闇と静謐 ジェフリー・ブラックバーンシリーズ |
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作家 | マックス・アフォード |
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出版日 | 2016年06月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | 人並由真 | |
(2017/02/10 19:46登録) (ネタバレなし) 開幕から結末まで小気味よくストーリーが進んで、退屈は全くしなかった。 その一方で肝要の謎解きミステリとしての興味(伏線・ロジック・トリック・ツイスト・サプライズ・ミスディレクション…などなど)もしっかり~あるいは良い意味で適度に盛り込まれ、おや、アフォードってこんなに面白かったのか! と見直した。 (いや、実は『百年祭』はまだ未読で『魔法人形』のみ読んで、その良く言えば丁寧で正直、悪く言えばあまりに曲のない伏線&手掛かりに際して、あんまり良い評価をしてなかったんだけれど。) 茶目っ気に富んだ名探偵ジェフリー・ブラックバーンのキャラクター(最終章の命がけの芝居ッ気には感涙~笑~)も、この物語全体がほぼ一週間の中で終わるという構成もとても良いわ。 とはいえ個人的には、解説の大山誠一郎が言うとおり、第四章の推理の方を真相にしてほしかったな。ケレン味から言えばそちらの方が、ミステリとしてのセンスを感じる。それでもある程度錯綜した作中の事実もろもろを、上質のパズラーとして構築した作者の手腕にはやっぱり感服。フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットの醍醐味も想定値以上に満たしてくれた。もちろんkanamoriさんのおっしゃるツッコミの余地もよくわかるのですが、個人的には本作は得点評価の方で支持したい。 最後に先述の、巻末の大山誠一郎の解説はなかなかの熱筆のようだが、個人的に大昔に読んだままの国名シリーズをいくつか、いつかそのうち読み返そうと思っているので、再読としてのネタバレ回避のために、しっかりは読みこめない(汗)。 さあ、この解説をきちんと読めるのは、いつの事になるのだろう(笑)。 ※追記:どうでもいいのですが、表紙の複数の眼がどれも『バーナード嬢曰く。』の施川ユウキ先生のキャラの目に見えます。 |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2016/06/28 18:24登録) BBC放送局の開局記念式典に招待されたジェフリーとリード首席警部は、ラジオドラマ「暗闇にご用心!」の生放送中に、照明を消したスタジオ内で新進女優が急死する事件に遭遇する。スタジオは鍵がかかっており、殺人だとすれば中にいた6人の俳優スタッフが容疑者となるのだが---------。 素人探偵ジェフリー・ブラックバーンが登場するシリーズの第3弾。 2部構成になっており、前半部の第1巻は死亡した女優メアリ・マーロウの過去と、彼女の死因を巡る考察で終始しており、ややテンポの悪さを感じるものの、犯行方法が判明することによって起きる構図の逆転(解説では”容疑者のダイナミックな転換”)という最後の引きで一気に盛り上がります。物語中盤でのこのような形の反転は、あまりお目にかかれない趣向だと思います。 後半に入り、”誤った推理”によって犯人像が二転三転するプロットになり、個人的には「ギリシャ棺の秘密」を想起したのですが、本書には国名シリーズのほとんどの作品と重なる要素がある、と指摘した大山誠一郎氏の解説を読んで”目から鱗”。クイーン作品との類似点を一つ一つ採り上げ、鮮やかに分析したこの解説は圧巻で読み応え十分です。邦訳第1作の「魔法人形」が出たときには、作者をディクスン・カーに例えていたのですが、もはや”豪州のエラリー・クイーン”と称する方がいいように思いますw 殺人方法やアリバイ工作にはツッコミどころがあり、クイーンの国名シリーズと比べてロジックの緻密さに物足りなさを感じますが、邦訳3作の中ではまずまずと言える出来栄えかなと思います。 |
No.1 | 6点 | nukkam | |
(2016/06/22 09:09登録) (ネタバレなしです) 1937年発表のジェフリー・ブラックバーンシリーズ第2作で「魔法人形」(1937年)と並ぶ代表作と評価される本格派推理小説です。これまでの作品でもエラリー・クイーンを彷彿させる作風でしたが本書ではその傾向がますます強く、犯人の正体が明らかになった時には私はクイーンの某国名シリーズ作品が頭に浮かびました。それどころか論創社版の大山誠一郎による巻末解説を読むとクイーンの実に4つもの作品との共通点が整理されており(ネタバレになっていますのでまだ未読の方は読まない方を勧めます)、これではまるでクイーンのパロディーです。とはいえ無駄のないプロット展開ですっきり読ませる点はクイーン作品を大きく上回っています。「右利きなのになぜ左手を使ったのか」などのちょっとした謎まで丁寧かつ合理的に謎解きしているのも好感度を上げてます。 |