皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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モトキングさん |
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平均点: 6.06点 | 書評数: 78件 |
No.23 | 6点 | 赤緑黒白- 森博嗣 | 2004/03/30 16:47 |
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Vシリーズは常に、凡々とした事件・トリックを舞台に、非常に個性的なマンガ的キャラが絡んでいくことで、魅力を発している。 シリーズ最終作となる今作でもこの法則は破られることなく、結局、最後まで肩の凝らないエンターテイメントとして平均点をキープした。 ただ個人的には、同シリーズの書評で何度も書いているが、もっとミステリに重きを置いた作品作りを望む。S&Mでは、高次元のミステリとキャラが生み出すドラマがあった。本シリーズは、トリック、キャラの双方で、薄いと言わざるを得ない。やはり、登場するキャラに合ったストーリーが、キャラ達の手で創られていくのだろう。つまり、森氏は自然体だったはずなのに、キャラ作りの段階でやや重厚性に欠けたということか。その証拠に本作のラストで例の天才が現れたことで、一気に文書が緊迫感を増した。本当にそのシーンだけ、スピード感とスリル感が突然に現れた。 あと、「林」には度肝を抜かされた。初出のときはいくらか気になったが、そのうち慣れてしまい疑問を全く持たなくなったトコでアレとは! きっとネタとしては完全なる確信犯だろうが、このネタを材料にした真相には、恐らく幾らかの振れ幅があっただろう。若しくは別にネタに使わず、そのまま流しても良いというような。 この他にも色々なネタを仕込んでる森氏の遊び心は、非常に素晴らしい。読者の興味という需要に見事にマッチした供給をする才能があるのだろう。 点数は、本シリーズ総括として。 |
No.22 | 8点 | 四季- 森博嗣 | 2004/03/25 18:20 |
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S&MとVシリーズの大同窓会。ファン以外は楽しめません。 というのも、この小説の面白みは、今までところどころに匂わせてきた両シリーズの関連性を、隅から隅まで明かしちゃうことにあるからです。 多分、まだ明かされていない謎もあると思いますが、それでもメインの人間関係が繋がっていく描写はファンには最高。 読み進むに連れ、「まさか」が「本当」になる感じが楽しいです。 ただ巻毎にメリハリがありすぎで、「春、夏」までは真賀田四季の生い立ちを追うような感じだけど、「秋」では他人の記憶若しくはフォログラフ以外では真賀田四季が一切登場せず、一転して「冬」では真賀田四季の天才的思考がそのまま文章の羅列となってランダムに綴られています。はっきりって「冬」は深い、が、つまらん。 一言で例えるなら、両シリーズまとめてのエピローグという感じ。つまり、前シリーズ読まなきゃ意味不明です。 で、点数は…単独ミステリの価値はゼロだけど、ファンチックにこれ↑ |
No.21 | 1点 | 朽ちる散る落ちる- 森博嗣 | 2004/01/06 16:10 |
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何でしょう?何なんでしょう?これは。 帯広告の文書はかなり過剰。宇宙密室ぅ〜? そんなんは、登場人物が文中で推理によって解くようなトリックにだけ言って貰いたい。 これは、私の思うミステリでは、絶対にない。 SF+スパイ+ミステリ系を中途半端に混ぜ合わせ、いずれのジャンルでも成功を収められなかったような駄作。 もしや、これが最終作の伏線的意味合いでも持っているのかな。 …そうじゃなかったら、本当にどうしようもない駄作だ。 ストーリーも面白くないので、個人的には今シリーズ最低です。 |
No.20 | 3点 | 捩れ屋敷の利鈍- 森博嗣 | 2004/01/06 15:48 |
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薄い。頁数も中身も。密室イベント絡みのファン感謝祭…でしょうかね。 メビウスの輪型の屋敷はいい発想でしたが、それだけ。その形状の特性を生かした某かが欲しかった。 相変わらず、保呂草というキャラから無理矢理ほじくり出すストーリー展開。 最早、保呂草の魅力だけですね。感じなければ切ないくらい凡作、かな。 |
No.19 | 3点 | 六人の超音波科学者- 森博嗣 | 2003/12/25 17:07 |
