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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2929件

プロフィール| 書評

No.1349 5点 ロシア紅茶の謎
有栖川有栖
(2016/06/24 08:45登録)
(ネタバレなしです) パーティーでロシア紅茶を飲んで死んだ被害者。だがどうやって毒を飲まされたのかがわからない「ロシア紅茶の謎」、夜中の動物園で殺された男が握っていた紙に動物の名前が羅列されていた「動物園の暗号」など火村英生の名推理が光る6つの短編を収めた1994年発表のシリーズ第一短編集です。容疑者をさっさと限定してすぐに謎解きに移行するテンポのいい本格派推理小説の作品が多くて読みやすいです。ただ真剣な推理と小手先系の真相のギャップを読者がどう感じるかは微妙かもしれません。特に「ロシア紅茶の謎」の余りにも意表ついたトリックにはあっけにとられました。「八角形の罠」は緻密な現場見取り図、大勢の容疑者、そして読者への挑戦状と手応えずっしりですけど真相が(個人的には)残念レベルなのが惜しいです。また本書を国名シリーズ第1作品集と宣伝していますが6作品中1作品だけしか国名を冠していないのでは誇大広告に思えます。


No.1348 5点 マクダフ医師のまちがった葬式
ケイト・キングズバリー
(2016/06/24 08:30登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表のペニーフット・ホテルシリーズ第3作は、棺を開けると見知らぬ男の死体があったというエラリー・クイーンの「ギリシャ棺の秘密」(1932年)を髣髴させる幕開けに、終盤にはヴァン・ダインの「カナリヤ殺人事件」(1927年)を連想させるような「容疑者たちとのカード・ゲーム」趣向まで用意されています。しかし本格派推理小説の謎解きとしては物足りなく感じました。17章のセシリーの説明は推理というよりも観察結果報告に過ぎないと思います。とはいえ猪突猛進するセシリーとブレーキ役になりきれないバクスターの凸凹捜査は相変わらずの楽しさがあります。


No.1347 5点 ホワイト・ティーは映画のあとで
ローラ・チャイルズ
(2016/06/24 08:26登録)
(ネタバレなしです) 2008年発表の「お茶と探偵」シリーズ第9作で、シリーズ作品の中でもサスペンスに富み事件解決場面もアクション豊富です。セオドシアのロマンス描写もこれまでになくたっぷりと描かれています。もっとも私はこのシリーズの優雅で繊細な雰囲気が好きなので今回のやや派手目な演出には少々違和感を感じましたが。


No.1346 7点 納骨堂の多すぎた死体
エリス・ピーターズ
(2016/06/23 10:03登録)
(ネタバレなしです) 修道士カドフェルシリーズが世界的ヒットしたのは納得できるのですがそれに比べてフェルス一家シリーズが(少なくとも日本では)あまりにも冷遇されているのは納得できません。1965年発表のシリーズ第4作である本書を読むとその思いはますます強くなります。miniさんのご講評にもあるように人間ドラマとしての面白さは修道士カドフェルシリーズと遜色ないし、本格派推理小説としての出来映えでは上回っています。十分に傑作ではありますが謎の面白さをもっと演出できただろうとか、家族ドラマと謎解きをもっと密接に絡ませられたのではとか色々贅沢な注文をつけたい気もします。それだけ魅力的なネタで一杯の作品です。


No.1345 5点 悪銭は身につかない
A・A・フェア
(2016/06/23 09:58登録)
(ネタバレなしです) 1961年発表のドナルド・ラム&バーサ・クールシリーズ第22作です。女性にはモテモテのドナルドですが特に本書ではそれが際立っていますね。二転三転のプロットがサスペンス豊かで、謎解きとしても十分に面白いですが動機の決め手となる手掛かりがぎりぎり最後近くになってご都合主義的に提供される解決だったのが少々残念でした。


