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ミステリの祭典

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再会

作家 横関大
出版日2010年08月
平均点6.50点
書評数6人

No.6 6点 パメル
(2024/07/17 19:20登録)
スーパーの店長・佐久間秀之が何者かに銃で撃たれ死体で発見された。警察の捜査の結果、使われた拳銃は、23年前の事件で殉職した刑事のものであることが判明する。実はこの拳銃は、23年前に小学校の同級生4人で校庭にタイムカプセルとして埋めたものだった。一体誰が拳銃を取り出し秀之を殺したのか。
本書はこのように殺人という悲劇によって、長い歳月を経て同級生が意外な再会をする。懐かしい思い出と、失われてしまった絆、それぞれが抱える苦悩が見事に描かれたノスタルジックな雰囲気が漂う物語である。
殺人事件そのものは地味だし、容疑者もある程度限られるため面白く書くのが難しいはずだが、作者は丁寧に被害者や同級生のそれぞれの人物像をさまざまな視点から描いていて、動機などにも無理がない。
また最後にもう一つ捻りをきかせて別の過去の犯罪の意外な真相に迫るなど読ませる工夫がされている。残念な点は、容疑者の行方が判明するプロセスや南良刑事の係累などの設定にご都合主義に思えてしまったところ。

No.5 7点 ドクターマッコい
(2013/06/28 07:52登録)
20数年前に犯行に使われたピストルをタイムカプセルに入れたのにそれが掘り出されていると言う展開をワクワクしながら一気読みしました。
丁寧な展開が非常に交換を持て十分楽しませていただけました。

No.4 6点 E-BANKER
(2012/08/24 19:40登録)
第56回の江戸川乱歩賞受賞作。
この秋、豪華俳優陣でTVドラマ化も決定した話題作。

~小学校卒業の直前、悲しい記憶とともに拳銃をタイムカプセルに封じ込めた幼馴染み4人組。23年後、各々の道を歩んでいた彼らはある殺人事件をきっかけに再会する。分かっていることは一つだけ。4人組のなかに、拳銃を掘り出した人間がいる・・・ということ。繋がった過去と現在の事件の真相とは?~

処女作品としては「見どころあり」というのが素直な感想。
受賞前から何度も最終候補作に挙がっていただけあって、新人らしからぬ練られたプロットが味わえる。
特に、現在の事件の真相を追うことで、過去の封印された事件の謎が徐々に解き明かされるという展開がうまい。
「タイムカプセル」に封じられた一丁の拳銃が全ての謎の「鍵」となり、その欺瞞が解き明かされたとき、サプライズ感たっぷり(!)の真犯人が判明するのだ。
終盤~ラストに向けての盛り上げ方も読者のツボを心得ていると感じた。
主人公4人がそれぞれ「運命」を背負いながらも強く生きていくという「姿勢」も好ましい。

処女作ということを承知のうえ敢えて苦言を呈するなら、強烈な「ご都合主義」という点だろうか。
文庫版解説でも触れられているが、あまりにも偶然の出会いが多用されていて、ここまで偶然が続く確率って何万分の1だろうか、という気にはさせられる。
あとは真犯人。
どうみてもドンデン返しのサプライズを狙い過ぎ。
真犯人の「立場」がトリックを支えているのだが、これは素人目にみてもリアリティが薄い。
(警察の○○管理ってこんなにズサンなのか?)

ということで、新人らしい粗っぽさは当然あるのだが、全体的にはよくできた佳作ということでよいのではないか。
(ちょっと甘いかな?)

No.3 6点 蟷螂の斧
(2012/05/28 15:34登録)
幼馴染の四人の誰かが犯人なのですが、誰もが犯人であってほしくないような気持ちにさせる描き方はうまいと思います。誰がタイムカプセルを開けたかという謎、殺人犯は誰、そして23年前の隠された事件の謎がうまく絡み合っており楽しめました。

No.2 7点 まさむね
(2011/07/25 21:46登録)
 前年の江戸川乱歩賞受賞作。
 端的な文章でグイグイ引き込まれました。プロットも,決して目新しい点はないのですが,丁寧に練られています。登場人物間の視点転換も気にならない,というかむしろ効果的に働いている印象。老練な作家が書いたとすら思わせる巧さが垣間見えます。
 ご都合主義的な側面や,過去の事件において真犯人がとった行動には理にかなっていない面があるのではないか…という疑問もありましたが,まぁいいか,と思わせるストーリー運び。
 このレベルの作品を今後コンスタントに発表されることを期待します。(買うと思います。)
 ちなみに,前年度の受賞作「プリズン・トリック」とは,確かに様々な点で正反対の位置にある作品です。結構幅広いぞ,乱歩賞。

No.1 7点
(2011/04/22 19:28登録)
<第56回江戸川乱歩賞受賞作>
23年前、小学生の仲間四人で校庭に埋めたタイムカプセル。幼なじみの四人は、封印すべき秘密を共有していたはずだった。しかし、そのうちの誰かが...

息をつくひまもないほどスピード感のあるサスペンス展開。視点は四人。交錯しすぎる感もあるが、映画を観ているようで意外にわかりやすい。
犯人当て要素も、驚愕の真相もあるのだが、基本的には緊迫感が継続するストーリー展開がもっとも楽しめる点だ。
飛躍しすぎの論理と、ご都合主義と、アンフェア感とで、本格ミステリとは言えないような内容となっているし、過去の事件について、終盤に真相を匂わせる記述があったがあまりにも唐突だったことなど、気になる点もあった。でも、それらを十分に補うものがあり、すべてを許容できた。それほど楽しませてくれるストーリーだった。
キャラクタは、四人については分散しすぎだが概ねよく描かれている。探偵役の刑事・南良の存在も最後まで光っていた。よって人物描写についても申し分なしだった。

作者は乱歩賞に長年応募し続けたそうだ。受賞を狙うだけあって、ずいぶん推敲を重ねたのではと思うぐらい文章、プロットともに完成しているように思う。読者を楽しませるテクニックを持ち合わせているようにも思う。荒削りな「プリズン・トリック」(第55回受賞作)とは正反対だった。選者の評を読むと、瑕疵や欠点を指摘しながらも(今野敏以外は)概ね絶賛だった。ただ、今回はみな出来がよかったようだ。

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