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ミステリの祭典

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ローズマリーのあまき香り
御手洗潔シリーズ

作家 島田荘司
出版日2023年04月
平均点6.14点
書評数7人

No.7 8点 E-BANKER
(2026/05/05 11:06登録)
さあ!ついに書評も1,900冊目に到達! 一応の目安としている2,000冊までカウントダウンが始まった感じだ。
今回は久々に発表された「御手洗潔(キヨシ・ミタライ?)」シリーズの現状では最新作。
ハードカバーで約630ページ。この厚さ!重さ! さすが講談社! 出版不況のなか、よくぞ出してくれました!
と感謝せずにはいられません。発表は2023年。

~世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された「スカボロゥの祭り」で主役を務めたクレスパン。警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、専用の控室で撲殺されたという。しかし3幕以降も舞台は続行された。さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた、と言っていてーー?名探偵・御手洗潔も活躍、島田荘司待望の長編新作~

今年(2026年)の年始一発目で作者の「アルカトラズ幻想」を書評した際、「(久々に)島田荘司も悪くないと感じた」etcなどと書いた。本当は「分厚い、超大作だから正月休みにちょうどいい」と思って年始に本作を読むはずだったのが本作。それがGWに移った次第・・・(どうでもよいことですが)
で、どうだったのかということで、個人的には「読み物としては15点」「ミステリとしては6点」という評価。(だったら、平均して10点じゃないか!などと言わないでください)

この「物語を紡ぐ」熱量、経験値、スキルはやはり無二の存在だと感じる。今回、「クレスパン」という孤高のバレリーナが主役となり、彼女を大きな軸として数々のストーリー、サイドストーリーが展開される。彼女をめぐる物語は、かの世界大戦のユダヤ人虐殺、ナチスドイツ、そして戦後のソ連・東ドイツを経由して、ロシアのウクライナ侵攻までもが反映されるという壮大さ!
個人的には、途中で語られる「日本人とユダヤ人の歴史」について(これは割と有名な話だったのね)は、非常に興味深く、とにかく作者の広げに広げた大風呂敷のなかを浮遊するような読書だった。
作者の大型作品にはお約束ともいえる「中途に挟まれる挿話」。毎回『いるかいらないか」という感想が出てくるけど、今回は「必要だった」と言い切りたい。(アノ話が最後のトリック解明にもつながるからね)
感動的なラストも含め、齢70を超えて、作者のストーリーテラーとしての力量はさらにレベルアップしているとさえ思ってしまう。

ということで「10点」進呈!・・・じゃなかった。
ミステリとしては、他の皆さんご指摘のとおりで、ある意味「禁じ手」なんだろうと思う。私がもし20年前のミステリ初心者だったら、「こりゃないわ!」と感じたかもしれない。作者が以前再三語っていた「奇想」というワード。本作のトリックは「奇想」とは呼べない。偶然の連続とはいえ、ぎりぎりのリアリティでトリックを構築すること・・・が最低線だと思うけど、今回はそれには当たらない。本作と同ベクトルの過去作「摩天楼の怪人」ではギリギリの「奇想」があったはずだけど、まさか同じようなトリックは使えず、本作で最も大きな謎となった「死後も踊っていた」という現象を如何にして成立させるか。これを現実的に考えれば、当然にこういう帰結に至る、ということなんだろう。

まあいずれにしても、現代日本でこれほどの作品を紡げるミステリ作家は数人いるかどうか。もちろん賛否はあろうけど、他作品、他作者とは「役者が違う!」と思えた。作中では「横浜に帰りたい」という台詞を御手洗が語る場面がある。是非とも帰ってきてください! この厭世観・閉塞感漂う日本に一陣の風を吹かせてください! で、最後は吉敷刑事とガッツリ共演してください! ファンとしては大きな願いだなあー

No.6 6点 測量ボ-イ
(2023/12/02 15:36登録)
久々の御手洗ものですね。
長らく氏の作品を読んでる人間からすれば、
また格別の感慨があります。
密室殺人で謎の設定は魅力的ですが、解決は…
まあいいでしょう 笑
ミステリとしてはともかく、読み物として評価
したい作品。

採点は7点(基礎点)-1点(さすがにこのトリック
は減点せざるを得ない)

No.5 5点 HORNET
(2023/08/14 20:45登録)
 1977年10月、世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。しかも殺されたのはニューヨークで行われていた講演の2幕と3幕の間、それなのに殺されたはずのクレスパンは最終幕まで舞台で踊っていたと、観客みんなが証言した。「クレスパンだからこそ、死後も最後まで踊り続けたのだ」―まことしやかな伝説と化しながら事件の真相が分からないまま時は過ぎ、20年後。世紀の謎は、名探偵・御手洗潔の手に委ねられた―

 7年ぶりの御手洗シリーズ、そりゃとりあえず読む。謎の不可能度は高く、謎解きへの期待はかなり高まるが、一方で不要な挿話が多く、御手洗登場までも長い。つまり不必要に長い。
 作風は同氏「摩天楼の怪人」を彷彿とさせる。ただ「この不可能にしか見えない状況がどんな『驚愕の』仕掛けによって解き明かされるのか?」という膨らむ期待に応えるものとしては、真相はイマイチだったかもしれない。
 とはいえ、氏の代名詞ともいえる「御手洗シリーズ」の長編を書き続けていることにはうれしさを感じる。可能な限り続けてほしい。どのみち絶対読む。

