皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
Tetchyさん |
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平均点: 6.73点 | 書評数: 1631件 |
No.431 | 5点 | パリから来た紳士- ジョン・ディクスン・カー | 2009/01/04 00:38 |
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表題作は最後の意外な真相も含め、楽しめた。
同趣向として、「黒いキャビネット」も面白く読めた。 ただ総体的には各編が地味なように感じる。 フェル博士やHM卿に加え、マーチ少佐物の短編が収められているものの、小粒な感じがしてしまう。 |
No.430 | 5点 | 幽霊射手- ジョン・ディクスン・カー | 2009/01/02 22:21 |
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このぐらいまでなら読み物として成立していると認められる雑多な作品集。
「B13号船室」は小さい頃、似たような怖い話を読んだっけなぁ。 表題作のトリックにちょこっと感心した。ちょこっとだけだけど。 |
No.429 | 3点 | ヴァンパイアの塔- ジョン・ディクスン・カー | 2009/01/01 22:55 |
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ラジオ・ドラマの脚本を集めた異色短編集。
従って地の文が無く、登場人物同士の会話だけで成り立っているため、読み易く、テンポも良い。 が、しかしもはやそれまで。 各々のプロットは興趣をそそるものではなかった。結論するに、全く以って本書はカーマニアのコレクターズ・アイテムに過ぎない。 『赤後家の殺人』や『死が二人をわかつまで』の原形と思われる作品や別の短編で使われたトリックが散見したのもマイナス要因。 |
No.428 | 4点 | 仮面劇場の殺人- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/31 18:16 |
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確かに短編で同様のトリックがあり、しかもチェスタトンの某有名短編でも同様のトリックがあるので、新味はない。
そして起こる事件はそれ一つのみだから、私も冗長さを感じたのは全く同感。 本筋から関係のない脱線気味の笑劇もあり、カーのサービス性がどうも悪い方向に働いたようだ。 |
No.427 | 5点 | 依頼人の娘- 東野圭吾 | 2008/12/30 23:04 |
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内容は基本的にオーソドックスで2時間サスペンスドラマ用のストーリーとも云える。私は特に政財界のVIPのみを会員とする調査機関ということで、『家政婦は見た!』シリーズのようなテイストを感じた。
この頃の東野は『鳥人計画』以降、『殺人現場は雲の上』、『ブルータスの心臓』、そして本作とノベルスで上梓されたミステリが連続して刊行されており、逆に東野氏はキオスクミステリに徹して軽めの作品を書くことを意識していたようだ。 生活の糧を得るためとしてこういうライトミステリに手を出さざるを得ないのが当時の新進作家の状況であったのは十分理解できることだ。 したがってこの手のミステリに読書を趣味とする人間やミステリ愛好者があれこれいちゃもんを付けるというのは全く筋違いという物だろう。 が、あえてその愚を犯すならば、やはりもう少しミステリとしての熱が欲しかったなぁと思う短編集だ。 |
No.426 | 5点 | 死が二人をわかつまで- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/29 23:05 |
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ストーリー展開は実に巧みで読者をぐいぐい引っ張っていく。
まず婚約者が毒殺魔ではないかという情報を聞いた当事者の周辺で実際にその毒殺事件が起き、次は我が身!?と疑惑の渦中に放り込まれていく。 そしてその進言をした病理学者の意外な正体をフェル博士が明かす、とここまでは実に面白い。 しかし物語はそこから失速してしまう。 特に真犯人は納得行かない。自ら首を絞めるようなことをしているのだから、全く以って論理的ではない。カーの諸作には犯人の意外性を重んじて、人間の関係性や行動心理をうっちゃることがよくあるが、本作もまたその1つ。 そして延々と説明がなされる密室殺人のトリックは図解が必要。 長らく絶版となっていた作品のようやくの復刊はなんとも味気ないものになってしまった。 |
No.425 | 7点 | エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/28 14:31 |
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英国の犯罪史上のミステリといえば、やはり切り裂きジャックが一番に思い浮かび、本作で取り上げられているエドマンド・ゴドフリー卿殺害事件については日本の読者には馴染みの薄いものであろう。私自身、この本に当たるまで全く知らなかった。
