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ミステリの祭典

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毒入りコーヒー事件

作家 朝永理人
出版日2023年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2023/09/19 06:26登録)
(ネタバレなし)
 大手文具メーカー「ミノワ文具」の元社長・箕輪征一は、現在、地方で妻と長女とともに静かに暮らしていたが、そこに東京でOLをしている次女・まゆが帰参した。だが当日は大雨で、村の交通は閉ざされてゆき、まゆは途中で出会った難儀する二人の若い男性を、私の家で雨宿りすればいいとそのままいっしょに実家に連れ帰る。箕輪家の家族に歓待される青年たちだが、やがて一同の話題は十数年前の悲劇に及んでいく。

 もしかしたら現代の国産ミステリシーンのなかでもかなり上の方の論理派じゃないかと、評者がひそかに思っている作者の新作。
 そういう訳で今回も結構な歯応えのあるものを予期したが、しかしこの新作のお話そのものは存外に読みやすい。リーダビリティが高い。

 設定はあらすじのように明確なクローズドサークルものなので、登場人物は少な目で、これでどうやってサプライズを演出するんだ……と、思っていたら、まんまと騙された!
 まあ人によっては……(以下略)。

 ミステリとしての組み立てはかなり精緻で、もしかしたらこれまでの作者自身の作風すらギミックに用いたんじゃないか、と思ったりもする。

 繰り返すけど、ページ数はそんなになくて読みやすい。しかし、ハマればハマると思う。興味ある人は、どっかでネタバレをされないうちに、さっさと読んだ方がいいです。

No.1 7点 nukkam
(2023/08/09 07:51登録)
(ネタバレなしです) 「幽霊たちの不在証明」(2019年)を読んで個人的に注目していた作家の2023年発表の本格派推理小説です(本書の前に「観覧車は謎を乗せて」(2022年)というのが発表されているのも認識はしてますが、(本物の)幽霊が登場するという特殊設定にためらってまだ未読です)。アントニー・バークリーの「毒入りチョコレート事件」(1929年)を連想させるタイトルですがあまり共通する要素はありませんでした。宝島社文庫版で300ページに満たない分量は老読者の私にはありがたいです。登場人物数を絞っているのは「幽霊たちの不在証明」と比べて改善点ですがそれでいて豊富な謎解き伏線と推理の論理性は遜色ない出来栄えだし、どんでん返しの鮮やかさでは上回っています。最後は名前を出さずに男と女の会話で締めくくっていますが、そこにも技巧を感じさせます(誰でもすっきりできるように最後の最後で素性を明確にしてもよかったかも)。注文をつけるなら舞台の見取り図があればなあと贅沢を言いたくなりました。

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