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ミステリの祭典

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時計泥棒と悪人たち
大正ミステリー

作家 夕木春央
出版日2023年04月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 ALFA
(2024/04/23 08:42登録)
大正シリーズ第三弾。
本格のミステリー短編集と意気込まずに、時代設定とシリーズキャラを楽しむつもりで読めばいい。
ただそれにしてはこのキャラ、それほど魅力的でもない。元泥棒紳士の蓮野はまあいいとしても、主人公たる画家の井口は影が薄い。脇役の晴海氏に負けている。
「サーカスから来た執達吏」の『ユリ・鞠』コンビで脱力感満載の短編を読みたいものだ。
第一話「加右衛門氏の美術館」はチェスタートン張りの逆説が面白い。

No.3 5点 レッドキング
(2023/07/13 22:38登録)
大正の元泥棒美青年・・「絞首商會」主役・・が探偵役の中短編集。
   「加右衛門氏の美術館」・・死を前にした蒐集家老富豪の建てる奇妙な美術館の秘密。4点
   「悪人一家の密室」・・密室殺人の、HowでもWhoでもない、唖然! 脱力(';')のWhy・Whom。6点
   「誘拐と大雪」・・誘拐された娘の救出劇と対強盗団活劇と贋金造りのユニークWhy。チョビっと雪密室。5点
   「晴海氏の外国手紙」・・異人からの遺書手紙と相次いで同じ男に嫁いだ姉妹のちょっといい話。3点
   「光川丸の妖しい晩餐」・・船上の蛮食会で皆殺しを企む殺人鬼の呆然(*_*; Why。マーヴェラス! 7点
   「宝石泥棒と置時計」・・聖画に時計、ドレス、腕輪、無関係な諸物から、ルビーのみ取外された事件の謎。4点
※この作者の本領は、Who(犯人当て)でも、How(トリック解明)でもなく、ロジック超えて、Why(何でや?)のトンデモいかれ具合なのね・・・

No.2 7点 虫暮部
(2023/06/22 12:18登録)
 同一シリーズとはいえ書き下ろしのしかも趣味性の強い内容の短編集でこの大部の一冊とは強気である。
 トリックは鋭くても真相全体は誂えたように御都合主義的だったり、ホワイは斬新でもハウが失笑ものだったり、必ずしもパーフェクトではないけれど、適度に野暮ったい筆致で何となくまぁいいかと言う気分になれる。と言うかその辺の緩さは或る程度意図的なものじゃないかと思う。
 最終話で伏線回収するタイプではないからどんでん返しを期待して急ぐ必要は無い。もっとのんびり読めば良かったと反省。

 「誘拐と大雪」の監禁場所 =“大きな家が二つ、その中間に小さな小屋” は「悪人一家の密室」の舞台(概略図まで付いてる)と要素が共通、つまり実は同じ場所である。二つの事件の間には邸が廃屋になるだけの時間が経過しており、叙述トリックで隠しているが「誘拐と大雪」での蓮野と井口は老紳士になっている。
 ……のかと思った。

No.1 5点 人並由真
(2023/06/16 05:26登録)
(ネタバレなし)
『絞首商會』『サーカスから来た執達吏』に続く「大正ミステリー」シリーズ(最近、これが公称になったらしい?)の第三弾。ただし作中の時系列では、今回のこれが一番先で、このあとに『絞首』『サーカス』の出来事が続く。
(そういう意味では、これまで本シリーズに縁がなかった人も、こっからスムーズには入れます。)

 事実上、『絞首』の主人公コンビが主役の連作短編(中編)集で、彼らを軸に全体の挿話を貫く物語の流れも、設定されている。『サーカス』側の登場人物は……たしかあの人だよな? 数年前に一度読んだきりなので、記憶がおぼろげだ。

 チェスタートンを思わせる逆説ロジックを各編の基本とするなど、なかなか良いのだが、一方でお話の流れが全体的に淡々としすぎていて、正直、読んでいて眠くなった(汗)。

 形質的にはキャラクターものミステリのスタイルで、その上での謎解きパズラーだと思うのだが、ぶっちゃけ、今回は、主人公コンビにも他のメインキャラにも、そんなに魅力を感じなかったし(個人の感想です)。
 いや前述したように、反転する各編の真相など、ところどころ光る箇所はあったんだけどね。

 次回のこのシリーズは『サーカス』側の女子チームの方を、メインにやってください。

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