まず驚かされるのは登場人物表に記載された人物の多さだ。なんと75名!しかしそれにも関わらず、登場人物の混乱は起きなかった。それぞれに個性があり、またカーの書き分けが素晴らしかったのだろう。 もっとも驚かされるのは犯罪調査委員会の委員長の横暴ぶり 非常に非人道的で、自分の意に沿わない関係者を平気で脅迫する。 つまり裁判も公平なものでは勿論なく、証人、被告人が事実を告白しても、その者がプロテスタントではなくカトリックならば、嘘をついている、証言は出まかせだといって取り上げないのだ。いやはや、ものすごい時代である。 本作は正確には未解決事件の真相を探るノンフィクション物だとして読むよりも、17世紀のチャールズ二世政権時代を語った歴史書として読む方が正しいだろう。この事件の真相は?というよりもこの事件が当時イギリスに何を起こしたのか? カーの、未解決事件の推理力は元より歴史物作家としての技量の高さを知る上でも貴重な作品だろう。 |
No.424 | 7点 | 深夜の密使- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/27 20:47 |
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最初は読みづらくて、難儀したが、やはりカーの歴史物は名作が多い。
一般的にはあまり知られていない作品だが、実に痛快な読み物になっている。 ただカーの作品だとイメージして読むと、期待外れになるだろう。 どちらかといえば、冒険活劇物に近いので、大掛かりなトリックや怪奇性はほとんどないので、ご用心を。 |
No.423 | 7点 | 眠れるスフィンクス- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/26 22:28 |
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読後にこの題名の示唆する意味が仄かに立ち上って来る心地良い余韻・・・。
事件は小粒だが、物語に二面性を持たせているところを高く買う。 こういう一見、何の変哲もなさそうな事件なのに何かがおかしいというテイストがセイヤーズを髣髴とさせており、カーの中でもちょっと珍しい部類に入る。 しかもこれが冒頭述べたようにこの謎めいた題名の意味を徐々に腑に落ちさせる所もカーらしくなく、手際が良い。 |
No.422 | 5点 | 黒い塔の恐怖- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/25 14:56 |
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通常の短編2編に加え、ラジオドラマ版短編2編にシャーロック・ホームズのパロディ1編、エッセイが2編に江戸川乱歩の有名なエッセイ「カー問答」が収録された、雑多な内容。
それぞれの短編の導入部は面白いものの、読後感は普通ないし佳作といったもの。 乱歩の「カー問答」がお宝といえばお宝か。 まああ、コレクターズアイテムであるのは間違いない。 |
No.421 | 3点 | 亡霊たちの真昼- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/24 23:55 |
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カーの晩年の作品は明らかに勢いが衰えており、もはや物語としての興趣すら湧いてこない。
2人のブレイクという名の男が出逢う物語でありながら、その設定を全く活かしきれていない。 とにかく物語に起伏がないのだ。 それでも最後の最後にちょこっとだけ救われるものがあった。 ほんのちょこっとだけだけどね。 |
No.420 | 1点 | テニスコートの謎- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/23 23:20 |
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これはひどい・・・。
雨に濡れたテニスコートの真ん中に横たわる死体。しかも周囲には発見者の足跡しかないという、傑作『白い僧院の殺人』の向こうを張るような不可能状況なのに、このトリックはひどすぎる。 しかも犯人は奇抜さを狙いすぎて全く納得の行くものではない。解けんだろ、普通! また早々に事件は起きるのに、そこからが回りくどく、読中退屈だったのもマイナス要因。 |
No.419 | 4点 | 疑惑の影- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/22 23:08 |
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死が二人をわかつまで』、『火刑法廷』でも使われる、愛する女性が毒殺魔では?というカーの作品ではよく見られる内容だ。
最後に判明する犯人の趣向も同作者のある作品と同じ傾向にあり、どうも複数の作品をミックスして作ったような感が否めない。 それよりも本作で登場する弁護士バトラーが生意気でフェル博士がサブキャラクターに甘んじているのも、この作品の評価が自分の中では凡作と思える要素なのかもしれない。 しかし最後に明かされる意外な真相は、かなりぶっ飛んだ物。ちょっと飛躍しすぎだろう。 この真相を「面白い!」と受け入れられる人は、カーがとことん好きな、海のように心が寛容な方に違いない。 |
No.418 | 4点 | 猫と鼠の殺人- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/21 13:50 |
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被告人に容赦なく死刑を下す血も涙もない判事が、自ら殺人の容疑に立たされるという趣向はドラマチックでいいのだが、この作品はそれだけのような気がする。
この判事が窮地に立たされ、改悛するといった人間ドラマが見られるわけでもなく、最初から最後まで嫌なヤツであるから、読者の感情移入を注ぎにくい人物になっており、自然この判事が主張するような無罪をいかに証明するかという方向にどうも乗っていきにくい。 で、本作ではまたもトンデモ真相が明かされる。こういういかにもありえそうに思えない真相がこの頃には多いのかもしれない。『仮面荘の怪事件』でも同様の感慨を抱いた。 で、真犯人を知るにあたり、カーのやりたかった趣向が見えてくる。ま、これで溜飲も下がるようなものだが、もう少し何かが欲しかった。 |
