ブラックスワン |
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作家 | 山田正紀 |
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出版日 | 1989年02月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | 虫暮部 | |
(2023/08/03 13:03登録) トリックはさして重要ではない。問題はキャラクター。 “最後の手記” で語られる亜矢子:嫉妬して裏工作を企てる。プライドは高いが、自分に厳しくはない。見栄っ張り。 勿論これは彼女の裏の部分であるから物語前半で伏せられているのは当然なのだが、では最後に開示されて納得出来たかと言うと難しい。亜矢子ってこんなキャラクター? その状況でそんな行動するかなぁ? 特に中学生時代とのギャップがあまりに激しい。“いたずら” のトリックだけでは説明し切れない。 亜矢子が行方不明になった経緯に直接関わる事柄である。現実にはそういう個人の多面性とか普通だろうけど、フィクションとしては説得力のある伏線がもっと欲しいと私は思った。 |
No.5 | 5点 | nukkam | |
(2016/03/27 15:08登録) (ネタバレなしです) 山田正紀のミステリーはどこかもやもやした幻想性のようなものを感じさせる作品が多いのですが、1988年発表の本書もそういう印象を受けます。閑静な住宅街の中にあるテニス・クラブで女性が火だるまになって死ぬという衝撃的な事件で幕を開けますが焼死事件の方は意外と扱いが小さく、18年前に起きた失踪やブラックスワン(本物の鳥です)の死の謎の方に多くのページを割いているプロットです。事件関係者たちの手記が謎解きにからむのはアガサ・クリスティーの「五匹の子豚」(1943年)を連想させます。もっとも明確な探偵役がいないところはクリスティーと異なっており、丁寧に説明していながらもどこか動機にしっくりこないような感じが残りました。なおハルキ文庫版の巻末解説は小説より先に読まない方が吉だと思います。 |
No.4 | 7点 | E-BANKER | |
(2015/03/28 17:39登録) 1992年発表の長編ミステリー。 SFがホームテリトリーである作者が書いた本格ミステリー。 ~世田谷の閑静な住宅街にあるテニス・クラブで、白昼、女性の焼死事件が発生した。ところが、捜査を進めていくうちに焼死した橋淵亜矢子は十八年前に行方不明になっていたことが判明。当時女子大生だった彼女にいったい何が起こったのか? 焼死事件とのつながりは何なのか? 雪の瓢湖に舞う「ブラックスワン」をキーに、青春時代の謎を追う本格ミステリーの傑作~ 「さすがに旨い!」・・・そんな読後感。 ハルキ文庫版の巻末解説は折原一氏なのだが、氏曰く「本作はバリンジャーの『歯と爪』を完全に意識した作品」とのこと。 言われてみればそのとおりかな・・・ ということはつまり、折原一の作風にも似ているわけで、個人的に何となく感じていた既視感にも納得がいった。 いわゆる叙述トリックの衝撃度という意味では「そこそこ」というレベルなのだが、本作の良さはそんなところにはない。 “雪の瓢湖(白鳥の飛来地で有名)”という荘厳な舞台装置、いかにも謎めいた複数の手記・・・ これはもうプロットの勝利というほかない。 (元新聞記者の男が過去の事件を追うというスタイルも折原の「・・・者」シリーズっぽい) これは先日「人喰いの時代」を読んだときにも感じたことだが、とにかく読者の「気を惹く」技に長けているのだ。 つぎにどのような展開が待っているのか・・・ こう思わすことのできる作者、作品はやはり魅力的だというしかない。 そして何より「嫌らしさのない」「上質感」のある文章、筆致。 これも一流の証だろうと思う次第。 ちょっと褒めすぎのようにも思うが、一読の価値はある。 (西村京太郎を思わせる冒頭のアリバイトリックっぽいシーンって、結局何だったのか・・・) |
No.3 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2012/07/26 21:01登録) 18年前に行方不明になった女性の焼死事件が発生。自殺、他殺?の謎から始まる。そして、18年前「白鳥の湖」をいっしょに観ることになった学生仲間(男4女3)の手記から、なぜ女性が行方不明になったかが徐々に明らかに・・・。ブラックスワンの死が、青春の崩壊を暗示させているあたりはうまいと思います。そして折原一氏ばりのラスト。(あとがき・・・折原氏との時刻表トリックの話がミステリーを書くきっかけになったらしい。) |
No.2 | 8点 | テレキャス | |
(2009/07/16 20:09登録) 冒頭からアリバイ工作が描かれていますが、決してアリバイものではなく、 この作品の中心の謎は、「姿を消した女性に何が起こったのか?」です。 ミステリとしても青春群像としても秀逸な作品。 あっと驚く仕掛けも施されており、真相に至った時のカタルシスはかなりのもの。 SFやアクション、ホラーのイメージが強い山田正紀の別の一面が感じられた良作。 |
No.1 | 7点 | tetrapot | |
(2002/01/07 08:43登録) あとがき,解説は読まない方がよい。自分がスレてなければもっと評価は高かったかな。分量も多くなくちょうどよい。 |