皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
Tetchyさん |
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平均点: 6.73点 | 書評数: 1602件 |
No.402 | 4点 | 雷鳴の中でも- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/30 17:38 |
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シンプルな内容に17年前の事件を絡め、さらにナチスの影も絡ませてと、ガジェットに今回も凝っているが、内容的にはなんともメリハリがなく、退屈この上なかった。
読むのに疲れた上に、カタルシスもなく、正にコレクターズ・アイテム。 |
No.401 | 4点 | 髑髏城- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/30 00:57 |
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確かに犯人は解らなかった。
カー特有の怪奇趣味が横溢してもいる。 秘密の通路も今回は多めに見よう。 が、しかしそれら全てをもってしても、こちらの知的好奇心をそそらなかった。 メイルジャア失踪のトリックの真相は荒唐無稽すぎる。 ××は万能じゃないんだぜ。 |
No.400 | 7点 | 喉切り隊長- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/28 22:19 |
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本作はカーのもう1つの貌とも云うべき、歴史ミステリの好編である。
文庫背表紙の梗概には音もなく忍び寄っては兵士を一突きに殺害する通称「喉切り隊長」の正体とは?といった本格ミステリ色豊かに表現されていたためてっきり犯人捜しが主眼だと思われたが、ところが寧ろそっちの方は物語としてはサブ・ストーリーとして流れていき、主眼はアラン・ヘッバーンのフランスにおける諜報活動にあった。 このアランの諜報活動のスリルは『ビロードの悪魔』を髣髴させる出色の出来。 本来ならば8点の評価を与えたいのだが、「喉切り隊長」の正体が強引過ぎる(と思われる)点と、結局「喉切り隊長」の殺害方法の不思議さについてなんら解明がされていない点の2点において1点減点とした。 |
No.399 | 8点 | レーン最後の事件- エラリイ・クイーン | 2008/11/27 18:11 |
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今までの悲劇3作品と違い、本作はシェイクスピアの稀覯本探しと失踪人捜しといった、殺人事件の謎を解く本格ミステリというよりもロスマクなどの私立探偵小説に似たテイストで物語が繰り広げられる。
謎が1つ解けると、また新たな謎が出てきて、さらに捜索を進めると新たなる人物が次々に出てくるので、クイーンの諸作のような趣向で読むと何が謎なのか、焦点がぼやけてしまう。 しかしそれでもやはりクイーン!カタルシスを最後にもたらせてくれた。 特に冒頭の人物の正体を解き明かすロジックは、またこの手かと思ったが、実に論理的で淀みがない。こういう一見推理とは無関係だと思われる情報が実は有効な手掛かりだったというテクニックがクイーンは心憎いほど巧い。 しかしオイラも負けてはいないぞ!本作でサム元警視に預けられた封筒に書かれたあの暗号、見事解き明かしましたぞ! で、最後の事件に相応しい結末を迎えるのだが、その動機となる隠された謎がちょっと弱いのが難点か。これは家名を重んじる国民だからということで理解するしかないのだろうけど。 たった2年で書かれた4作しかないこのシリーズだが、その探偵の名と作品は今後も残り続けるに違いない。この結末で逆にレーンという人物の謎が深まった、そんな思いをした。 |
No.398 | 3点 | 剣の八- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/25 22:27 |
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カー作品の中でも、あまりいい評判を聞かない作品で、確かに正直何をやりたかったのか、よく解らない。
実は、フェル博士物でありながら、終わってみれば本格ミステリでないというのが最大の特徴だろうか。 しかも本作ではフェル博士以外にも、『不可能犯罪捜査課』のマーチ大佐というもう1人の名探偵も出演しつつ、さらにヒュー・ドノヴァン・シニアという元犯罪研究家、その息子の大学で犯罪学を専攻している刑事の卵、それに加え、スタンディッシュ大佐の出版社お抱えの推理小説作家ヘンリー・モーガンという、まさに探偵のオンパレードなのだ(とくにヘンリー・モーガンのイニシャルがH. Mというのがまた面白い)。 なのに、本格ではないという実に奇妙な作品。 結局やりたかったのは、「船頭多けりゃ、船、山へ登る」っていう趣向だったのかしら? |
No.397 | 4点 | アラビアンナイトの殺人- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/24 22:25 |
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1つの事件について、三者三様の証言があり、そのどれもが微妙に違っている。その相矛盾した内容を基にフェル博士が真相を突き止めるという趣向だが、いかんせん長すぎ!
