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ミステリの祭典

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十二人の死にたい子どもたち

作家 冲方丁
出版日2016年10月
平均点6.17点
書評数6人

No.6 6点
(2024/03/06 20:29登録)
0番の移動の謎は解けませんでしたが、結末は予想通りでした。
読後感も悪くありません。

No.5 6点 HORNET
(2020/05/24 16:08登録)
 自死願望を持つ12人の若者たちが、発起人の企画に乗って廃病院に集まる。集まってすぐに実行に移せばそれで話は終わったのだが、部屋になぜか「13人目」の既に死んでいると思われる人間が横たわっていたことで、そうはいかなくなる。

 カタカナのキャラが12人、そして4階建ての建物内での動向、さらに敷地に来た順序や入室した順序のことにまで話がおよび、内容を理解するために巻頭の見取り図を何度も見返したりした。12人それぞれの事情や、キャラクターの違いによる揉めようはそれなりに面白く、読み進めるのに飽きることはなかった。
 ラストはミステリを読み慣れている人にとっては予想の範疇ではあるが、物語としてはこういう終わり方でよかったのだとも感じるところがあり、読後感はよいのではないだろうか。
 私は、「アンリ」が好きだったなぁ。

No.4 5点 sophia
(2020/01/30 22:59登録)
人の動きをただただ複雑にしたばかりで、謎が解けたときの爽快感がない。「ミステリー畑ではない人が頑張って作ったパズル」の域を出ない。解決編の話の流れがとても分かりにくい。真犯人(と呼びます)の名指しを最後に回すためでありましょうが、探偵役が不合理な話を敢えて進めていくので読者はいたずらに混乱させられます。しかもその肝心の真犯人の名指しのキレ味が悪い。9番のパートナーを特定する根拠も弱く、階段から突き落とした犯人を特定する論理もよく分からない。2人が屋上に一緒にいた理由も説明されていない。そして謎と作品のテーマがいまいち絡み合っていない。4番の喫煙とかゼロ番の運搬手段とかはそもそもがどうでもいい謎。過去に本屋大賞を獲った作家さんですが、ミステリーは書き慣れていないのが露わです。あと最後まで登場人物の名前が覚えられなかった。演出とはいえカタカナ表記はやめてほしかった。
追記 映画も観ましたが、原作で描写不足だったところが補足されておりよかったです。

No.3 7点 メルカトル
(2017/02/21 22:17登録)
本書を読むにあたって私が最も危惧していたのは、十二人もの登場人物をしっかり把握できるのか、誰が誰だか分からなくなるのではないか、ということでしたが、それは杞憂に終わりました。それぞれの少年少女が違った個性を持っており、異なる役割を果たしているので、混乱したり混同したりすることはないと思います。
またミステリとしてはどうなのか、ごく普通の文芸作品に近いのではないかとも懸念していましたが、意外にも本格ミステリとしての骨格がしっかりしており、安心して読むことができました。
十二人の少年少女たちの自殺願望の理由は様々ですが、いたって単純なものもあり、ややもすれば短絡的とも思えるため、説得力がなかったりします。しかし、若さゆえの直線的な純真さをもって真剣に死にたいと望んでいるのは理解できないでもないのです。
彼らは実行するか、議論するのかで内心は常に揺れ動いているはずなのですが、その辺りの人情の機微が描かれることはありません。なので、ややドライな印象を受けてしまいますが、そこに重点を置いてはいないようですね。


【ネタバレ】


結末は予定調和的であり、意外性はありません。
おそらくは誰もが予想するものではありますが、結論が出た後の少年少女の肩の力が抜けた姿がなんともほほえましく、これで良かったのだと安堵できることで、読後感が格段に良くなっていると思います。

No.2 8点 虫暮部
(2017/02/06 10:46登録)
 面白い。基本設定が判ったあたりで“こうだったらつまらないな~”と危惧していた通りの展開ではあったのだが、相応の説得力があり納得出来る結末だった。ただ、登場人物の移動に関する議論はチマチマし過ぎ。

No.1 5点 人並由真
(2016/12/05 18:59登録)
(ネタバレなし)
 物語の場がほぼ限定された、少年少女たちによる集団心中直前の推理劇。この趣向は400~600番台あたりのポケミスに散在してそうな懐かしい感じで、なかなか楽しかった。
 とはいえ中盤の推理部分は冗長すぎる。作中の少年少女たちが人生最後の状況で未明な謎を残しておきたくないという原動を作劇のコアに持ってきたのはうまいんだけど、イレギュラーナンバーの少年<ゼロ番>に関するロジックの立て方と手掛かりの掬い上げ方が細かすぎて疲れた。屋上やスニーカーのくだりまでは面白かったけどね。
 うまく行けば作中の複数の謎を立体的に呈示できたんだろうけど、各キャラクターの<死にたい動機>とあわせて、物語上の興味が相殺または分散されてしまった印象。
 ただまあラストはほぼ予想の範疇ながら、良い意味で期待どおりにまとめてくれたと思う。異才作家の破格のミステリとか期待しなければ、それなりに楽しめて相応に愛せる佳品ではないかと。

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