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32692. | 人並由真さんへ “交換殺人”の系譜 おっさん 2022/05/25 20:18 [雑談/足跡] |
人並由真様 本日付けの、フレドリック・ブラウン作品のご書評、楽しく読ませていただきました。 小生が大人ものの文庫でミステリを読みはじめた時代には、町の小さな本屋の棚にも、創元推理文庫のブラウン作品がズラーッと並んでいたのを、懐かしく思い出しました。タイトルに気を惹かれて買ったうちの一冊ですが、もう読後の記憶は薄らぎ、ストーリーなどは完全に忘れていました。 >『見知らぬ乗客』『血塗られた報酬』に続く、たぶん欧米ミステリ史上3冊目の交換殺人もの というのは、おそらく、我国のマニア読者の共通認識かと思いますが、じつは小生の知る限り、ハイスミスの『見知らぬ乗客』(1950)の前に一冊、英国作家Cの1941年作品(未訳長編)があり、ニコラス・ブレイク『血塗られた報酬』(1958)の前に、やはり英国作家Bの、1951年作品(これも未訳長編)が存在します。 作家名と作品名を伏せたのには、わけがあって……ハイスミス、ブレイク、ブラウンは、いずれも交換殺人という趣向を「クライム/倒叙」の形式で料理しているのに対し、前述の二作家は、「本格」の枠組みのなかで、“交換殺人”のトリックを結末まで伏せて書いているわけです。なので、その作家のその作品が交換殺人ものであると書くこと自体、ネタバラシになってしまうため、隔靴掻痒かもしれませんが、ご容赦下さい。 作家Bの長編は、話題の新人ハイスミスに対する、本格サイドからのアンサー(そのアイデアをミステリ作家ならこう書く)かも知れませんが、作家Cのマイナー作品をハイスミスが読んでいたとは、ちょっと考えにくい。もちろん、読んでいたとしてもハイスミス作品の価値が減じるわけではありませんが。 ただ、(暫定)オリジンとしての作家Cの功績を、きちんと書き残してあげられないのが、なんとも残念でなりません。 求む邦訳、論創社さん、というところでしょうか。 妄言多謝。 おっさん拝 |