No.1344 6点 オタバリの少年探偵たち
セシル・デイ=ルイス
(2016/06/23 09:53登録)
(ネタバレなしです) 英国の詩人セシル・デル=ルイス(1904-1972)はミステリーファンにはニコラス・ブレイクというミステリー用ペンネームの方で知られていますが、子供向けミステリーの本書はルイス名義で1948年に発表されています(岩波少年文庫版では小学校高学年向け扱いです)。ミステリー作家として本格派推理小説の良品を何作も書いているだけあって子供向けといっても安直に好都合な展開にしたり少年らしからぬ能力に頼ったりはしていません。少年たちが状況を冷静に分析推理しながら少しずつ事件解決に向かうプロットは重厚感さえ感じさせます。そのため前半の進行は地道でゆっくりですが、後半は冒険要素がたっぷりでどきどきさせる盛り上がりを見せます。


No.1343 5点 猫は幽霊と話す
リリアン・J・ブラウン
(2016/06/23 09:29登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表のシャム猫ココシリーズ第10作は事件がすぐに発生し、オカルト風な雰囲気も漂わせていてこのシリーズにしては緊張感あふれる出だしに結構どきどきしましたが中盤からは失速してしまいました。いくら殺人かどうかはっきりしていないとはいえクィラランがコブ夫人死亡事件の謎解きを中途半端に放り出して大昔(1904年)の調査をしている展開は物語の流れを寸断しています(もちろん最後には解決されていますけど)。この作者にしては結構伏線を用意して丁寧に謎解きしているだけに惜しいです。


No.1342 6点 闇を見つめて
ジル・チャーチル
(2016/06/23 09:04登録)
(ネタバレなしです) 2001年発表のグレイス&フェイヴァーシリーズ第3作である本書は前作の「夜の静寂に」(2000年)以上に時代描写にこだわっています。1932年に起こったボーナス行進と軍による武力鎮圧を描き、当時の社会不安を痛々しいまでに再現しています。1932年の米国といえばヴァン・ダインの「ケンネル殺人事件」やエラリー・クイーンの「Xの悲劇」や「Yの悲劇」が当時の現代ミステリーとして出版されていますが、本書で描かれている世界はまるで別世界の出来事のようです。これが日本人作家の作品なら社会派推理小説として評価されたかもしれません。そのためか作者の持ち味であるユーモアは希薄で謎解きさえもが脇役に回ったような印象があります。歴史小説家でもある作者の顔が垣間見える作品です。


No.1341 6点 ルイザと水晶占い師
アンナ・マクリーン
(2016/06/22 11:08登録)
(ネタバレなしです) 2006年発表のルイザ・メイ・オルコットシリーズ第3作で降霊会に密室殺人とカーター・ディクスンの「プレーグ・コートの殺人」(1934年)を連想させるような事件を用意した本格派推理小説です。とはいえオカルト要素や不可能性はそれほど強調されてはおらず、トリックに依存した謎解きでもありません。今回ルイザの家族では妹のリジーぐらいしか登場しないのですが「若草物語」的な雰囲気はこれまでの作品の中でも1番ではと思います。作者が本書を最後にシリーズを打ち切った(らしい)のはとても残念です。


No.1340 5点 グルメ探偵、特別料理を盗む
ピーター・キング
(2016/06/22 10:58登録)
(ネタバレなしです) ピーター・キング(1922年生まれ)は英国人ですが、ブラジル、フランス、イタリア、米国などを渡り歩いた国際人で現在はフロリダ在住だそうです。作品も脚本、ガイドブック、旅行記など幅広く、何が本業なのかよくわかりませんが1996年発表の本書がミステリーの第1作です(大変な遅咲きデビューですね)。名前を明らかにしない私立探偵を主人公にするという設定がダシール・ハメットのコンチネンタル・オプシリーズやビル・ブロンジーニの名無しの探偵シリーズを連想させますが、本書で描かれているのは過激な暴力でも銃撃戦でもなく麻薬や性犯罪のような汚い犯罪でもありません(殺人はありますが)。私立探偵と言っても料理関係の調査を専門にする「グルメ探偵」です。随所に散りばめられた美味しそうな料理や素材の描写はむしろ洗練さを感じさせます。謎解き伏線は読者が推理するには十分ではないように思いますが珍しい殺人トリックは印象的で、古今の名探偵を意識しながらもどこかピントがはずれている主人公の迷走探偵ぶりがなかなか面白かったです。


