多くの傑作を残してコンビ解散しましたが得意ジャンルが誘拐サスペンスだったので本格派推理小説好きな私の個人的関心は低い方でした。しかし1987年発表の本書は「徹底した本格を書いてやろうという決意のもとに書いた」というだけあって本格好き読者に満足できる作品となりました。誘拐場面から始まる序盤の展開はあれれ?、と思いましたが自然な流れで謎解き推理小説へ移行します。少数の登場人物ながらどんでん返しの連続があって容易には読者に真相をつかませず、しかも謎解き伏線を丁寧に張ってあって完成度は大変高いです。もっと本格を書いてほしかったです。


No.1359 4点 十三番目の陪審員
芦辺拓
(2016/06/27 11:13登録)
(ネタバレなしです) 1998年発表の森江春策シリーズ第5作の本格派推理小説です。復活した陪審員制度(現実の裁判員制度とは少々違います)にDNA鑑定の無効化などよくもまあこれだけ考えたものだと感心する一方、あまりにも人工的な作品世界になじめませんでした。またこのプロットではやむを得ないのでしょうが組織的陰謀の色合いが強くて通常の本格派推理小説の犯人当ての楽しみが少ないのも個人的には好みに合わなかったです。


No.1358 6点 Wの悲劇
夏樹静子
(2016/06/27 10:45登録)
(ネタバレなしです) 作者は1982年発表の本書を「純本格派」を意識して書いたようですが本格派としてはやや変化球気味の作品です。前半の展開は完全にサスペンス小説、それが後半になると謎解き小説に切り替わるプロットはルーファス・キングの「不変の神の事件」(1936年)を連想させます。暗いけど重過ぎない雰囲気と冬の寒さの描写がよくマッチしています(唐突なロマンスは蛇足に感じましたが)。ちなみに映画化もされましたが映画(私は未鑑賞です)と小説ではストーリーが大きく違うそうです。なお私はエラリー・クイーンの名作「Xの悲劇」(1932年)や「Yの悲劇」(1932年)を露骨に真似しているタイトル付けに何となく反感を抱いてずっと敬遠してましたが、実はちゃんとクイーンの了解を得て発表していたことを長らく知りませんでした(不勉強でした)。


No.1357 4点 キルトにくるまれた死体
キャサリン・ホール・ペイジ
(2016/06/26 23:50登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表のフェイス・フェアチャイルドシリーズ第6作ですが本書の主役はピックス・ミラーで、フェイスは完全に脇役という番外編的な作品です。たまには目先を変えてみたかったのかもしれませんがフェイスに比べると地味なキャラクターでした(フェイスだってコージー派ミステリーの探偵役では決して派手な方ではないのですが)。端正な文章で丁寧に描いてはいますがどうもプロットにメリハリがなくて意外と読みにくく、せっかくのサマーキャンプ描写もにぎやかさや活気をもっと伝えてほしかったです。謎解きに関してはフェイスを探偵役にしている作品と同じようなパターンで(つまりほとんど運任せで)解決されており、主役交代させる意味はあまりなかったような気がします。


No.1356 5点 顔のない告発者
ブリス・ペルマン
(2016/06/26 23:41登録)
(ネタバレなしです) ブリス・ペルマン(1924-2004)はピエール・ダルシという別のペンネームもあり、50作以上のミステリーを書いたらしいのですが作品がほとんど翻訳されていないフランス作家です。1983年発表の本書は本格派推理小説と紹介されていますが、きっちり合理的な答えを用意している点は評価できますけど論理的な謎解きよりも心理サスペンスを書いた方が作風的に合っているような気がします。冒頭で提示された謎の魅力を膨らますような工夫がほとんどなく、人物描写も精彩がなくて前半はやや平凡です(創元推理文庫版が200ページ少々程度の厚さなので退屈するところまではいきませんが)。後半になるとようやく登場人物に性格づけがなされ、彼らの思惑や疑心が解決のきっかけになっていきますがほとんど物証のないままなので探偵役の推理に多くを期待してはいけません。(他作家による前例はありますが)ちょっと珍しい真相が印象的です。


