home

ミステリの祭典

login
折れた竜骨

作家 米澤穂信
出版日2010年11月
平均点7.58点
書評数26人

No.6 8点 HORNET
(2012/10/09 21:55登録)
 読み慣れない設定と人物名に最初は戸惑ったが、中世ヨーロッパを舞台とし、魔術や伝説を「アリ」としてうえでのロジカルミステリという(少なくとも私は)今まで接したことのない世界に、非常に引き込まれて読んだ。青銅の巨人を意のままに操る魔術師が出てきたり、何度切り刻まれても生き返る人種が存在したりと、科学的にありえないのだが、作中ではそれが全て「アリ」とされ、その上で「走狗(ミニオン)」と呼ばれる事件の犯人をロジカルに追う。私自身それほど詳しくないのでかなりいいかげんな想像だが、甲冑や剣をまとった中世の剣士を頭に思い描きながら、楽しく読めた。登場人物それぞれに同情や反感を感じながらも、どれも憎めないキャラクターで、読後感もよかった。
 「春期限定…」などのライトミステリ、「インシテミル」などの本格物も手がける著者の、懐の深さというか幅の広さに本当に感心してしまう。

No.5 9点 ナナ
(2012/02/16 14:40登録)
はじめのうちは登場人物の名前がわかり辛く、大変だと思ったのですが、段々と物語に引き込まれて行きました。中世ヨーロッパを舞台に選んだことも正解だったと思います。ラストの謎解きと、その後の師弟の絆は説得力十分です。とても面白くおすすめの一冊です。

No.4 7点 touko
(2012/01/12 23:16登録)
剣と魔法の中世ファンタジー世界が舞台ではあるけれど、王道本格ミステリ。

最初に魔法の法則や限界が明示されているので、わかりやすいです。
語り口もラノベ的な何でもありのキャラクターファンタジーというよりは、歴史ものをベースにファンタジーで味付けしたオーソドックスな児童文学風なので、固定ファン以外でも読みやすそう。

No.3 9点 smile66
(2011/06/16 21:35登録)
ミステリーとファンタジーの融合作品。
ソロンの領主を殺した犯人を探るストーリーですが、他にも激しい戦闘の場面などもあり、普通に小説として面白いと思いました。

この世界では魔法が存在するため、ミステリー的にどうなのかと思いましたが、きっちりとしたルール付けがなされることにより、その部分をクリアしており、推理の過程はまんま本格ミステリーです。

私はファンタジー物はほとんど読んだことはありませんが、ミステリーとしてもファンタジーとしても高い完成度であると思います。

No.2 9点 虫暮部
(2011/02/03 10:29登録)
「無自覚な×××=犯人」というのは岡嶋二人にもあったが(あと『喰いタン』にもあったような……)、それとは別のルートでこの大技をアリにしていて面白い。
 身分制度の(やや)上位者を一人称の語り手にして、しかも特権意識やいわゆる上から目線を嫌味に感じさせず描写しているところは、北村薫の「ベッキーさんシリーズ」を思わせた。
 しかしなにより、ライト系作品では隠れがちな米澤穂信の名文家としての資質が全開になっているところが良かった。

No.1 7点 kanamori
(2010/12/30 22:55登録)
中世イングランドの北海に浮かぶ島を舞台にした、歴史冒険ファンタジー風の本格ミステリ。
いままでの日常の謎タイプとは対極に位置するような、騎士と魔術師が跋扈する、”非日常の謎”を扱った意欲作なので、評価が分かれそうです。物語の視点人物が殺された領主の娘で、ラノベ風の語り口は異国の歴史ものにしては読みやすいと思います。
魔術という特殊設定はあるものの、終盤、関係者が集まった場面の消去法による真犯人の絞り込みは、フーダニット・パズラーの王道を行っています。

26中の書評を表示しています 21 - 26