天国への階段 |
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作家 | 白川道 |
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出版日 | 2001年02月 |
平均点 | 8.00点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 7点 | take5 | |
(2023/05/07 12:35登録) 私の前の5人の方が、 高評価でしたので読みました。 書評通りミステリーとしての 要素はかなり薄いです。 主人公をめぐる人間模様を描いた、 三代に渡る物語。 復讐、権力、愛憎、親子など、 盛りだくさんで描かれています。 最後、桑田が柏木に何を語るか、 いよいよクライマックスか!と思って 読みました。 400字原稿用紙×2000枚以上! 読みやすいですが、 目が疲れました。 GWだから長編に挑戦、、、 |
No.5 | 8点 | 猫サーカス | |
(2022/11/28 18:44登録) 美しい牧場、恋人、家族、何もかも失った主人公が、暗い闇の中でつかんだ金銭を武器に復讐するといったストーリー。普通こうした復讐のミステリは、その動機や復讐の手段は、どちらかが隠されているものだが、この作品は最初から両方分かってしまう。この作品の牽引力は別のところにある。主人公が埋没しそうなほど、重要な登場人物がみるみる増えていくのも異様。ページをめくるにしたがって、この数多い人物たちが実はそれぞれ自分たち個々の復讐のために生きていることが分かる。Aの知っていることはBは知らない、Bの知っていることはCは知らない、その代わりCはAの知らないことを知っている。ここから生まれるサスペンスがストーリーの牽引力となっている。登場人物が皆、バージョンアップして人生の高いところに昇っていく。この感覚がこのミステリをとても気持ちの良いものにしている。 |
No.4 | 8点 | Tetchy | |
(2021/06/05 00:11登録) 上中下巻全1,411ページ。過去を追いかけ、そして過去に追いかけられる男の物語。白川版『砂の器』とも云うべき大作だ。 これだけのページが割かれるのはそれぞれの登場人物が語るからだ。そう、白川作品の登場人物は語る、饒舌なまでに語る。 時に他者と自分の人生とを重ね合わせてその為人を語る。 または溜めていた思いを一気に吐き出すように語る。 自分の勘と感受性を信じて感じたことを知らせたいと思いに駆られて語る。 刑事は能弁なほどに捜査の過程で自分の直感によって感じた関係者の人物像と心の移り変わり様を説教師のように語る。 命を捧げるとまで部下は社長に心酔し、社長はその思いに応えるためにお互いの小指を傷つけて血の指切りを交わし、来世でも共に歩むことを誓う。 それらは我々の日常生活では少し気恥ずかしさを覚えるほどロマンティックであり、そしてセンチメンタルだ。 それでもこれだけの長さを誇りながらも全く無駄を感じさせない物語の密度の濃さ。復讐物語であり、かつての恋が再燃する恋愛物語でもあり、そして緻密な捜査に尽力する警察物語でもある。私は本書を読む最中、至福の時を味わった。 また自身が人生の苦汁を舐めてきただけに白川道氏の小説には復讐譚が多い。 しかしそれらは情念とか怨念といったどす黒い感情をむき出しにした獣のようなそれではなく、やられたからやり返す、いわば筋を通すといった類の芯の通ったそれだ。仁義を通すとでも云おうか。 それは恐らく作者自身の人生経験に裏打ちされた一種の美学から来ているのかもしれない。 しかしその美学はあまりに身勝手だ。それが顕著に本書の主人公柏木圭一に現れている。 色んな人を、特に女性をないがしろにして今の地位を築いた柏木圭一像が浮かび上がってくるうちに彼に同情できない自分がいた。それが私には残念でならなかった。 これが白川流ロマンチシズムとでもいうのだろうか。確かに濃密な読書体験だった。しかしこの自己陶酔振りにやりきれなさが残ってしまった。 自らの信ずる道を進んだ時、そのエゴのために色んなことや人が犠牲になる。本書はかつての自分を柏木圭一に重ねた作者の悔恨の書なのかもしれない。そして柏木圭一の死は作者にとっての過去への懺悔だったのだろうか。 |
No.3 | 8点 | makomako | |
(2013/04/28 07:56登録) 感動した。久しぶりです。 生涯を誓った女性に裏切られ、財産も親も失った男が復讐しようとするお話がメインですが、それとともに生涯変わらない男と女の愚直なまでの生き方がすばらしく、殺伐たる話となるところを全く違った感動へ導いてくれる。 ことにヒロインの亜木子が素敵だ。近年このように心に残るヒロインに出会ったことはなかったなあ。 幼なじみの圭一と亜木子が何十年ぶりかに再開して「けいちゃん」「あきちゃん」と呼び合うシーンはほんとうに感動しました。 この小説は社会派ミステリーでもあるが素晴らしいラブストーリーでもあるのです。 長いお話ですが一気に読ませる力があります。 残念なのは後半の展開がかなりベタベタのお涙頂戴風にになってしまったこと。 以下ちょっとネタバレ エピローグはどうかなあ。ないほうがよいような気もするが。これでは主人公のために命を落とした部下が浮かばれないし、娘の深く傷つくのではないだろうか。親の勝手だよねこれって。読んだあとちょっとやりきれない。 |
No.2 | 8点 | ドクターマッコい | |
(2013/03/04 13:28登録) 純粋なミステリーではないものの、本当に楽しめた 作品です。 読了後も心に残りました。 |
No.1 | 9点 | E-BANKER | |
(2009/10/17 16:42登録) 素晴らしい作品の一言。文庫版3分冊で1,400ページ超という長さですが、次の展開が気になって相当なスピードで読了してしまいました。 物語の背景や展開としては、割とベタな作品ではないかと思うのですが、登場人物1人1人に対してここまで丁寧に書かれると、ものの見事に感情移入させられます。 主人公である柏木は復讐を果たすために政財界で成り上がっていくのですが、その柏木もまた復讐の対象になっていく・・・ 誰もが壊された愛(親子愛も含めてですが)のために復讐を果たそうとする展開がなんとも哀しみをそそります。 ミステリーとしての要素は薄いですが、無味乾燥なミステリーに飽きたら是非再読したい作品。 |