火のないところに煙は |
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作家 | 芦沢央 |
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出版日 | 2018年06月 |
平均点 | 5.67点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | まさむね | |
(2023/07/02 21:19登録) ドキュメンタリーの体裁を使ったホラー連作短編。各短編が衝撃的に怖いわけではなく、じわじわ来るあたりで短編の収束を迎える感じで、個人的には丁度いい塩梅。ホラーはあまり得意ではないので…。最終話のまとめっぷりは、なかなか上手いと思いましたし、タイトルが浮き出てくる感じもイイですね。 |
No.5 | 5点 | 八二一 | |
(2021/12/18 20:51登録) ミステリ的なサプライズがあり、現実との境が曖昧になる実話系怪談集。 |
No.4 | 5点 | E-BANKER | |
(2021/05/13 22:19登録) ~『神楽坂を舞台に怪談を書きませんか』・・・突然の依頼に作家の「私」は、かつての凄惨な体験を振り返る。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。「私」は事件を小説として発表することで情報を集めようとするが・・・~ 企みに満ちた連作形式の短編集。 2018年の発表。 ①「染み」=神楽坂にある“よく当たると評判の占い師”に占ってもらった恋人同士。そこで不吉な占いを聞いた男性はその後態度を豹変させる。そしてついには最悪の結果が・・・。最初から不吉な展開。 ②「お祓いを頼む女」=「私」の知人である作家。彼女の元へ突如かかってきた電話。その電話はまるで憑かれたような女が、「お祓いをしてくれる人を紹介して欲しい」と懇願してくる。でも、女が語る身の上話はどうも・・・ ③「妄言」=最初はよくある隣人トラブルの話かと思いきや、かなりヘビイな内容だった。こんな奴が隣に住んでたら、それこそ不幸としか言いようがない。そして今回も最悪の結末が待ち受ける。 ④「助けてって言ったのに」=今回もある「家」が舞台。結婚して、夫の実家で義母と同居を始めた途端、悪夢にうなされることになる新妻。その夢は何と、義母もうなされ続けた悪夢だった・・・。そしてまたも不幸な結末が。 ⑤「誰かの怪異」=今回はとある集合住宅が舞台。優良物件に住めたと思った瞬間、不幸のどん底に落とされる学生と、その隣人の女性。知人の助けを借り、盛り塩と御札で結界を張ったのだが、またしても予想外の展開が。 ⑥「禁忌」=本編は単行本化に当たって書き下ろされたもの。①~⑤までの連作をまとめて、つながりを持たせるための最終章。 以上5編+α なかなか器用だね、作者は。 「怪談」(と言っても、ちょっと怖い話という程度だが)という体裁を借り、しかも①⇒②⇒③というふうに話に繋がりをつけながら徐々に読者の心を煽っていくという展開。ここまで技巧的なプロットは最近お目にかかってないと思う。 でも、ちょっと器用貧乏なところはあるかな。 確かに心は多少ざわざわするけど、揺さぶられるというほどでもない。よく言えば「ほどよい怖さ」かもしれないけど、悪く言えば「中途半端」ということになる。 もう少しビジュアル的にインパクトのある「怖さ」、或いはにじみ出るような「悪意」というようなものがあれば、よかったのかもしれない。 |
No.3 | 5点 | sophia | |
(2020/09/04 23:59登録) 連作短編ですが、消化不良の話が多くてやきもきしますし、かと言って最後に1話1話に立ち戻って保留した謎を鮮やかに解き明かしてくれるわけでもありません。がっかりです。1話単位で少しでも面白いと思えたのは「誰かの怪異」ぐらいでしょうか。 |
No.2 | 6点 | パメル | |
(2020/05/25 20:37登録) 物語に招かれるように、奥へ奥へと入り込んでいく。一歩一歩その歩みを進める度に、積み重ねっていく恐怖。 物語が進むにつれ、引っ掛かりを覚える箇所がいたるところに見えてくる。気にはなるが、それらを凝視することが、明らかにすることが怖い。物語の向こう側を覗き見るようなそれらの行為が堪らなく怖い。 何とも言えない居心地の悪さ、ざわつき、そして意外な結末の謎解き。ロジックにより、怪異を明らかにすると、さらなる事実が明かされることで、ロジックが怪異を補強してしまうという構成は実に巧妙。 |
No.1 | 7点 | HORNET | |
(2019/01/26 20:54登録) 私(芦沢央)が、「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」という出版社の依頼から、怪異譚を集めたという体のモキュメンタリー。 占い師に「結婚すれば不幸になる」と断言されたカップルの、謎に満ちた末路を描いた1作目「染み」をきっかけに、怪異譚が次々と「私」のもとに寄せられていく。それを順に書き綴っていくことで連作短編集となるのだが、最後にはすべてを結び付ける絶妙な結びが用意されている。 ここ最近注目を浴びだした新進気鋭の作家の、「さすが」と思わせる腕を感じさせてくれる一冊。 |