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ミステリの祭典

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眼の気流

作家 松本清張
出版日1963年01月
平均点6.50点
書評数6人

No.6 5点 ボナンザ
(2023/12/31 23:01登録)
小人のままならない展開を描かせたら天下一品ですね。

No.5 6点 クリスティ再読
(2020/10/27 22:09登録)
60年代清張の短編集。全体的にミステリ色は薄めだが、下積みの鬱屈した男たちの情念が漲る、清張らしさ存分に発揮の短編集。読んだの中学生くらいだったんじゃなかったかしら....

「眼の気流」一応殺人事件と捜査があるのでミステリなんだけど、タクシーの運転手が妙に屈託して探偵マガイなことをする方のが、ミステリ的な興趣がある。目撃証言の謎はあるけど、結末は肩透かし。構成に失敗したのかな。
「暗線」不幸な生まれをした父の出生の謎を追って、家系調査をする話。山陰の山間の村の話で、古代史に造詣深い清張なのでたたら製鉄の話なども出る。同じ兄弟であっても、生まれの違いでその後の人生に大きな差が出てしまう不条理に、祖父の墓を訪ねようとした主人公は、やりきれない気持ちになってしまう....
「時計」は新聞代理店主とよくできた妻が、若い受付嬢の結婚に際して...という話。突き放したような話だが、これはこれで夫婦と男女関係の真理を突いているようにも思う。
「たづたづし」不倫の相手を山中で絞殺した官吏が、殺したはずの女が息を吹き返して記憶喪失になっていることを知る。皮肉な話だが、オチがついたようなつかないような、微妙なあたりが清張らしい。古歌を引いているあたりが、うまいところだなあ。
「影」売れっ子時代作家のスランプに、代作を提供した作家志望の男が、ともども転落する話。なぜかこの話、結構細かいところまで覚えていた。中学生だから、男女の機微がキモの他の作品はあまり覚えていないんだろうな...

少し前に80年代に流行作家だった女流の短編集が、今読むと風俗がとても古臭く感じたのと比較すると、清張は「より古い」のだけども、古臭さをさほど感じないのは、やはりさすがなものだ。陳腐な言い方だが、それだけ人間の普遍性を作品に昇華しているんだろう。

No.4 7点 まさむね
(2020/08/04 22:33登録)
 やっぱり清張短編はいいですねぇ。作者の女性不信が端々に表れている気がするのですが、単なる不信では言い切れない深みを感じます。④がベストで、②が続くか。
①「眼の気流」 序盤からグイグイ引っ張られます。後半は急ぎまとめた印象も。
②「暗線」 語り手が馳せる想いと、最後の心情の変化が印象深い。短い作品の中に複数の人生を感じさせる手腕。
③「結婚式」 男の幸せって何だろう。
④「たづたづし」 これも印象深い。絶妙な後味を残す好短編。真実はどうだったのか非常に気になる。
⑤「影」 現在の二人が作中で直接接触しない深さ、その余韻。

No.3 7点 ALFA
(2018/11/27 13:52登録)
清張の短編は、謎解きよりもミステリ風味のダークな人情噺に名作が多い。短い尺の中に犯罪に至る人間の心理やその背景、生い立ちまでが鮮やかに描かれて強い印象を残す。「天城越え」などはその代表だろう。
この短編集はいずれも謎解きの要素は薄く、中にはミステリ(犯罪)でないものもある。どれも主人公の暗い心象が描かれていて味わい深い。
表題作は本格推理小説の骨格を持った短編だが、味わうべきは犯人の暗い心象だろう。ここは「結婚式」と共通するかもしれない。ただ解決が思い付きと偶然に拠っているのが惜しい。
お気に入りは「たづたづし」。古語のタイトルと勧善懲悪に収まらないもやもやした余韻が味わい深い。
そして「影」。贋作(代筆)は清張お得意のモチーフだが、枯れたエンディングがいい。いささか通俗的ではあるが。

No.2 8点 斎藤警部
(2018/11/23 10:25登録)
眼の気流/暗線/結婚式/たづたづし/影   (新潮文庫)

怨念と犯罪のストーリーが巧みに躍動し0909(ワクワク)させる「表題作」と、強烈に暗く後ろめたいムードで押し尽くす「たづたづし」が何と言っても白眉。特に後者の、後を引く煙った薫りの力強さと言ったら無え。同じ暗闇話でもサスペンス以上に感慨がじんわり来る「暗線」も素晴らしい。「結婚式」「影」は本来ならちょっとした小噺を清張流に重く深く心理の底まで沈めた様な作品。後者はアンコールピースの味わいも。佳き短篇集と言えましょう。

No.1 6点 E-BANKER
(2017/09/08 23:17登録)
昭和38年(1963年)に発表された作品集。
~日常生活に潜む恐ろしい生の断層、現代の憎悪を抉る推理傑作集~とのこと。

①「眼の気流」=主人公となる「タクシー運転手」が語り手となる前半と、ある失踪事件を捜査する刑事の目線で描かれる後半。短篇とはいえ、まずはこの構成の妙に拍手!っていう感じだ。ひと昔前の刑事ドラマのシナリオっぽさはあるけど、特にラストが何とも切ない・・・
②「暗線」=時代を感じさせる暗いお話。奥出雲の山奥の村という舞台設定からして「重い」。自分の出自というかルーツって、そこまでして探りたいものなんだろうか・・・
③「結婚式」=芸能人や政治家が次から次へと○○文春に血祭りに挙げられる・・・そう「不倫」だ! 本編のテーマはまさしく「不倫」。昭和三十年代だろうが、二十一世紀の現代だろうが、男と女が絡み合えば、考えること&やることは一緒、ってことだろうね。
④「たづたづし」=個人的にはこれが一番ミステリーっぽくて好みかな。これまた「不倫」の果てに、我が身可愛さから不倫相手を葬り去ろうとする自分勝手な男。そんな奴には“文春砲”をお見舞いだ! というわけではなく、何だかよく分からない不透明なラストが待ち受ける。(どうせなら因果応報的ラストの方がよかったのだが・・・)
⑤「影」=いわゆるゴーストライターのお話。ゴーストはやっぱりゴーストってことが言いたかったのか? これまた切ないラスト。

以上5編。
やっぱり旨いですなぁー
特段目新しいプロットやトリックが披露されているわけでもなく、淡々と物語が進められていくわけなのだが、読み終わってみると、やっぱり「旨い!」「さすがに・・・」という形容詞が頭に浮かぶ。
これぞ一流作家の証なんだろう。

やっぱり回転寿司は回転寿司だし、老舗の寿司屋とは似て非なるもの。
そんなことも頭に浮かんでしまいました。
(相変わらずよく分からない表現ですが・・・)
もはや私の評価なんてどうでもいいのでは? なんて思ってしまいます。

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