猫間地獄のわらべ歌 |
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作家 | 幡大介 |
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出版日 | 2012年07月 |
平均点 | 6.17点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | ミステリ初心者 | |
(2020/12/10 20:45登録) ネタバレをしています。 全体的にギャグ調で明るく、難しい漢字なども使っていなく、物語を理解するのに必要な用語はそのつど説明が入るため、とても読みやすいです。読み終わるまで、一瞬のような感じでした(笑)。 推理小説的には大きく3つの事件があります。密室(をでっちあげる(笑))事件、見立て事件、不可能犯罪。どれもダイナミックで、馬鹿ミスと呼べなくもないですが、本の雰囲気と歴史小説の雰囲気を味わえるものでした。 密室については、初めに問題が提示され、最後に解かれるものでした。足跡問題と密室の鍵の問題を一気に解決する離れ業(?)であり、方法もその時代にしかできなさそうな物で面白かったです。 見立て事件については、それそのものよりも、主人公=犯人系でした。講談だからいいもんというやり取りは面白かったですが、まあむりに推理小説としてフェアさを求めずに見たほうが楽しめそうです。 屋形船内で殺される不可能犯罪は、いろいろ考えましたが、全くわかりませんでした(笑)。私も静馬と同じ田舎者なので、見当もつきませんでした。鐘の音の偽装や、館の偽装など考えましたが、どれもいまいちで(笑)。 全体的に真相を外してきた私ですが、内侍之佑が女性であることだけわかりました(笑)。これは完全に個人的な理由ですが(またかよッ!) 個人的な不満はないのですが、推理小説としてのフェアさや厳格さ、小説としてのまじめな雰囲気を求める人には向かないと思います。メタ展開が嫌いな人もダメですね。 ※追記 どんなに古典でも、ネタが割れるようなことは書かないでほしい! この本でネタバレされている作品って、推理小説内で最もネタバレされている作品だと思います(笑)。ネタバレを回避してこの作品を読むことに成功する人っているんでしょうか(笑)。 |
No.5 | 6点 | パンやん | |
(2017/01/04 11:02登録) 時代小説+ギャグ+ミステリーという試みで、実に読み易く、ミステリ論なんぞも飛び出してなかなか笑わせて楽しませてくれるが、ミステリーとしての驚きはというとねぇ~。わらべ歌問題編と解決編が突出して面白く、締めがちと弱いが、ラストのサプライズはうまし! |
No.4 | 7点 | まさむね | |
(2016/08/06 20:11登録) 時代小説と本格ミステリが絶妙に融合した怪作。 しかし、詰め込みますねぇ。密室、首なし殺人に見立て殺人、アリバイ崩し、館モノならぬ屋形船モノ…などなど、あまり多く書くのもアレなので控えますが、何よりも作者が楽しみながら書いたのだろうなぁ…という印象。 時代劇的シーンからの突然のメタ化ですとか、脱力系「読者への挑戦状」等、結構笑える要素も多く、個人的にはかなり好きなタイプの作品。 |
No.3 | 6点 | メルカトル | |
(2016/03/08 21:54登録) 本格時代小説と本格ミステリがうまく融合された、なかなかの逸品。メタな趣向を盛り込むことにより、読者に「そんな馬鹿な」と言わせないように苦心している。一風変わった「読者への挑戦状」を挟むなど、サービス精神も旺盛で、読者を飽きさせないよう工夫しているのが涙ぐましい。 kanamoriさんもご指摘のように、長編の中に独立した事件が三件含まれており、どれもバカミス的でありながらもよく考え抜かれたトリックを採用している。 密室、見立て、首なし死体、屋形船(館)の殺人など、興味を惹く要素がまさにてんこ盛り状態な本作である。 |
No.2 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2016/01/05 06:48登録) 裏表紙より~『江戸の下屋敷におわす藩主の愛妾和泉ノ方。閉ざされた書物蔵で御広敷番が絶命した。不祥事をおそれ和泉ノ方は“密室破り”を我らに命じる。一方、利権を握る銀山奉行の横暴に手を焼く国許では、ぶきみなわらべ歌どおりに殺しが続くと囁かれ!?大胆不敵なミステリ時代小説。』~ 冒頭から「今、密室と仰せになられましたか?」「密室という言葉は、この時代になかったのではないかと推察いたしまするが。」「そういうことにうるさい読者が結構いるんですけど・・・」とメタ指向で進行します。時代劇ファンにとっては「ミステリー小説」、ミステリーファンにとっては「時代劇小説」となってしまう?という怪作か。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2012/12/19 12:03登録) 江戸時代の考証的情報を交えたキッチリとした時代小説という側面と、突如メタ・レベルになりミステリのお約束をネタに笑いを取るバカミスの要素とが入り混じった本格ミステリの怪作です。 密室破りに始まり、首なし死体と見立て連続殺人、読者への挑戦状、館(屋形?)もの、アリバイ崩し、”意外な犯人パターン”など、本格ミステリの趣向がてんこもりで楽しめる。(トリックを活かすために3つの中短編を強引につなげ長編にした感もありますが)。 また、ラストに炸裂する○○トリックについては、冒頭に主人公の御使番に関する情報が明確な伏線になっており巧妙だと感心。直前に「丸太町ルヴォワール」を読んでなければもっと驚けたかもしれません。 いちばんツボだったのが、”読者への挑戦”が、謎解きの挑戦ではなく、”壁本にせずに最後まで読むことができるか”という挑戦だったことですね(笑)。 |