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ミステリの祭典

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葬儀を終えて
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1976年04月
平均点7.00点
書評数28人

No.8 8点 E-BANKER
(2011/12/22 23:41登録)
エルキュール・ポワロ登場の長編第25作目の作品。
作者中期の傑作という評判もありますが・・・

~「リチャードは殺されたんじゃなかったの?」・・・アバネシー家の当主・リチャードの葬儀が終わり、その遺言公開の席上、末の娘のコーラが無邪気に口にした言葉。すべてはその一言がきっかけだったのか。翌日、コーラが惨殺死体で発見される。要請を受けて事件解決に乗り出したポワロが、一族の葛藤のなかに見たものとは?~

「実にうまい」作品。熟成したワインのような味わい(!)
とにかく、プロット的にはクリスティらしさが十分に出ていて、これぞ王道ミステリーと呼びたくなる。
プロットの鍵は「大いなる欺瞞」という表現が合ってるかなぁ・・・
作品序盤から、作者のミスリードは始まってるわけで、並みの読者なら簡単に騙されるかもしれません。
「鏡」の伏線なんて秀逸でしょう。(何とも言えない小憎らしい演出です)

敢えて難を言うなら、あまりにも「らし過ぎて」、クリスティに慣れた読者ならば何となく気付いてしまうかもしれないというところか。
でもちょっとその「動機」には気付かなかったなぁ・・・
あとは、真犯人のある行動が、あまりにもリスクがあって、ムリがあるのではないかという点。
(いくら「知らなかったり」、「しばらく見ていなかった」としてもねぇ・・・)

というようにアラを探せばあるのですが、トータルではやはり高品質な佳作という評価は揺るぎないのではないでしょうか。
(初読の筈なのに、既視感があったのはなぜ? もしかして再読だったのか?)

No.7 7点 あびびび
(2011/07/24 15:38登録)
犯人が大胆すぎ、その割にはやや動機が弱い気はするが、クリスティらしい流れ。最初やけに登場人物が多いなと思ったが、後半は絞られた感じになり、逆に少ないと思った。

まあ、いろいろな評価はあるだろうが、本当に外れのない作家だと思う。

No.6 5点 りゅう
(2011/03/07 18:44登録)
 クリスティー・ファンクラブが第9位に選んでいる作品ですが、個人的にはあまり評価できません。私はこの真相が見抜けませんでしたが、かなりアンフェアな作品だと思います。


(完全にネタバレをしています。注意!)

 ギルクリストはコーラに成りすましてリチャードの葬式に参列した後、本来のギルクリストに戻って、スーザンやモードに会い、さらにエンダビーを再訪問して、関係者ほぼ全員と会っています。ここまでやって、「葬式に参列したコーラ」とギルクリストが同一人物であることに誰も気付かないという設定は乱暴でしょう(しかも、ギルクリストは大胆にもわざわざ希望して、エンダビーを再訪問している)。私でも、「葬儀に参列したコーラ」がギルクリストの成りすましである可能性は一応考えましたが、矛盾があるため、却下しました。犯人の動機も後出し気味だし、この動機でこんな面倒な犯罪計画を立てるとは考えられません(目的の絵画をレプリカと入れ替えて入手し、仕事を辞めるだけで良かったのでは)。鏡の左右反転からのポアロの推理もぱっとしません。ギルクリストが「あの造花とテーブル、ほんとうにぴったりですわ」と言った一言が、犯人を特定する唯一の決め手となっているのですが、読者がこの一言を見逃さないためには相当の注意力が必要でしょう。

No.5 8点 mini
(2010/11/11 10:06登録)
クリスティに関してはどうも私は当サイトでの空さんの評価と合わない傾向があって、戦後の有名作だと空さんは「予告殺人」に対しては擁護派で、この「葬儀を終えて」に関しては辛口で厳し目の御意見ですが、私は全く逆ですね