No.1339 6点 殺しにいたるメモ
ニコラス・ブレイク
(2016/06/22 09:57登録)
(ネタバレなしです) ニコラス・ブレイクは第二次世界大戦中は情報局に勤務しており、「雪だるまの殺人」(1941年)以降は作品を発表していませんでしたが戦後の1947年になって再び筆をとって発表したのがナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第8作となる本書で、さぞや当時のファンは復帰を喜んだことでしょう。もっともナイジェルの妻ジョージアが空襲で死んだという一文を読んでショックを受けた読者も少なくないと思いますが。中盤にちょっとしたアクションシーンがあったり終盤では容疑者同士のスリリングな告発があったりと部分部分では光っていますが全般的には盛り上がりに乏しいプロットです。また原書房版の紹介では不可能犯罪的要素をアピールしていますが、それが小さなカプセルが見つからないことというのは重要ではあっても謎のスケール感が小さく、宣伝として逆効果ではないでしょうか(隠しトリックは印象的ではありますけど)。


No.1338 5点 真夜中への挨拶
レジナルド・ヒル
(2016/06/22 09:35登録)
(ネタバレなしです) 2004年発表のダルジールシリーズ第19作で、巻末解説によれば「死者との対話」(2001年)、「死の笑話集」(2002年)と三部作を成す作品とのことです。確かに前の2作はプロットが互いに密接なつながりを持っています。というか結びつきが強すぎて「死者との対話」を読まずに「死の笑話集」を読むとわけがわからないのではないでしょうか。しかし本書は物語として独立しているように思います(むしろ「甦った女」(1992年)の後日談がありますのでそちらを未読の方は注意下さい)。背景がはっきりない前半は読みにくいですが事件関係者たちの自供によってある一族の暗い過去が少しずつ明らかになる展開はなかなか読ませます。もっとも推理という点では物足りないし、トリック解説があるのがこの作者としては大変珍しいですが全体の中ではそれも余り目立っていません。


No.1337 6点 闇と静謐
マックス・アフォード
(2016/06/22 09:09登録)
(ネタバレなしです) 1937年発表のジェフリー・ブラックバーンシリーズ第2作で「魔法人形」(1937年)と並ぶ代表作と評価される本格派推理小説です。これまでの作品でもエラリー・クイーンを彷彿させる作風でしたが本書ではその傾向がますます強く、犯人の正体が明らかになった時には私はクイーンの某国名シリーズ作品が頭に浮かびました。それどころか論創社版の大山誠一郎による巻末解説を読むとクイーンの実に4つもの作品との共通点が整理されており(ネタバレになっていますのでまだ未読の方は読まない方を勧めます)、これではまるでクイーンのパロディーです。とはいえ無駄のないプロット展開ですっきり読ませる点はクイーン作品を大きく上回っています。「右利きなのになぜ左手を使ったのか」などのちょっとした謎まで丁寧かつ合理的に謎解きしているのも好感度を上げてます。


No.1336 6点 紫雲の怪
ロバート・ファン・ヒューリック
(2016/06/21 09:00登録)
(ネタバレなしです) 1966年発表のディー判事シリーズ第11作です。「黄金盗難事件」、「謎めいた女の伝言」、「荒れ寺の首なし死体事件」の3つの事件を扱っていますが事件の相互関連にかなり気を配ったプロット構成となっており、読みやすさと複雑さを見事に両立させています。本格派推理小説としては型破りなところもありますが第19章の謎解き議論はなかなか読み応えがあります。全ての事件が解決した後にさらに印象的なエピソードが続くところは「螺鈿の四季」(1962年)を連想させます。


No.1335 6点 待ち伏せていた狼
E・S・ガードナー
(2016/06/21 08:57登録)
(ネタバレなしです) 1960年発表のペリー・メイスンシリーズ第61作です。メイスンのやっていることは証言の曖昧さを追求するばかりで証拠不十分での釈放はできても真犯人探しとしては全く進展してないのではと心配させたまま法廷シーンに突入しますが、多少偶然に頼ったところはあるもののちゃんと逆転するための伏線が用意されていました。非常にシンプルなプロットで全作品中でも屈指の読みやすさです。