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久々に保呂草ネタがメインじゃない物語でしたね(初めてか?)。 ま、凡々凡作ですね。いや、ややマイナスか。 久々に超理系的舞台だったけど、S&Mには到底かないませんね。 やはり、そういう意味では、犀川という個人の存在は圧倒的だった。 作者は、紅子のキャラ作りに失敗したかな。…面白いが、全然好きじゃないな。 こういうキャラはトコトンやって、真賀田四季ぐらいにしなきゃ(笑)。 |
No.18 | 5点 | 恋恋蓮歩の演習- 森博嗣 | 2003/12/25 16:59 |
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このトリックはもう少し早い作品で持ってくるべきだった。 本当の冒頭を読んだだけで、真相以外の可能性は考えられなかった。それほど見え透いていた。 基本的なサプライズの仕組みは、「黒猫」と同じ。 いっそのこと、黒猫の次の次ぐらいで、やってしまえば面白かったかな。 実は泥棒、よりこっちの方がサプライズだし。 …なんか、保呂草という、作者にとって非常に便利な登場人物のおかげで、こういう保呂草ネタが氾濫してますね。 ま、それが狙いでこいつを作ったんだろうけど。でも、ちょっと作者はネタ枯渇気味かね。 でも、やっとこさシリーズにハマってきた。 とりあえず、最後までは読みたい。そう思わせるキャラ達だ。 |
No.17 | 6点 | 魔剣天翔- 森博嗣 | 2003/12/25 16:44 |
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率直に…。 このシリーズも5作目にして、やっと、まともなトリックを用意したな、という感想。 個人的に、このパイロット入れ替えのトリックは非常に良かったですね。 読者の目を逸らさせるのが上手い。 ちょっと無謀すぎる保呂草の猪突猛進ぶりが、恐らくミスリードなのでしょう。 みんな心配したことでしょうし(笑) 何か、この辺りから、保呂草がどんどん大胆な犯罪者になってくるな〜。 それほど手放しで素晴らしいとは思わないけど、久々に致命的な突っ込みどころが無く、正直嬉しいので、この点数。 |
No.16 | 1点 | 黒猫の三角- 森博嗣 | 2003/12/25 16:30 |
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まず絶対にこれだけは言いたい。 「このトリックはあり得ない」 もちろん、例のアレのことだ。幽霊を見たとかいうアレだ。 別に小説世界に限りないリアルを求めるわけではないが、小説家…それもミステリ作家が、作品として世に出して良いレベルではない。 …本当にため息。 それ以外は流石、森博嗣。キャラ映えの達人として、S&M好きをそのまま逃さず取り込もうとする少女漫画的キャラ満載である。 魅力ある会話。ストーリーも悪くないし、この犯人の動機の発想は天才的ですらある。 でも、…嗚呼、マジでため息。 あり得ないって。駄目だって。小説でも現実でもあり得ないって。やっちゃいけないって。 好きだからこそ、悲しい。…やっぱ採点はこうならざるを得ない。 |
No.15 | 6点 | そして二人だけになった- 森博嗣 | 2003/12/09 14:26 |
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良く出来た作品。ただ、トリックやストーリー展開は、そんなに目新しくもなく、水準以上の佳作という感じ。 森博嗣もS&Mシリーズで一度、叙述トリックをやっていたので、まあ、「叙述トリックもやる作者」という認識で読めばトリックは一目瞭然。 最後の結末というか「ねじれ」は、賛否両論あるが、森博嗣ならば、あの結末を作るだろうと思う。というか、あのラストが最も森作品っぽい。 この作品で特筆すべきは舞台設定。近年増えてきた海峡を横断する大橋梁の、いわゆるでかすぎるアバット部分…通称:アンカレイジに着目したのは素晴らしい。 近年は、古来から慣れ親しんできた「怪しげな洋館」とか「山奥にある旧家の大邸宅」とかをほとんど見かけなくなり、あまりに若い人たちにはなかなかに時代錯誤的なイメージが付きがちな本格モノだが、舞台を最新の技術力の結集である土木構造物に設定した点は、新鮮な試みだと言える。この分野でもこういった枠が広がっていくかも。さすが現役理系大学助教授というところか。 ただ、特殊な地形に立てられた高度なテクノロジーの集結物であるからこそ、一般にあまり馴染みが無く、説明的描写が厳しいかなとも思う。 それと、トリックのための「2つあるべき理由」が無理なく納得出来ることが、この舞台設定の一番の巧さだと思う。 |
No.14 | 5点 | 夢・出逢い・魔性- 森博嗣 | 2003/12/05 13:43 |
