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ミステリの祭典

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時の密室
森江春策シリーズ

作家 芦辺拓
出版日2001年02月
平均点6.00点
書評数6人

No.6 6点 ぷちレコード
(2021/09/11 23:15登録)
エッシャーの騙し絵をキーポイントにした連作的な長編で、個々の事件の独立性が高くて、それが揃うとまた違った様相を見せるのが面白い。
小ぶりなネタ、素っ頓狂な仕掛け、テキストレベルの工夫などバラエティに富んでいる。

No.5 6点 nukkam
(2016/07/05 18:30登録)
(ネタバレなしです) 2001年発表の森江春策シリーズ第9作の本格派推理小説で、「時の誘拐」(1996年)の姉妹作とされますが「時の誘拐」を先に読んでいなくても鑑賞に支障はありません(とはいえ「時の誘拐」の事件関係者がちょっとだけ本書で顔見せしています)。講談社文庫版で500ページを越す分量がありますが「時の」というタイトルにふさわしく1876年、1903年、1970年、そして現代とまたがる展開に加えて実に6つの密室が登場するのですから退屈するわけもありません。中にはどう拡大解釈しても密室には思えないものもありますけど、それでも魅力的な謎と謎解きが楽しめることは間違いありません。

No.4 5点 名探偵ジャパン
(2014/09/22 08:57登録)
シリーズ探偵、密室、意外な犯人。私の大好物が揃えられているのに、どうもしっくりこなかった。いつまでも咀嚼しているのに、一向に飲み込めない、焼き肉のミノを食べてる感じだった。
芦辺氏の作品は十年以上前に一冊読んだ記憶があったが、なぜその後継続して読まなかったのか分かった気がした。
文体がぎこちなく読みにくいのだ。
その理由として、「こんなトリック思いついたった」という嬉しさに作者が酔っている。本格愛に溢れすぎていて仰々しい。(二階堂黎人氏の仰々しさとはまた別)というのがあるのではないかと思った。
また、何か新しい舞台、仕掛けが登場する度に披露される蘊蓄が余計。飛行船に関する蘊蓄が飛び出した時には、「こんなのも拾うのかよ!」と、仰け反った。取材の成果を発揮したい(ページ数を水増ししたい)という気持ちも分かるが、程々にしてほしい。
本作も各トリックの解明は、フェイクも含めて面白く読めたので、全体のバランスを整えて読みやすくしたら、「本格の旗手」と呼ばれる作家になり得ると思うのだが。

No.3 6点 いけお
(2009/12/26 09:44登録)
濃厚で完成度は高く、謎も魅力的なのにやや読みにくい。
人物やプロットも含め典型的な芦辺作品といった感じ。

No.2 6点 E-BANKER
(2009/11/01 21:12登録)
森江春策シリーズの大作。
非常に長い作品ですが、作者の意気込みは買います。
明治、昭和そして平成の現在に起こる3つの事件の謎が提示され、特に昭和と平成の2つの事件は大きな関連性があります。
途中の万国博覧会(明治時代の)についての挿話は確かに暗号的な面白さはあるんですが、ちょっと趣向が強すぎるような気がします。
現在の事件の真犯人は「えっ!」というような人物ではあるんですが、動機その他なにか納得できないですね。
全体として、プロットは面白いんだけど、なにか消化不良というか、モヤモヤ感の残る一作っていう感想になりました。

No.1 7点 ロビン
(2009/09/18 11:21登録)
驚きの真犯人です。しかし、純粋なフーダニットでなく、芦部氏の魅力である詰め込み過ぎのトリックが本作も炸裂しています。ので、そこはまあ愛嬌かと。

まさに「時をかけるトリック」と言いますか、三時代に渡る密室トリックが互いに連携していて、森江が真相に至るには一度その三大トリックごとひっくり返さなければなりません。この多重構造の仕掛けは上手い。(というか、ダミーの推理が真相だったらがっかりだよ、というレベルですが)

しかし、文章があまりにも活きてない。描写ではなく、説明。そういった小説的技法と、あとは驚きをより美しく魅せる演出力があれば、もっとすごい作家になると思うのですが。

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