No.1334 5点 ギリシャで殺人
エマ・レイサン
(2016/06/21 08:53登録)
(ネタバレなしです) 執筆当時の時事問題を作品に取り入れることのあるレイサンですが、1969年発表のジョン・サッチャーシリーズ第9作となる本書では1967年に起きたギリシャの軍事クーデターを背景に取り入れています。本書は冒険スリラーで、本格派推理小説の緻密なプロットに比べると解決に向かっての展開が好都合過ぎる感があります。悪役を追い詰めるための仕掛けが大掛かりでユーモラスなのがユニークです。パトリシア・モイーズの冒険スリラー(「ココナッツ殺人」(1977年)や「死の天使」(1980年)など)が好きな読者なら楽しめそうです。


No.1333 6点 探偵レオナルド・ダ・ヴィンチ
ダイアン・A・S・スタカート
(2016/06/21 08:42登録)
(ネタバレなしです) 米国のダイアン・A・S・スタカート(1957年生まれ)は1994年にロマンス小説家としてデビューしてそちらの方面でも成果を上げているようですが、2008年に本書を発表してミステリー分野にも進出しました。あの天才レオナルド・ダ・ヴィンチを探偵役にしたシリーズ作品です。前半は本格派推理小説のプロットがしっかりしていますが後半は政治陰謀の要素が入ってきて冒険スリラー路線に流れていきます。これはこれで非常によくできていますが探偵の推理に関しては物足りません。とはいえエリス・ピーターズの修道士カドフェルシリーズが好きな読者ならきっと気に入ると思います。


No.1332 6点 シャーロック・ホームズのジャーナル
ジューン・トムスン
(2016/06/21 08:39登録)
(ネタバレなしです) イギリスに滞在することにしたアメリカ人百万長者へ送られる脅迫状の謎を解き明かす「脅迫された百万長者」、狂気の徴候を見せるようになったワトソン博士の旧友の事件の「ウォーバトン大佐の狂気」など7つの作品を収めて1993に発表された第三短編集です。過去の短編集の作品ではホームズが饒舌すぎたりワトソンがやたらと冴えていたりと若干ながらもドイル原作に比べて違和感を覚えることもありましたが、本書はもっとも原作の雰囲気を再現しているのではと思います。個人的には一番本格派らしい「スミスーモーティマーの相続」が好みですが、作品の出来映えにもばらつきがなく入門編としても好適の1冊と思います。


No.1331 4点 事件現場は花ざかり
ローズマリー・ハリス
(2016/06/20 08:53登録)
(ネタバレなしです) 米国の女性作家ローズマリー・ハリスが2008年に発表したミステリーデビュー作ですが華やかで美しい花の描写を期待させるかのようなイソラ文庫版のタイトル(英語原題は「Pushing Up Daisies」)はミスマッチだと思います。園芸家ポーラ・ホリデーを主人公にしたこのシリーズは本国ではダーティー・ビジネス・シリーズと命名されているようにグロテスクとまでは言わないまでもコージー派ミステリーとしては地味で暗い作風です。赤ん坊の身元とピーコック家の過去を調べる前半の展開も謎解きとしてはやはり地味過ぎに感じました。


No.1330 5点 休日には向かないクラブ・ケーキ
リヴィア・J・ウォッシュバーン
(2016/06/20 08:38登録)
(ネタバレなしです) いとこの経営するB&B(朝食つき民宿)の留守をあずかることになったフィリスが桟橋へ出かけ、座っている宿泊客の肩をポンと叩いて挨拶するとその宿泊客が海に落ちてしまうという(本当にこんなことあったら凄いショックだろうな)2009年発表のフィリス・ニューサムシリーズ第4作です。ユーモアや料理描写が過去の作品に比べて控え目になりましたが語り口は相変わらずスムースで読みやすいです。謎解きまでがややレベルダウンしたのは残念で、動機だけで犯人を決めているようなところがあって推理の粗さを感じます。

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