また事件がさほど魅力的でないのもあって、つまらない話を三度も聞かされる苦痛すら感じてしまった。 題名のアラビアンナイトは大して意味がなく、事件の舞台となる博物館にアラビアからの骨董品が展示されており、凶器がアラビア風の短剣であったことに由来する。 あっ、もしかしてこれはカー版国名シリーズ!? |
No.396 | 2点 | 囁く影- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/23 22:34 |
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いやあ、結局、この物語で語りたかった事は何なのか、よく解らなかった。
不可能状況、不可解状況を作り出すためにわざわざ登場人物達を歪曲したような感が強く、興醒めした。 吸血鬼云々の件も、強引に怪奇色を出しているような、取って付けた感が強いし・・・。 物語に牽引力があれば、もっと面白く読めたのだろうけど。 |
No.395 | 7点 | コミケ殺人事件- 小森健太朗 | 2008/11/22 14:34 |
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1994年刊行の本書。当時はまだオタクに対する偏見が強かっただろうからその内容に生理的嫌悪感を示す人も多かったかもしれないが、現在ではその認識も改善されており、逆に今頃に読めば案外一般的なミステリ読者にもすんなりと受け入れられるかもしれない。
本作はメタミステリを得意とする作家らしく、なんと同人誌が丸々作中作として盛り込まれている。 7人の同人誌サークル員が寄稿した『ルナティック・ドリーム』なる美少女戦隊物の最終話を予想したその内容は論文体、ホラー小説、ペダンチック溢れる小栗虫太郎風ミステリ、やおい風味小説と、ヴァラエティに富んでおり、この作者の正に独壇場である。そしてそれらがなかなか面白いのだ。 本作ではどんでん返しも盛り込まれているが、逆に真相が覆るたびに明かされる真相がパワーダウンしてしまうのが瑕か。 私としては一番最初の真相が正にこの作品で扱ったコミケ、オタクの世界をもっとも具体的に現しており、チェスタトン的な狂人論理に通ずる物があり、結構好きなのだが。 一般のミステリ読者でも推理出来るよう、一番ケレン味のない真相が本当の真相になってしまっているが、本作ではあえてコミケという特殊状況ならではのケレン味を大事にした方がよかったのではないかと思った次第。 |
No.394 | 8点 | 帽子収集狂事件- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/21 23:27 |
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これはひたすらその突拍子の無さに驚愕した作品。
当時ミステリ初心者だった私は、フェル博士が導いた真相に唖然とした。 こんなこと考えるのは、カー、ホンマ、アンタしかおらんわ! バカミスともいうべき作品だが、こういうケレン味が読後十数年経っても、妙な味わいを残させる。 しかし原題は“The Mad Hatter Mystery”。これはクイーンの『Yの悲劇』と何か関係があるのだろうか? |
No.393 | 9点 | 曲った蝶番- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/20 22:28 |
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カー作品でベスト3を選べと云われたら私は躊躇なくこの作品を選ぶだろう。
本作はカーのケレン味がふんだんに盛り込まれており、しかも驚愕の結末を迎えるという傑作だ。 とにかく導入部も素晴らしい。 イギリスの貴族の許に現れた1人の男。その男こそ、実はこの貴族の正統なる後継者であるというのだ。そして彼の語るタイタニック号沈没にまつわる人物入替り劇の話など、物語性にも富んでいる。 そして本作では「開かれた密室での殺人」とも云うべき、貴族の邸の庭で衆人環視の下、殺人が行われるのだが、この真相が想像するだにおぞましい驚愕の内容。 はっきり云って、この謎を解ける人はいないだろう。 中にはバカバカしくて唖然とする人もいるかもしれない(いや、ほとんどがそうかも?) しかし私はこの真相をヴィジュアル的に想像した時になんともいえないおぞましさを感じ、読後しばし呆然とした。 好きな人は好きだし、隠れた傑作とも云われる作品だ。 |
No.392 | 3点 | ローウェル城の密室- 小森健太朗 | 2008/11/19 19:58 |
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本書は当時弱冠16歳で乱歩賞最終選考に残り、落選した著者の幻のデビュー作である。
その特異な設定ゆえに選考会は賛否両論に分かれ、喧々諤々の論議が繰り広げられたとかいないとか。 なにしろ本作の主人公は少女漫画の世界に入り、その漫画の世界で起こる殺人事件を解決することになるという、なんともアクの強い作品である。 で、驚天動地の結末というのが本書の売りだったのだが、この真相は解ってしまった。 というよりも「まさか・・・じゃないよなぁ」というのが真相で呆けてしまったというのが正確なところ。 私にしてみれば誰もが思いつくがバカバカしいと思って破棄するアイデアを16歳の若さで作品にして、応募してしまった、作者の若気の至りの結晶としか思えないのだが。 これは乱歩賞を受賞しなくてよかったと、読後に思ったのはそんな感想だった。 |
No.391 | 5点 | 死時計- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/18 23:01 |
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本作はカーの語り口がスムースでなく、正直きちんと整理されているような印象はない。従って読書中、頭の中に霧が立ち込めたまま、終わりまで来てしまった、そんな感じがした。
