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ミステリの祭典

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エデンの命題

作家 島田荘司
出版日2005年11月
平均点5.29点
書評数7人

No.7 3点 TON2
(2012/12/01 14:39登録)
KAPPANOVELS
 アスペルガー症候群を扱った「エデノの命題」と、脳機能の謎を扱った「ヘルター・スケルター」のノンジャンル2作です。
 アスペにしても脳機能にしても一般の人にはなじみのない内容で、作者は確かによく勉強しているなとは思いましたが、そうした新知識によるミステリーというのは、読者が考える余地というものが少なく、優れているとはいえないと思います。
 ただ、「エデンの命題」中の旧約聖書への数々の疑問(イヴをたぶらかした蛇は何故リンゴが知恵の実だと知っていたのか。蛇自身が食べたことがあるのか。・・・)は、面白いと思いました。

No.6 5点 yoneppi
(2012/04/26 00:16登録)
島田氏は短編もなかなかいいと思っているが、この2編はどちらもまあまあという出来かな。

No.5 5点 E-BANKER
(2011/11/11 16:48登録)
中編2作によるノン・シリーズの作品集。
最近の島田作品によく登場するテーマが本作でも色濃く取り上げられてます。

①「エデンの命題」=「エデン」とは、当然「旧約聖書」に登場する、アダムとイブが暮らしていた楽園のこと。
~アスペルガー症候群の子供たちを集めた学園から、少女が消えた。残されたザッカリ・カハネのもとに届いた文書に記されていたのは、世界支配に取り衝かれた民族の歪んだ野望と、学園の恐怖の実態だった。生きるため、学園を脱出したザッカリを待ち受ける驚愕の真実とは?~

う~ん。プロット的には「よくあるやつ」だと思いますねぇ。
主人公宛に残された少女の「手記」が、本作のカギを握っていて、「ユダヤ・コネクション」の暗躍やら野望なんて話は、昔から広瀬隆あたりの本で目にしていた分、「ありうる話」として受け取れた。
ただ、風呂敷を広げすぎた分、カラクリが判明した後の真相は、ちょっと拍子抜けしてしまったが・・・

②「ヘルター・スケルター」=直訳すれば、「すべり台」という意味ですが、かのビートルズの楽曲名としても有名。
記憶を失っているらしい1人の患者が、美人女医からの「誘導尋問」により、自身の驚愕の過去を思い出していく・・・という趣向。
これも、「眩暈」やら「ネジ式ザゼツキー」等で試みられたプロットの焼き直し感はある。
(スケールは小さいが・・・)
ただ、本作はオチがちょっと唐突だし、流れを腹入れする前にネタバラシされてしまった感覚。
(でも、本当にこの年代に脳科学はここまで進歩していたのだろうか?)

①②とも、「クローン技術」やら「脳科学」といった、作者の「研究(?)」分野がテーマになっていて、表紙には堂々と「本格ミステリー」と銘打っているものの、私の志向する「本格ミステリー」とは大きく異なっている作品なのは間違いない。
前回の島田作品の書評(『溺れる人魚』)でも書いたが、やっぱり、ファンとしては御手洗や吉敷が活躍する骨太の「本格ミステリー」が読みたいんですよ! 荒唐無稽でもいいから、「アッと驚く大掛かりなトリック」で・・・
(もうムリかな?)

No.4 6点
(2011/09/15 21:29登録)
表題作の「エデンの命題」はストーリーの先が読めてしまいましたが、もう一つの中編「へルター・スケルター」は、米国で起きた実際の事件を知らなくても楽しめました。

No.3 6点 touko
(2010/02/15 22:12登録)
島田荘司の作品中の薀蓄というのは、あくまでミステリを盛り上げるために利用しているだけなので、一部分だけをことさらに拡大解釈したり、曲解していたりすることが多いんですが、何でもミステリのためのアイディアにしてしまう姿勢は好きです。
一時期、島田が凝っていた冤罪事件についてのように、バイアスが思想的な偏向からくるものではなく、ミステリのトリックやエンタメに利用できるかによるものなので、この本もトンデモ本チックなところがあっても、楽しく読めました。

No.2 5点 Tetchy
(2009/05/09 19:47登録)
表題作と「ヘルター・スケルター」2編が収められたノンシリーズの中編集。
自ら掲げた「21世紀本格宣言」をさらに実践すべく、本作にも最新科学の知識がふんだんに放り込まれている。
今回扱われたテーマは遺伝子工学、それも特にクローン技術、そしておなじみ大脳生理学。

(以下ちょっとネタバレ気味)


正直云えば表題作は過去の本人の作品のヴァリエーションの1つに過ぎないと云えるだろう。
それは私にとって不朽の名作である『異邦の騎士』だ。それをクローンたちが住まう臓器農場、旧約聖書の内容というガジェットでデコレーションした焼き直し作品という風に取れる。
更に後半はユダヤ教の旧約聖書がテーマとして浮上し、その「エデンの園」を手に入れるべく、主人公ザッカリの反撃が始まるという構成になっている。しかしこのユダヤ教というモチーフも『魔神の遊戯』でさんざん使われていた。
知識の敷衍に力点が置かれ、物語が薄っぺらいものとなっている。

「へルター・スケルター」の骨子は歴史ミステリとなろう。最後に行き着くのはアメリカで最も有名な猟奇事件の1つ、チャールズ・マンソン事件の島田的解明だ。

しかしこの「21世紀本格」というのはあまりに専門的に走りすぎて読者の推理の介在を許さないな。
島田は一体どこへ向かおうとしているのだろうか?

No.1 7点
(2009/04/08 18:36登録)
「エデンの命題」と「へルター・スケルター」の中編2編が所収されています。いずれも、読んでいて海外ミステリかと錯覚しますよ。
島田荘司という作家は、いろんなネタをテーマにして書ける人なんですね。感服します。
前者は、アスペルガー症候群患者施設に暮らす青年が主人公の、聖書が絡んだ話です。もちろんトリックはありますが、後半はサスペンスであり、二重に楽しめました。
後者は、脳科学が絡んでいて、ちょっとした理系ミステリになっています。また、あの驚愕のシャロンテート事件が背景にあります。
両者甲乙付けがたく、いずれも十分に読みごたえがありました。

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