No.1355 4点 娼婦殺し
アン・ペリー
(2016/06/26 23:36登録)
(ネタバレなしです) 1996年発表のトーマス・ピットシリーズ第16作となる警察小説です。とにかく手掛かりが限られている上に階級社会という制約もあって捜査はなかなか進展しません(でも退屈はしません)。唐突に解決してしまってあれれと思いきやそこからストーリーは二転三転します。推理場面に乏しくて読者が犯人当てに挑戦する要素がほとんどないのが個人的には残念ですけど。時代風俗描写は相変わらず冴えています。


No.1354 5点 容疑者たちの事情
ジェイニー・ボライソー
(2016/06/26 08:58登録)
(ネタバレなしです) イギリスのコーンウォール生まれのジェイニー・ボライソー(1950ー2002)は12作のイアン・ローパー警部シリーズと7作のローズ・トレヴェリアンシリーズで知られる女性作家です。後者は英語原題に全部「In Cornwall」が使われており、コーンウォールの丁寧な描写が印象的です。創元推理文庫版でライトミステリと紹介されていますが1997年発表のローズ・トレヴェニアンシリーズ第1作である本書を読む限りではアメリカのコージー派ミステリのようなユーモラスで明るい雰囲気はありません。どちらかといえば暗い作風です。暗いといっても漆黒の闇の暗さというよりは灰色の雲に覆われた空みたいな暗さのイメージです。写真家で画家のローズが探偵役として犯人を探す本格派推理小説のプロットではありますが登場人物が織り成す様々なドラマも丁寧に描かれています。証拠がほとんどない謎解きになっていて推理に関しては物足りなかったのが残念です。


No.1353 6点 山をも動かす
アリサ・クレイグ
(2016/06/25 21:32登録)
(ネタバレなしです) シャーロット・マクラウド名義の作品も含めると第4のシリーズとなるのが1981年発表の本書でスタートしたディタニー・ヘンビットシリーズです。謎解きよりも選挙戦の方に力を入れて描写したような感もありますがこれが非常に楽しく、女性陣の活躍ぶりが目立ちます。この作者ですから当然まともな選挙戦になるはずもなく、敵の妨害工作をヘンビット陣営がいかにしのぐかの攻防が中心になっています。一方男性陣は行動が控え目ながらも謎解きの方ではしっかり貢献しています(私でも犯人が当たったぐらい簡単すぎな謎解きですが)。シリーズ第1作目ということもあってまだ十分描ききれていないキャラクターもいますがそれは今後の作品に期待でしょう。


No.1352 6点 金曜日ラビは寝坊した
ハリイ・ケメルマン
(2016/06/25 18:25登録)
(ネタバレなしです) G・K・チェスタトンのブラウン神父シリーズのように聖職者を探偵役にした本格派推理小説はいくつか例がありますが1964年発表の本書に始まるラビ・スモールシリーズはユダヤ教のラビ(本書を読むと律法学士と紹介されており聖職者とみなすかは微妙なようです)が探偵役で、ユダヤ教やユダヤ人社会を丁寧に描いているのが特色となっています。宗教色も民族色も決して押しつけがましくはなく万人受けする作品に仕上がっています。謎解きの方も派手な展開は全くありませんがツボは手堅く抑えてあります。あまりに大胆な伏線には驚いたというより笑ってしまいましたが。


No.1351 4点 カマフォード村の哀惜
エリス・ピーターズ
(2016/06/25 18:16登録)
(ネタバレなしです) 英国の女性作家エリス・ピーターズ(1913-1995)は修道士カドフェルシリーズの歴史本格派推理小説で世界的に有名ですがこのシリーズが発表されたのは1977年からと意外に遅いです。作家活動自体は1930年代にまでさかのぼることができますが最初はミステリーでない歴史小説の分野で活躍し、本格的にミステリーを書くようになったのは1950年代になってからです(但し1930年代にも別名義で若書きのミステリーを書いてはいたようです)。本書は1951年発表のフェルス一家シリーズ第1作ですがまだ文章が硬く、人物の描き分けが上手くなくて後年の作品群に見られる人間ドラマとは雲泥の差です。謎解きも中盤まで盛り上がりに乏しく終盤になってようやく巻き返してはいますが本書ならではという個性が感じられません。作者もこれでは駄目だと感じたのかシリーズ次作の「死と陽気な女」(1962年)を発表するのに10年以上かけています。本書はまだ習作レベルというべきでしょうか。


