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ミステリの祭典

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死者の中から
別邦題『めまい』

作家 ボアロー&ナルスジャック
出版日1958年01月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 6点 メルカトル
(2023/07/21 22:18登録)
高所恐怖症のために警察を辞めた男のもとへ、かつての友人から不可解な依頼が持ち込まれる。自殺願望のある自分の妻を監視してくれと…ヒッチコックを魅了したサスペンス小説の傑作。
『BOOK』データベースより。

パロル舎版で読みました。映画を観ていないので、この場面はこうしたカメラワークで撮っているのかなとか想像しながらの読書でしたが、訳者あとがきによると舞台がフランスからアメリカに変えられているので、おそらく映画とは別物なのだろうと思いました。映画は知りませんが、原作は個人的にはそこまでの傑作だとは・・・。謎自体はなかなか魅力的ではあるものの、それ一つで物語を引っ張るにはやや荷が重かった気がします。それにしても、フランスのサスペンスってこんなのばっかりなのですかね。そんな訳ないか、偏見はいけませんね。

残りページ僅かになってからの真相の提示には、ハラハラさせられましたが、納得でした。簡潔過ぎるきらいはありますが、ミステリ的解決というか、その整合性には成程と思わずにはいられません。よく練られていてそこに不満はありませんが、その道中がやや凡庸ではないかと感じました。

No.4 6点 クリスティ再読
(2018/01/03 22:53登録)
ヒッチの「めまい」の原作として有名すぎるくらいに有名な作品。今回久々に再読して印象に残るのが、第一部が第二次大戦のフランス侵攻の前夜の話、という時代面での息苦しさがうまく小説内容にマッチしてることだったな。ただし、第二部での主人公がルネによってマドレーヌを再現しようとするあたりは、どうしてもヒッチの映画のヴィジュアルの説得力に負けてしまう。「めまい」ではそれに加えて、ジェームズ・スチュアートのある種の不健全さが垣間見れて、きわめて倒錯的な面白さ(ヒッチ曰く「死姦」だそうだ)を感じるのだね...まあだから小説評価としては、残念ながら「映画ほどじゃない」ということになる。
逆に小説でのいいところは、犯人たちの仕掛けが「効きすぎて」逆に墓穴を掘ることになった、ということに読み終わって気が付く、というあたりのような気がする。映画だとこういう見方をしづらいように思う。
あとそうだね、ボア&ナルって心理主義というか、心理描写が長々...という印象がないわけじゃないが、本作とか風景の客観描写が意外にハードボイルド文っぽい抑制的な美があるあたり、不思議なほどにアメリカンな印象を受けた。意外というか、アメリカニズムの普遍性というか、面白いな。

No.3 7点 蟷螂の斧
(2014/11/21 11:49登録)
「めまい」(パロル舎版)で拝読。~「高所恐怖症のために警察を辞めた弁護士のもとへ、かつての友人から、妻の様子がおかしいので監視をしてくれとの依頼を受ける。やがてその人妻を愛してしまう。」~解説によると、ヒッチコックによる映画化を期待して書かれた作品のようです。「高所恐怖症」と「転生」をうまく取扱い、サスペンスの傑作に仕上がっていると思います。

No.2 7点 kanamori
(2010/08/08 13:45登録)
この作品もボア&ナルの心理サスペンス・ミステリの傑作だと思います。
死んだはずの女性の出現というのは「悪魔のような女」を踏襲したかのようですが、その意味合いは全然違います。高所恐怖症の男という主人公の心情描写が丁寧に描かれていて、それが第2部で主人公が陥る悪夢の状況を際立てているように思います。
文庫は絶版のようですが、簡単に読めない状況はもったいない逸品です。

No.1 7点
(2009/04/15 21:57登録)
ヒッチコックの傑作として知られる『めまい』の原作ですが、サンフランシスコを舞台とした映画の明るいロマンチックな雰囲気とは全く違い、どろどろした感じが最初から漂っています。ヒッチコックと比べるなら『サイコ』の不気味さが本作の感じにむしろ近いでしょうか。真犯人がどうなるかは原作では映画と違っているのですが(というより映画ではほとんど無視)、小説の展開はちょっとした驚きでした。
それにしても最終的にトリックが明かされた後、ラストの主人公の確信には、悪夢もここに極まれりという感じです。

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