実を言うと私は真相は中途で見破っちゃった
まぁ単なる直感なんだけど臣さん同様に最初に犯人に気付いた
一応クリスティという作家の癖を知っていたので、犯人は絶対こいつしかないと中盤で確信しちゃった
犯人から逆算して考えると当初のある前提について180度見方が変わる事に気付いて、さらに大胆なトリックが使われた可能性を疑った
まぁ正直言うと、当初のある前提については、案外と単純にミスリードなんじゃねえのと序盤から多少は疑惑は感じてんだけどね、私も初心者じゃないからね
以上の思考順序から直感ではあるがほぼ完璧に真相は分かった
しかしなんである、真相は見破っちゃったが、がっかりするどころか技巧の冴えに驚嘆せざるを得なかった
当サイトで臣さんもミスディレクションに感心しておられますが、私も臣さんに全く同感ですね
「葬儀を終えて」は例えば「ホロー荘」のような人間ドラマ的魅力や感動には全く欠けていて、とにかく技巧だけが目立つ作である
そうなると方向性としては本来の私の嗜好では無いのだが、ここまで技が熟練したら褒めるしかないだろう
中心となるトリックも昔からあるトリックだが、しかし使い古されたトリックでも要は使い方次第であり、上手く使えばこんな傑作に仕立てられるのだという円熟の境地を見せられた思いだ
私は慣れた読者だから見破ってしまったが、初心者では多分見抜くのは難しいだろうね
あともう一つ、私はCCの館ものや一族ものという設定に何の魅力も感じない性格なんだけど、この作品では冒頭に掲げられたあれも含めて設定自体がミスリードになっているのも好感を持った理由の一つ
まぁ一族ものという設定にこれ以上言うとネタバレになるから止めとこ

No.4 9点 toyotama
(2010/11/11 07:29登録)
物語の始まるところから仕掛けられたトリックはさすがクリスティ。
大富豪とその家族という物語が多い中、動機や犯人の設定もいろいろやってくれます。

No.3 7点
(2010/02/24 12:52登録)
リチャード・アバネシーの葬儀の終えた後から、すべての物語が始まります。遺言公開の席上でのリチャードの妹のとんでもない発言、そしてその翌日の殺人、さらに数日後の怪事件と、アパネシー家を中心とした事件が次々に発生します。
前半は被害者の近辺やその他アパネシーの一族への聞き込みを中心とした展開、中盤からはポアロが家族たちをリチャード宅に集めての長い大団円の展開と、やや単調なストーリーですが、その分を差し引いても十分に評価できる作品だと思います。

(以下、ネタバレ風)
典型的な意外な犯人モノなのかもしれません。私はなんとなく直感で気付いてしまいましたが、もちろん何の根拠もありません。仕掛けも全く見破ることはできなかったので、そのトリックや真相を知ったときはあ然としました。とにかくミスリーディングについては秀逸ですね。単調なストーリーにもわけがあったような気がします。どちらかというと、意外な犯人に驚かされたというよりも、ミスディレクションに翻弄されて楽しめたという印象が強いですね。トリックの実現可能性については疑問が残りますが、よく考えたものだなと感心もしています。この犯人、知恵もさることながら度胸もありますね。

No.2 8点 文生
(2010/01/19 14:28登録)
派手なトリックや複雑なロジックがなくても優れたプロットがあれは一流の本格ミステリが書けるという好例。
事件の真相を実に巧妙に逸らしていくミスリードの手腕に脱帽。
クリスティー晩年の円熟の味を感じさせる傑作。

No.1 6点
(2009/03/01 11:01登録)
クリスティー後期作品の中でも一般的評判の高い本作ですが、個人的にはそれほどの傑作とは思えませんでした。殺人が起こってすぐ、その手の可能性に気づいてしまったからかもしれませんが。
事件の基本的な構造が非常にシンプルなため、第2の事件は間を持たせるため無理に付け足した感じも若干します。首をかしげる手がかりも、納得はできますが驚くほどではありませんでした。(本書を読んでない人には意味不明な文になってすみません)
とはいえ、以上は期待が大きすぎたための不満であり、作品としてのできは悪くありません。
クリスティーはちょっと前にも似たパターンのアイディアを部分的に使った作品を書いていますので、それをさらに大胆に展開させて利用したのではないかとも考えられます。

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