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本末転倒。 タイトルを思いついて、それに合うパスワードをつなげた結果、生まれた作品。 だからこそ、叙述の基礎をちょこっと使ってミステリにしてみただけのお話。 登場人物に魅力を感じなければアウト。 個人的にはキャラが好きなので物語として面白く読めた。 しかし…作者の中の創作意欲が向かう先とは、ミステリではないのだろうか。 |
No.13 | 1点 | 月は幽咽のデバイス- 森博嗣 | 2003/12/05 13:36 |
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余り述べる言葉を持てない。凄く好きな作家だった。 しかし、これはトリックが酷い。酷すぎる。 ミステリを舐めないで欲しい。 作者の生み出すキャラや台詞回しが好きだからこそ、言いたい。 |
No.12 | 9点 | 有限と微小のパン- 森博嗣 | 2003/12/05 13:08 |
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シリーズ10作の最後のパーツとして、このシリーズを傑作と言わしめた作品だろう。 ただ、本作単独での出来は可もなく不可もなく、かな。トリックは決して悪くないのだが、作者の方でそのトリック+解決に伴うサプライズを敢えて避けた印象が強い。 ミステリ作品単独としての読み応えより、やはり、読者の大半が求めていたもの…真賀田四季と犀川、お互いが抱える問題。この解決にこそ、今作の存在意義を見いだしたのではないか。 ただ、結局は、推し量れぬ天才二人の思考。解決する術もない。いや、むしろ、この問題の解決とは「不定こそが解」であるという、同シリーズのどこかに出てきた文中の言葉そのものなのかも知れない。 それと、The Perfect Insider と対をなす、このOutsider は、色々な点…真賀田博士の関わっている位置、メイントリックの構造、物語終了後のメイン登場人物の思考のベクトル等々…で正に鏡面のような2作であり、それがとても見事に感じた。 タイトルの見事さとして、よく「封印再度」や「夢・出会い・魔性」が素晴らしいと言う人が多いが、単に邦題と英題の音が合っていて、内容も遠からず暗示しているだけの2作より、この始まりと終わりの2作の方が、異常とも言えるくらいの作者の狙いを感じた。 つまり、作者が真賀田四季を必要とした理由とは、この10作の「起」と「結」を繋ぐキーワードが欲しかっただけなのかも知れない。 色々コメントさせて貰ったが、個人的には大変面白かった。 「天才」と位置づけた人間、真賀田四季は最高。ミステリに限らず、他のどんな作品でも、こんな人物描写は見たことない。 単独ミステリとしては7点程度だが、シリーズと犀川と真賀田博士を生み出してくれた作者に、この点数。 |
No.11 | 6点 | 数奇にして模型- 森博嗣 | 2003/12/05 11:19 |
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事件発生から、各自の勝手な推理合戦。 この導入部は良いですね。ミステリ好きならこの辺は、普通に好ましく読めます。 ただこの時期の森作品に多いように、結末に収束するにつれ、映画的な映像と、活劇が盛り込まれてきます。ここは好みでしょう。 真相解明〜解決にかけては凡作ミステリ(ややマイナスかな)ですね。 まあでも、作者の独りよがりについていけるくらい、読者のキャラへの入れ込みが強いようなので、結局は成功なのでしょう。私も犀川は好きです。 あと、「有限と微小〜」へと向かう犀川と西之園の心の変遷を描く上でも、こういうエピソードを積み重ねていく必要があったのだとも、少し思います。 |
No.10 | 2点 | 人形式モナリザ- 森博嗣 | 2003/08/18 16:46 |
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完全に同感。これ以降は堕落の一途。 味をしめた、というのか。ミステリ読者の「程度」を誤認してしまったというのか。 私は前シリーズが好きだったので敢えて言いたい。 勘違いしないで欲しい。ミステリとしての基盤が在ってこそ、その上にキャラクターが生きていた前シリーズが読者に受けたのだ。本小説以降のミステリ的内容は、誰がどう見ても手抜きにしか見えない。やっつけ仕事だ。 キャラの魅力は問題ないのだから、ミステリの部分について、初心に戻った真摯な姿勢で、創作に取り組んで貰いたい。 ミステリの創作は、そこが最も心血を注ぐ部分で、だからこそ選ばれた者にしか書き得ない。商品として、その才がない(だろう)我々が買う価値を感じられるのだ。 森作品といえど、このミステリの基本原理を崩すことは出来ない。と、思う。 だから皆が低評価なのだ。 |
No.9 | 7点 | 今はもうない- 森博嗣 | 2002/09/13 11:47 |
