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ミステリの祭典

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気分は名探偵 犯人当てアンソロジー
我孫子武丸・有栖川有栖・法月綸太郎ほか

作家 アンソロジー(出版社編)
出版日2006年05月
平均点7.00点
書評数7人

No.7 8点 ミステリーオタク
(2025/07/19 19:34登録)
 2005年に新本格ミステリの重鎮たちによって夕刊フジに連載された犯人当て懸賞ミステリをまとめたアンソロジー。

 《ガラスの檻の殺人》 有栖川有栖   
 この時代ってストーカー規制法はまだなかったっけ?と思わせる出だしから主人公たちが思いがけない形で閉鎖空間的な状況での殺人事件に関わることになる。
 この状況で誰がどこに凶器を隠したのか、がメインの謎になるが個人的にはあまりカタルシスが得られる解答ではなかった。

 応募読者の正解率 11%
 私が想定した犯人  ✕

 
 《蝶番の問題》 貫井徳郎
 手記上ではあるがクローズド・サークルで一人ずつ殺されていく古典的な王道ミステリ。大好物だしよくできていると思う。
 尚、本書には「読者への挑戦状」はないが、誌上では応募には「推理の根拠」も要求されたものと思われる。

 応募読者の正解率 1%
 私が想定した犯人 ◯


 《二つの凶器》 麻耶雄嵩  
 木更津悠也登場。
 理系大学の研究棟で起きた殺人事件で殆ど逃れられないと思われる容疑者候補の姉からの救出依頼。助教授とか助手とかの呼称に20年という歳月の流れを感じる。
 作者のミステリ構成における非常な緻密さを改めて実感させられた作品。

 応募読者の正解率 22% (誌上では作者によるヒントがあったらしい)
 私が想定した犯人 ◯


 《十五分間の出来事》 霧舎 巧
 新幹線内での暴行傷害事件というトラベル・ミステリでライトなタッチで話が広がっていく。推理構築は間違ってはいないと思うが何かヘリクツの積み重ねっぽくて、あまり爽快感は得られなかった。

 応募読者の正解率 6%
 私が想定した犯人 ✕


 《漂流者》 我孫子武丸 
 第二話同様、手記上でのクローズド・サークル、そして記憶喪失者の「私は誰?」
 う〜ん、これは上手い。支釣込足で爽快に一本負けした気分。

 応募読者の正解率 8%
 私が想定した人物名 ✕


 《ヒュドラ第十の首》 法月綸太郎
 作者お得意のギリシャ神話をモチーフにしたフーダニット。法月親子登場。
 重要人物の意外性という点では前作「漂流者」に劣らないと思う上、推理にはかなり専門的な知識を要するので正解率の高さはちょっと信じ難い。それに「犯人が何を探したか」が解決されていないのでは。

 応募読者の正解率 28%
 私の想定した犯人 ✕

 
 子供の頃は好きだった推理クイズ本も大人になってからは全く読んでいなかったけれど、本書のようなクオリティが高いクイズ集ならまた手にしてみたいと思う。といっても本書は各作品の解決章の頭に
⬛解決編⬛
という表示がある以外は実質普通の(ハイレベルな)短編ミステリ集だけどね。

No.6 6点 パメル
(2025/06/23 19:14登録)
2005年に夕刊フジで連載された犯人当てミステリ短編を6人の作家が執筆したアンソロジー。
「ガラスの檻の殺人」(有栖川有栖)深夜の路上で起きた殺人事件。東西南北に伸びる道には、それぞれ人目があったが逃げる犯人は目撃されていない。驚きの真相のようなカタルシスはないが、解答の納得度は高い。洒落のきいた文章、会話が楽しい作品。
「蝶番の問題」(貫井徳郎)奥多摩にある貸別荘で五人の男女の変死体が発見された。その中の一人が、事件の一部始終を手記に書き残していた。探偵のキャラクターも立っているし、推理の論理も明快。
「二つの凶器」(麻耶雄嵩)京都理科大学で起きた殺人事件で、弟が容疑者とされたので助けてほしいと名探偵・木更津悠也のもとに訪れた。共犯者の裏切りと偽装がテーマ。情報量が多くて難解。
「十五分間の出来事」(霧舎巧)脚本家の大神は、新幹線の洗面室で気を失っている男を発見する。どうやら何者かに後頭部を殴られたらしいと判明する。軽快な会話と章ごとに新たな展開を告げる人物が現れるというテンポよく読ませる楽しい作品。
「漂流者」(我孫子武丸)浜辺で溺れて気を失っていたところを助けられた「私」。頭を打ち記憶喪失になった「私」の手帳には、殺人事件の顛末が記されていた。「私」が何者かが判明すれば殺人事件の犯人がわかるという仕組みが面白い。
「ヒュドラ第十の首」(法月綸太郎)染井霊園で殺害された蟹江のオンライン上に残していたプライベート・ログから浮上した容疑者は、ヒラドノブユキという同姓同名の三人だった。科学的トリックと伏線が光る作品。

