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ミステリの祭典

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難問の多い料理店

作家 結城真一郎
出版日2024年06月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2024/08/25 16:08登録)
(ネタバレなし)
 全6編の連作短編。

 探偵役は同じで、毎回のワトスン役の方が交代する趣向というのがちょっと面白く 適度に話のバリエーションを感じさせた。
(名前未詳の探偵役というのは、隅の老人や三番館シリーズなど同様、この手の一種の安楽椅子探偵もののトラディッショナルという印象だが。)

 各話は日常の謎と犯罪事件とのグレイゾーンのようなものが多く、その辺は「ブラックウィドワーズ・クラブ」などを想起させるが、個人的にはなかなかオモシロイ(読み手の興味を刺激する)謎のネタがあって楽しい(切断されていた指の件や、置き配の件など)。
 最終的には、あくまで真相の仮設であり思考実験的な決着に至る解決も多いが、その上で作者らしいロジカルさが随所に伺え、心地よかった。

 連作短編集としては最後のエピソードで一区切りを迎えたので、続きはないかもしれないけれど、もう一二冊くらい、同じパターンでの続刊があってもいいかとも思う。

No.1 7点 メルカトル
(2024/08/12 22:22登録)
ビーバーイーツ配達員として日銭を稼ぐ大学生の僕は、注文を受けて向かった怪しげなレストランで、オーナーシェフと出会う。
彼は虚空のような暗い瞳で、「お願いがあるんだけど。報酬は1万円」と、噓みたいな儲け話を提案し、あろうことか僕はそれに乗ってしまった。
そうして多額の報酬を貰っているうちに、僕はあることに気づく。
どうやらこの店は「ある手法」で探偵業も担っているらしいと。
Amazon内容紹介より。

第一話がやや低空飛行で第二話で上昇し、又下降するの繰り返しで評価が難しいです。つまり奇数話はまずまずで、偶数話はかなり面白いという感じ。
それにしても探偵役、というか裏稼業で探偵をしているシェフが謎過ぎて内面が窺い知れません。外見のディテールははっきしりているのですが、何を考えているのか分からない不気味さがあり、得体の知れなさが浮き彫りになっています。名前さえ与えられていない探偵というのはどうなんでしょうねえ。

採点はやや甘めで、どうしようか迷った末最終話が結構盛り上がったので、この点数にしました。何となく期待していなかったのですが、その期待は上回ったと思います。
真相自体は何でもない様に思えても、それを解明する過程が面白いので、その意味では高評価です。最終話>第四話>第二話>>>>その他。意表を突かれる様な結末もあったりして楽しめます。

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