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本作の肝は、その構成。メインのストーリーで繰り広げられるトリックや人物描写や、そんな全てを、この構成作りの一要素として捉え、徹底している。だからかも知れないが、メインストーリーだけを抜き出すと、ミステリとしての出来は、かなり凡作。 そして、この構成におるサプライズを成立せるための条件は、読者が本シリーズ(S&M)の他作をある程度読んでいるということ。確かに万人向けではないが、当時から結構売れていた本シリーズにおいては、ビジネス的にも需要的にも、確かにアリなのだろう。 ちなみに、私は大のファンになっていたので、途中、その可能性に気づいてしまいながらも、結構面白かった。 |
No.8 | 7点 | 夏のレプリカ- 森博嗣 | 2002/09/13 11:37 |
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まず思うのは、「幻惑の〜」と同時並行した事件として扱う必要が全くない、ということ。章立てが偶数オンリーとか奇数オンリーとか、一見奇抜で面白いのだが。 内容自体は、面白い。謎自体、何か無理矢理、犀川と萌絵が出なくても良いと感じる面もあるが、ラスト近くのチェスのシーンで、萌絵が真相に気づくシーンなんかは、劇的で、絵的で、しかし小説でしか描写し得ない、素敵な文章だと思う。そういう意味では、やはりS&Mシリーズで良かったかな。 あと、作品冒頭に展開する萌絵の親友の自宅と別荘との2シーン進行に隠された叙述トリックも、良くできていて面白い。 総合的に見て、シリーズでも上位にランクするだろう。 |
No.7 | 6点 | 幻惑の死と使途- 森博嗣 | 2002/08/15 17:20 |
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他作品と比べ、間違いなくフェアのレベルが低い。ただ、その「森博嗣がまさかこんなことしないだろう」が、正に読者の盲点となり、つまりトリックとして作用したからこそ、この作品の「転」が見事に決まっていると言える。 しかし、この作品の良さは、そんな些末なところではなく、もちろん作中のトリックでもなく、恐らく、終盤、怒濤のように展開される一人の男の人生観と、それに触れて叫ぶ犀川に集約されるだろう。 |
No.6 | 5点 | まどろみ消去- 森博嗣 | 2002/07/03 17:23 |
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他の森作品から得られるのと同様の満足感を得ようとすると、肩すかしを食らう。 他作品との関連といえば、S&Mシリーズのレギュラーキャラが登場する1つのエピソードのみ。そして、恐らくミステリらしいミステリも同作のみ。 幻想小説? サスペンス? サイコ? ・・・そんな感じ。起承転結の「転」は全作とも見事。作者はここが小説のポイントと思っているのかも知れない。もしかしたらミステリのポイントだとも…。 個人的にはあまり良くなかった。 |
No.5 | 6点 | 封印再度- 森博嗣 | 2002/05/16 16:16 |
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これミステリなのか、な。印象的には、「学研と科学(小さい頃こんな本を読んだことが…)」とかに連載してそうな科学読み物。人が死んでいて、かつそれが殺人によるものだから、まあ子供向けではないけど。 トリック的には最悪に近い。例えば、DNAにおけるアミノ酸の配列(これは本作の内容とは全くリンクしていません)がトリックを理解する上で必要な知識だとしても、そんな専門的知識のない一般大多数の読者にとっては、それがトリックだなんて言われても、意表を突く突かない以前の問題。そんなの、常識的な知識じゃないからね。大げさに言えば「実は登場人物のAさんは壁を通り抜けられるんです!」などと、最後に説明された感じ。 まあ、客観的には以上のとおりだと思うけど、でも、個人的にはかなり好きですね、これ。シリーズ他作よりは劣るけど、また、人それぞれ相性もあるけど、私にとって本作は、全く飽きさせない、非常に魅力在るキャラの作り出した面白い小説と思えます。でもやっぱりミステリではないかもね。 |
No.4 | 6点 | 笑わない数学者- 森博嗣 | 2002/05/16 16:00 |
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ミステリとしては、ハッキリ言って凡作。大仕掛けなトリックには、欠片ほどの迫力も謎もない。恐らく意識してだろうが、メインのキャラを映えさせるセリフのやりとりは、非常に非日常の香りがして、こちらのほうがよほど難解なミステリといえる。 しかしながら、この数学的でいて実は哲学的な禅問答のようなセリフこそが、森作品をヒットさせた最大の秘訣だろう。理解できそうで出来ない魅力とでも言おうか。 ちなみに、そんな意向にまんまと嵌った私は、大の犀川ファンです。で、この点数。 |