No.1350 5点 孤島の鬼
江戸川乱歩
(2016/06/24 10:56登録)
(ネタバレなしです) 江戸川乱歩(1894-1965)の最高傑作と評価されることも多い1929年発表の長編作品です。ジャンルミックス型のミステリーで、3分の1が謎解き本格派推理小説、3分の1がスリラー小説、3分の1が冒険小説となっていて彼の多面性がこの1冊に網羅されているのが高評価につながっているのだと思います。不可能犯罪の謎は魅力的ですがトリックはやや微妙(笑)、でも一応合理的に解決しています。とはいえやはり彼の本領はスリラー小説にあったようで、雑記長に書かれた異様な物語や異常な犯人像描写は本書の白眉です。個人的にはあまり深入りしたくありませんが(笑)。


No.1349 5点 ロシア紅茶の謎
有栖川有栖
(2016/06/24 08:45登録)
(ネタバレなしです) パーティーでロシア紅茶を飲んで死んだ被害者。だがどうやって毒を飲まされたのかがわからない「ロシア紅茶の謎」、夜中の動物園で殺された男が握っていた紙に動物の名前が羅列されていた「動物園の暗号」など火村英生の名推理が光る6つの短編を収めた1994年発表のシリーズ第一短編集です。容疑者をさっさと限定してすぐに謎解きに移行するテンポのいい本格派推理小説の作品が多くて読みやすいです。ただ真剣な推理と小手先系の真相のギャップを読者がどう感じるかは微妙かもしれません。特に「ロシア紅茶の謎」の余りにも意表ついたトリックにはあっけにとられました。「八角形の罠」は緻密な現場見取り図、大勢の容疑者、そして読者への挑戦状と手応えずっしりですけど真相が(個人的には)残念レベルなのが惜しいです。また本書を国名シリーズ第1作品集と宣伝していますが6作品中1作品だけしか国名を冠していないのでは誇大広告に思えます。


No.1348 5点 マクダフ医師のまちがった葬式
ケイト・キングズバリー
(2016/06/24 08:30登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表のペニーフット・ホテルシリーズ第3作は、棺を開けると見知らぬ男の死体があったというエラリー・クイーンの「ギリシャ棺の秘密」(1932年)を髣髴させる幕開けに、終盤にはヴァン・ダインの「カナリヤ殺人事件」(1927年)を連想させるような「容疑者たちとのカード・ゲーム」趣向まで用意されています。しかし本格派推理小説の謎解きとしては物足りなく感じました。17章のセシリーの説明は推理というよりも観察結果報告に過ぎないと思います。とはいえ猪突猛進するセシリーとブレーキ役になりきれないバクスターの凸凹捜査は相変わらずの楽しさがあります。


No.1347 5点 ホワイト・ティーは映画のあとで
ローラ・チャイルズ
(2016/06/24 08:26登録)
(ネタバレなしです) 2008年発表の「お茶と探偵」シリーズ第9作で、シリーズ作品の中でもサスペンスに富み事件解決場面もアクション豊富です。セオドシアのロマンス描写もこれまでになくたっぷりと描かれています。もっとも私はこのシリーズの優雅で繊細な雰囲気が好きなので今回のやや派手目な演出には少々違和感を感じましたが。


No.1346 7点 納骨堂の多すぎた死体
エリス・ピーターズ
(2016/06/23 10:03登録)
(ネタバレなしです) 修道士カドフェルシリーズが世界的ヒットしたのは納得できるのですがそれに比べてフェルス一家シリーズが(少なくとも日本では)あまりにも冷遇されているのは納得できません。1965年発表のシリーズ第4作である本書を読むとその思いはますます強くなります。miniさんのご講評にもあるように人間ドラマとしての面白さは修道士カドフェルシリーズと遜色ないし、本格派推理小説としての出来映えでは上回っています。十分に傑作ではありますが謎の面白さをもっと演出できただろうとか、家族ドラマと謎解きをもっと密接に絡ませられたのではとか色々贅沢な注文をつけたい気もします。それだけ魅力的なネタで一杯の作品です。