No.417 | 5点 | 神の子の密室- 小森健太朗 | 2008/12/21 00:21 |
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本書は前書きにも書かれているように小森氏が調査に携わっている1945年にエジプトのナグ・ハマディで見つかった古文書群のうち、イエス・キリストについて書かれた雑記を基に物語形式にされたものだ。小森氏によれば、他の記録に関しては公表されているのに、このイエスに関する記録については50年経った今(1997年当時)も公開される模様がないので彼はミステリという体裁を取って公表しようとしたのが本書に当るとのことだ。
その中で本書はあの有名なキリストの復活について謎解きを行っている。 しかしこの解明された謎の真相が、なんとも陳腐だといわざるを得ない。まさしくこの謎はそっとすべき謎だと云いたい。 意気込みは買うが、突かなくていい藪を突いてしまった、そんな読後感が残る作品だ。 |
No.416 | 6点 | ネヌウェンラーの密室- 小森健太朗 | 2008/12/17 22:42 |
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古代エジプトの遺跡の中で起こる連続殺人事件。
そう聞くと誰もが殺人事件の謎解きを連想するだろう。私もそうだったが、さにあらず、これは“ミステリ”というよりも“ミステリー”の方が正解と云える作品。 つまり本作で主眼となっているのは遺跡に仕掛けられた殺人装置の謎解きなのだ。 こういう趣向であれば、本作の題名は明らかに不適切であろう。 “密室”を冠していながら、実は王墓に残されたパピルスの暗号解読が主眼であるから、ここは『ネヌウェンラー王の墓の謎』という風にすべきではないだろうか? 本作の主眼となっているパピルスの解読、古代エジプトの薀蓄などは知的好奇心を満たすものであるだけに、この違和感がなんとも勿体無い。 |
No.415 | 6点 | 三つの棺- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/16 22:30 |
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カーの傑作として名高い本書だが、オイラとしては微妙な読後感だった。
まず真相があまりに突飛過ぎて、その離れ技の凄さに信じられない思いが今もしている。再読の要ありだ。 とはいえ、やはり2つの殺人、特に第2の殺人はかなり危ういバランスで成り立っているといわざるを得ない。 なんとも凄い偶然ではないだろうか? 実にきわどい。 そして本作でもカーは作品の外側ですら読者にミスディレクションを行っている。 ネタバレになるので伏せるが、これが実に有効に働いているのだ。 しかし密室講義には笑った。特にフェル博士の爆弾発言が。 |
No.414 | 5点 | 夜歩く- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/15 22:55 |
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カーのデビュー作ですが、もうこの頃からカーだ。
怪奇・オカルト趣味に溢れている。 野心溢れる作品だが、やはり若書きの荒さが目立つし、なにしろ文章が読みにくい(訳者の筆にも寄るのだろうけど)。 そしてあの最後のサプライズをどう受取るかで評価も分かれるだろう。 私はカーをある程度読んだ後に本作を読んだので、まあカーらしいんじゃない?と思ったが。 |
No.413 | 9点 | 火刑法廷- ジョン・ディクスン・カー | 2008/12/14 17:19 |
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カーの作品で何から最初に読もうかと人に面白い本を訊いてみると、恐らくいくつか挙げられる作品の中にこの作品が挙げられると思う。
その時点で読んでも、確かに面白いが、本作はやはりいくつかカーを読んだ後で読む方が断然面白い。 この作品は怪奇・オカルト趣向の本格ミステリを書くカーがこういう作品を書いたという事に最大の驚きがあるからだ。 しかし本作はカーらしからぬ、実に細やかな構成が成されており、後で読んでみても、本格ミステリともホラー両方とも読めるのだ。 で、逆にカーはそれがために多少強引な解釈も入れており、しかも全てを合理的に解決するわけでなく、あえて曖昧に残している記述も見られる。 逆にこれが最後のサプライズに説得力を持たせてくれるわけだ。 ポーを開祖とする本格ミステリ、つまり今まで怪奇現象だと思われていた不可解な出来事が、最後に実に論理的に解明される小説を敢えて本格ミステリの意匠をまとって、再び怪奇の世界に戻すカーのこの傑作はポーに対する敬意を表した返歌であるのかもしれない。 |
No.412 | 6点 | 顔に降りかかる雨- 桐野夏生 | 2008/12/14 00:26 |
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ミステリを読み慣れた人ならば、この真犯人は容易にわかったのではないか?
私は結構早い段階で解ってしまった。 上手さを感じたのはネクロフィリア及び性倒錯の世界をモチーフにしたアングラパフォーマンスなど、読者の心に揺さぶりを掛ける要素を取り入れた事と失踪人である耀子が行ったベルリンでの取材を物語に盛り込み、膨らみをもたせた事。 ただ1作目ではそれぞれの登場人物がステレオタイプに感じて、さほど魅力を感じなかったなぁ。 特に肝である失踪人宇佐川耀子の存在がもっと魅力的に浮かび上がるかと思ったら、結局訳のわからないコンプレックスの塊のような女性でしかなかったというだけで、陳腐な感じを受けたのが痛かった。 |