事件自体もこじんまりとしており、佳作。 以下ちくっとネタバレ。 ただ、この作品はやはりアンフェアだと思う。 一番冒頭で探偵自身で語られている、ほぼ証言に近い内容が後半になって覆され、それがそのまま犯人に繋がるのだから。 |
No.390 | 4点 | バビロン空中庭園の殺人- 小森健太朗 | 2008/11/17 22:47 |
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本作では古代バビロニアの空中庭園で起きた王女の消失事件と、現代の大学の<空中庭園>と呼ばれる学舎の屋上で起きた教授の墜落事件を扱っている。
現代の事件は、オーソドックスなトリック物。 しかし古代の消失事件の真相はなんとも歯切れが悪い。作者が自分で設定していて、途中でうっちゃってしまった感じだ(途中の記述に矛盾があるし)。 自分の身の回りのことと興味ある学識で一本仕上げましたといった感じのミステリ。 |
No.389 | 7点 | 死者のノック- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/16 14:52 |
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大学内の各所で起きるいたずら事件がエスカレートし、ついに殺人事件までに発展して、フェル博士が乗り出すといった内容。
肝心の密室トリックに矛盾が在るといわれる本書。確かに読んでいる最中はどっちが表でどっちが裏か、ゴチャゴチャになりますが、私は最後の犯人に至る推理が、理路整然としている感じがあり、意外と好印象です。 |
No.388 | 3点 | ニューゲイトの花嫁- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/14 22:54 |
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死刑囚が一転して無罪になり、自分を死刑に追いこんだ人物を捜し出すというのが、まずアイデアとして秀逸。
この主人公が無罪放免となる法制度は1815年当時のものだったのかどうか知らないが、通常こういうのはタイムリミットサスペンスになりがちなところを敢えて避けるところにカーのカーたる所以があるかなと思った。 しかし他の歴史ミステリに比べると小粒感は否めない。もう少し捻りが欲しかったな。 |
No.387 | 7点 | 火よ燃えろ!- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/13 23:48 |
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カーが後年、力を入れた時代・歴史ミステリは佳作が多く、これもその中の1つ。
主人公がタイムスリップして歴史上の謎を解くという趣向は『ビロードの悪魔』と同様で、二番煎じのような感じは否めない。 が、本作はそれを逆手にとって、読者をミスリードすることに成功している。 こういうちょっとしたケレン味が歴史ミステリを面白くするという好例。 |
No.386 | 1点 | 血に飢えた悪鬼- ジョン・ディクスン・カー | 2008/11/12 19:40 |
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あまりにも題名から想起される内容とはかけ離れていて呆気に取られてしまった。
時代ミステリであるがため、当時の世俗背景を甦らすのに腐心しているようだが、登場人物が全く活写されていない。 メイントリックはルブランでお馴染みの使い古された手法。 コレクターズ・アイテムですな。 |
No.385 | 9点 | 死刑判決- スコット・トゥロー | 2008/11/11 23:04 |
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死刑囚が執行間際になって無実を訴える。果たして彼の云う事は真実なのか?
再調査に挑むのは公選弁護人アーサー・レイヴン。 原題は“Reversible Errors”。これは法律用語で「破棄事由となる誤り」という意味で控訴審で一審判決を大いに覆すような重大な誤りを指す。 またさらにアーサー、ジリアン、ミュリエル、ラリーら主人公四人の現在における過去の、元に戻すことが出来る過ちを指している。 上巻の半ばで早くも真犯人がわかるのに、それからさらに二転三転四転五転の展開を見せ、新たなる真相をも準備してくれている。 もう満腹ですわ! しかし邦題のショボさはどうにかならないか。 トゥロー=四字熟語邦題に拘っているから、こんな題名になったのか? 一番食指を誘わない題名だな。勿体無い。 |
No.384 | 8点 | 有罪答弁- スコット・トゥロー | 2008/11/10 23:57 |
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最後の最後で+1点。
久々にカタルシスを感じた。 しかし、この主人公、とことん情けないなぁ。 実の息子や警察にオナニーを見られるなんて・・・。 それが、まさかこんな結末になろうとは・・・。 う~ん、トゥローはやっぱすごいわ。 |
No.383 | 6点 | 立証責任- スコット・トゥロー | 2008/11/09 17:24 |
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前作『推定無罪』で主人公サビッチの弁護人として快刀乱麻の活躍ぶりを見せたスターンが今回の主人公だが、前作とは打って変わって妻の自殺で始まる冒頭から肉欲に溺れていく凋落ぶり、はたまた長男ピーターに鼻で笑われるダメ親父ぶりをこれでもかこれでもかと見せつけ、結局スターンも“人”に過ぎないのだなと思わせる。
人間ドラマとして本書は最高の部類に入るだろう。 しかし、私は今回求めたのは“切れ味”だった。 スターンの、弁護士としてのそれ、物語としてのそれである。 しかし上にも述べたように人間ドラマとしては比類なき傑作だと思う。 スターンと同じ年齢に達して読み返すと、それは否応にも増す事だろう。 |