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ミステリの祭典

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キュレーターの殺人
ワシントン・ポーシリーズ

作家 M・W・クレイヴン
出版日2022年09月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2022/10/22 05:30登録)
(ネタバレなしです) 2020年発表のワシントン・ポーシリーズ第3作で、ハヤカワ文庫版で600ページを超す分量ながら最後までテンションを落とさずに読ませます。パトリシア・モイーズのように色彩的ではありませんけど風景描写も秀逸です。捜査が進むにつれアガサ・クリスティーの某作品やジョン・ロードの某作品を連想させる真相の一端が見えてきますがそこはまだほんの一角、登場人物リストに載っている人物の最後に登場する人物にたどり着いた瞬間からの展開は私の予想を超えていました。巻末解説で「本格謎解きの興趣に溢れた警察小説」として高く評価していますが、なるほど第86章での推理説明での伏線の回収は本格派推理小説を意識したものだと思います。ミスリードも巧いです。もっともかなりのところは自白に頼ってしまったし、第87章の自白であまりにも途方もない「偶然」が説明されると個人的にはちょっと釈然としませんでしたけど。結末のつけ方は警察小説というよりハードボイルド小説的ですね。

No.2 7点 文生
(2022/10/12 06:03登録)
被害者の指を殺害前と殺害後の2回に分けて1本ずつ切断するという連続猟奇殺人から始まり、二転三転する展開に引き込まれまていき、その末に提示される思いもよらない真相にも驚かされました。長大なページを用いて壮大な犯罪計画の全貌を解き明かしていく物語は非常に読み応えがあります。ただ、果たしてこの動機でこんなにも回りくどくてリスクばかり高い犯行計画を実行に移すものだろうかという疑問はどうしても残ってしまいます(犯人の狂気がもっと描かれていれば説得力が増したのかもしれませんが)。その点が大きな減点材料です。

No.1 9点 HORNET
(2022/10/10 18:28登録)
 クリスマスのプレゼント交換の場に、教会の洗礼盤に、精肉店の商品陳列棚に、切断された「2本の指」が晒された―。猟奇的な犯行に、ポー刑事と、ITの天才・ティリーが立ち向かう。捜査を進めるうちに、ネット上の闇サイトで、与えられた悪事の「課題」をクリアしていくというコンテストを主宰している黒幕の存在が浮かび上がる―

 無差別殺人のように見え、捜査方向も見定めきれない混沌とした中で、わずかな手がかりを嗅覚鋭く追いかけ、一つ一つ事を明らかにしていくポー&ティリーの捜査過程は相変わらず見もの。特に、後半「キュレーター」の存在が分かってからの展開は怒涛。

<ネタバレあり>
 「ABCパターン」の範疇に入るたぐいだと思うが、その「AB(C)」にブラフのミッシング・リンクを仕込み、それが本筋のように捜査陣(と読者)を誘導する企みは成功していると思う。
 キュレーターを操っている「真の黒幕」とその動機が最後に明らかになるのだが、これはかなり予想を超えていて……ゾッとした。

 シリーズ第3作、十分期待に応えてくれた快作。
 それにしても、ポーとティリーの友情はいいなぁ。

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