No.4 6点 メルカトル
(2023/07/12 22:40登録)
世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。
1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された「スカボロゥの祭り」で主役を務めたクレスパン。
警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、専用の控室で撲殺されたという。
しかし3幕以降も舞台は続行された。
さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた、と言っていてーー?
Amazon内容紹介より。

『暗闇坂の人喰いの木』以降の、年一回ペースで刊行されたいた頃のシリーズ作品と比べると、やはり随分見劣りしてしまう感は否めません。ただその構成は相変わらず読み応えがあり、長いけれど冗長とは感じませんでした。
冒頭の謎の提示は強烈で、文句なく読書欲を掻き立て、難なく惹き込まれます。一体何が起こって、どうすればこの様な不可解な謎を合理的に解決できるのか、いやでも期待は高まります。

しかし、真相は余りに貧弱でそれはないんじゃないの?と思わずにはいられませんでした。それに解決編があまりにあっさりし過ぎでしょう。何だかフィンランドの教授とかになって偉くなった御手洗はそれに見合った人格者で、かつての変人ではなくなってしまって往年の作品のファンからするとちょっと淋しいかなと思います。
まあ、Amazonの評価はあまり参考にしない方が賢明ですね。彼らは懐かしさのあまり過剰評価している気がします。いずれにせよ、定価で買って読む程の作品ではなかったです。ミステリとしては残念でしたが、それ以外の所での読み物、社会派の一面やメルヘンの世界に飛び込んだような記述、ユダヤ人と日本人のくだりは面白く読めました。

No.3 6点 虫暮部
(2023/07/07 12:21登録)
 ネタバレしつつ文句を色々:
 プリマドンナの唯一性について、“誰も代わりにはなりえない” と神格化せんばかりに前半で述べておいて、結局あの真相。二重基準ではないか。私の心情的には限りなくアンフェアに近い。
 トリックの目的はアリバイ工作だけれど、死亡時刻(=犯行時刻)を誤魔化せていないのだから意図通りに機能はしていないよね。あのまま放置して逃げても、密室状況は成立し、セキュリティの彼が疑われる成り行きは変わらない。単に、“死後も踊った” 伝説を図らずも作っただけだ。
 摩天楼のこういう感じの仕掛け、タイトルは忘れたけど以前にも読んだ気がする。
 休憩時間と言っても出演者にしてみれば本番の一部であって、そのタイミングであんな話を携えて訪れるなんて、犯人側はそもそも舞台表現を全然尊重していないんだな~。それはそれでリアルか。
 ところでキヨシ、事実が告白の通りなら、罪状はマンスローターに該当するのでは。

 でも面白かった。と言うか面白さとつまらなさが幾重にも重なり合ったミルフィーユ。そしてそれこそまさに島田荘司の作風である。

No.2 6点 人並由真
(2023/06/23 08:21登録)
(ネタバレなし)
 1977年のニューヨーク。世界的に有名な美人バレリーナ、35歳のフランチェスカ・クレスパンの公演が行われるその夜、彼女の死体が地上50階の高層フロアの密室で見つかる。だが死亡推定時刻のその後も、彼女はプリマドンナとして舞台に立っていた!?

 魅力的な謎の設定だが、600ページ以上という本の厚さにウエ~となる。 
 しかし島田作品だから何となくそうなるんじゃないかと思っていたら、予想通りにスラスラ読めて二日で読了した(笑)。

 謎解きミステリとしての結末は、もしこの真相を新人作家が真顔で書いていたら、全国のミステリファンから総叩きに遭い、お前は才能ない、ミステリ作家やめて田舎に帰れ、と罵られそうなもの。あまりに豪快なので、一種の裏ギャグ的な冗談なのかとも、今でも半ば思っている。
(いや、実際にそうかもしれない?)

 ただしアレな謎解きパズラーである一方、とにかく読み物ミステリとしてのある種のダイナミズムは感じるのも確か。質的なベクトルは違うんだけど、乱歩の通俗長編に似た、読者を喰いつかせる独特のパワーを見やるというか。

 90~00年代の島田歴代作品にはほとんど縁がない、まったく島田ファンでない現在の評者には、現在に至るこの人の長編ってこーゆーのもアリなのかな、とも思ったりする(それでも10年代の半ば以降の新作長編は、一応、全部読んではいるんだよ・汗)。
 
 なお、この新刊の長編、帯には「「メフィスト」連載時から絶大な反響を受けた~」と謳われてるが、奥付手前のページには「本書は書き下ろしです」とある。どっちじゃい? ファンの方、教えてください。

No.1 6点 ことは
(2023/06/18 22:31登録)
まあ、解決はだめですね。反則です。
でもね、そこまでは読ませるんですよね。謎の盛り上げはいいし、関係なさそうなエピソードも盛り込み、ファンタジー小説が挟まり、世界近代史から世界情勢まで取り込んで、解決になだれ込む。解決シーンも、映像を思い浮かべれば、実に映える。「アトポス」頃の大作を思い起こさせる、豪快な作品。
さすが豪腕、島田荘司です。70歳を超えて、いまだパワフル。それだけで、期待は満たされたかな。
でも、解決は期待しないでねー。

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