No.1345 5点 悪銭は身につかない
A・A・フェア
(2016/06/23 09:58登録)
(ネタバレなしです) 1961年発表のドナルド・ラム&バーサ・クールシリーズ第22作です。女性にはモテモテのドナルドですが特に本書ではそれが際立っていますね。二転三転のプロットがサスペンス豊かで、謎解きとしても十分に面白いですが動機の決め手となる手掛かりがぎりぎり最後近くになってご都合主義的に提供される解決だったのが少々残念でした。


No.1344 6点 オタバリの少年探偵たち
セシル・デイ=ルイス
(2016/06/23 09:53登録)
(ネタバレなしです) 英国の詩人セシル・デル=ルイス(1904-1972)はミステリーファンにはニコラス・ブレイクというミステリー用ペンネームの方で知られていますが、子供向けミステリーの本書はルイス名義で1948年に発表されています(岩波少年文庫版では小学校高学年向け扱いです)。ミステリー作家として本格派推理小説の良品を何作も書いているだけあって子供向けといっても安直に好都合な展開にしたり少年らしからぬ能力に頼ったりはしていません。少年たちが状況を冷静に分析推理しながら少しずつ事件解決に向かうプロットは重厚感さえ感じさせます。そのため前半の進行は地道でゆっくりですが、後半は冒険要素がたっぷりでどきどきさせる盛り上がりを見せます。


No.1343 5点 猫は幽霊と話す
リリアン・J・ブラウン
(2016/06/23 09:29登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表のシャム猫ココシリーズ第10作は事件がすぐに発生し、オカルト風な雰囲気も漂わせていてこのシリーズにしては緊張感あふれる出だしに結構どきどきしましたが中盤からは失速してしまいました。いくら殺人かどうかはっきりしていないとはいえクィラランがコブ夫人死亡事件の謎解きを中途半端に放り出して大昔(1904年)の調査をしている展開は物語の流れを寸断しています(もちろん最後には解決されていますけど)。この作者にしては結構伏線を用意して丁寧に謎解きしているだけに惜しいです。


No.1342 6点 闇を見つめて
ジル・チャーチル
(2016/06/23 09:04登録)
(ネタバレなしです) 2001年発表のグレイス&フェイヴァーシリーズ第3作である本書は前作の「夜の静寂に」(2000年)以上に時代描写にこだわっています。1932年に起こったボーナス行進と軍による武力鎮圧を描き、当時の社会不安を痛々しいまでに再現しています。1932年の米国といえばヴァン・ダインの「ケンネル殺人事件」やエラリー・クイーンの「Xの悲劇」や「Yの悲劇」が当時の現代ミステリーとして出版されていますが、本書で描かれている世界はまるで別世界の出来事のようです。これが日本人作家の作品なら社会派推理小説として評価されたかもしれません。そのためか作者の持ち味であるユーモアは希薄で謎解きさえもが脇役に回ったような印象があります。歴史小説家でもある作者の顔が垣間見える作品です。


No.1341 6点 ルイザと水晶占い師
アンナ・マクリーン
(2016/06/22 11:08登録)
(ネタバレなしです) 2006年発表のルイザ・メイ・オルコットシリーズ第3作で降霊会に密室殺人とカーター・ディクスンの「プレーグ・コートの殺人」(1934年)を連想させるような事件を用意した本格派推理小説です。とはいえオカルト要素や不可能性はそれほど強調されてはおらず、トリックに依存した謎解きでもありません。今回ルイザの家族では妹のリジーぐらいしか登場しないのですが「若草物語」的な雰囲気はこれまでの作品の中でも1番ではと思います。作者が本書を最後にシリーズを打ち切った(らしい)のはとても残念です。

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