No.5 6点 メルカトル
(2015/01/06 22:39登録)
再読です。
表紙の猫がかわいいね。黒猫がカメラ目線でじっとこちらを見ているよね。
さて、この犯人当てアンソロジーだが、なかなか良質の短編が並んでいる。いずれ劣らぬパズラーが目白押しと言いたいところだが、出来不出来の差は見られるのはやむを得ないだろう。と言うか、ここまで来ると好みの問題なのかもしれない。個人的には、貫井徳郎の『蝶番の問題』が圧倒的に面白かった。投稿による正解率がわずか1%だというのだから、その難解さは群を抜いている。しかし、その割には実に明快で意外すぎる真相が光る逸品となっている。
他は安孫子武丸、法月綸太郎あたりが良かったかな。
巻末の筆者による座談会も興味深く読ませてもらった。やはり、こうした誌上掲載のキッチリした締め切りの犯人当てという企画ものには、様々な苦労が付きまとうものだということがよく分かる。
それにしても、当時も、そして今でもこのメンバーは豪華すぎる。これだけの執筆陣が揃っているのだから、期待しないほうがどうかしている。多くの読者にとっては、その期待を裏切らないだけのポテンシャルを持った作品集と言えるかもしれない。

No.4 7点 まさむね
(2014/06/18 22:00登録)
 夕刊フジの連載企画から生まれた,犯人当てアンソロジー。出題者は,有栖川有栖氏,貫井徳郎氏,麻耶雄高氏,霧舎巧氏,我孫子武丸氏,法月倫太郎氏という錚々たるメンバーでして,内容も充実しています。最後に収録されている座談会も,「犯人当て作品」に関する各々のスタンスが垣間見えて楽しい。犯人当てに挑むという本来の読み方が最も楽しめることは間違いないですが,肩ひじを張らずに普通の短編集として読んでも良いと思います。
 犯人当てに成功したかどうかは別として,楽しめた作品は,漂流者(我孫子武丸氏),ヒュドラ第十の首(法月倫太郎氏),蝶番の問題(貫井徳郎氏)ですかね。

No.3 8点 測量ボ-イ
(2011/10/30 14:01登録)
夕刊紙に掲載された(らしい)犯人当て短編集。
どれも粒よりでハズレがなく、嗜好に合う方ならかなり
楽しめると思います。

少し長くなりますが、個々の簡単な評価が以下書きます。
露骨なネタばらしはしませんが、何の予備知識もなしに
本作品を読みたい方はスル-して下さい。

①ガラスの檻の殺人(有栖川有栖)
 凶器の隠し方がテ-マ。隠し場所が判れば自ずと犯人
 も特定できます。土屋隆夫氏の某名作を彷彿とするト
 リックです。

②蝶番の問題(貫井徳郎)
 確かに伏線は貼ってありますが、これは難し過ぎます。

③二つの凶器(麻耶雄高)
 作品自体も楽しめますが、登場人物の名前がユニ-ク。
 月ヶ瀬、大河原、下狛、加茂、笠置、木津・・・関西
 在住の方、ピンときませんか?
 作者は確か三重県出身でしたよね。成程。

④十五分間の出来事(霧舎巧)
 う-ん、これも難しい・・・

⑤漂流者(我孫子武丸)
 トリックは使い古したものですが、見せ方・使い方が
 うまい。

⑥ヒュドラ第十の首(法月倫太郎)
 ちょっとマニアックなトリックかな?

 全体として、かなり難しいです。因みに僕は1勝5敗
でした。

No.2 7点 HORNET
(2011/02/13 15:28登録)
 読者の「犯人当て」を主眼とした企画アンソロジー。夕刊フジに連載され,読者から解答を募ったものだそうで,その正解率も各短編のはじめに示されていて謎解きの意欲を掻き立てられます。私なりに難易度を示してみました。
◇有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」:普 一番分かりやすかった。描写の中に含まれている推理の手がかりも気付きやすい。
◇貫井徳郎「蝶番の問題」:超難 被害者の手記をいかように読むかがポイント
◇麻耶雄嵩「二つの凶器」:普 短時間に起こった出来事をいかに時系列に整理できるか。
◇―霧舎巧「十五分間の出来事」:難 これも描写にヒントが隠されています。 
◇我孫子武丸「漂流者」:普 これも主体は被害者の手記。犯人というより,人物当て。
◇法月綸太郎「ヒュドラ第十の首」:難 ちょっと科学的というか医療的な知識も要るが,常識の範囲。

 私は2勝4敗でした。しかも1勝は,犯人と大体のトリックは分かりましたが,犯人の行動の「なぜ」について完全に説明は出来なかったので,本当は「敗」かも・・・。何にせよ,まさに「気分は名探偵」の楽しい一冊です。 

No.1 7点 江守森江
(2009/05/22 14:12登録)
夕刊フジの読者挑戦連載企画作品を纏めた物。
犯人当てを手軽に楽しめる良品。
巻末に作者達の覆面?座談会もあり楽しい。

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