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Tetchyさん
平均点: 6.73点 書評数: 1602件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.862 5点 余計者文学の系譜- 評論・エッセイ 2010/10/03 18:37
非常に評価の難しい本だ。
これは所謂“反則本”である。本書は、単に作者が各雑誌・文庫などに書き綴ってきた解説・評論を寄せ集めて1つにしただけなのだ。従って時折、内容の重複が見られ非常に見苦しい乱暴な作りになっている。
しかし、内容はやはり北上次郎、面白いし、その読書作法には感心させられる。その広域な、悪く云えば手当たり次第な読書は、好きな物(者)は好きという実直さが見受けられる。
それが故に勿体無いのだ。

No.861 6点 本格ミステリ・ベスト100- 事典・ガイド 2010/10/02 17:17
毎年刊行される『本格ミステリ・ベスト10』の根幹を成すガイドブックであり、東京創元社が刊行した事もあってか、100冊の選出には些か首肯できない部分もある。批評を捏ね繰り回してその作品が選出された妥当性を捻出しようとしているようにも感じた。他にも選ばれるべき作品はあるはずなのだが…。
とは云っても私個人としては自らの読書の幅を広げる手助けにはなった。特に連城の一連の作品にはかなり食指が動き、本棚のスペースとのジレンマで身悶えしたほどだ。

No.860 2点 ミステリの原稿は夜中に徹夜で書こう- 評論・エッセイ 2010/10/01 22:31
本作が日本推理作家協会賞を受賞したのは、現在、雨後の筍のように乱立するミステリ評論家たちの、黎明を表す作品であるからだと解釈できる。つまり、片意地張らずにもっとざっくばらんに胸襟を開いてミステリを語ろうといった姿勢が当時最も斬新だったのだろう。
しかし、今読んでみれば単なる古本の収集狂の茶飲み噺である。
今であれば、北上次郎、池上冬樹などといったもっといい評論家はいる。確かにいまや伝説の如く語られている海外作品の多くは興味を惹かないでもないが。

No.859 7点 本格ミステリー宣言Ⅱ ハイブリッド・ヴィーナス論- 評論・エッセイ 2010/09/29 22:00
自らの考えを啓蒙する行為が如何に困難であるかをまざまざと見せつけられた感がある。言葉が魂を有するだけに各々の捉え方で誤解・曲解を生み、それに対する補足説明にも同様な効果が生まれ、さながらウロボロスの輪のようだ。
巨人は今、その只中で孤軍奮闘している。
しかし光は見えたように思う。山口雅也の、島田を指して「あなたはボブ・ディランなんだ」という一文。この一言で作者は大いに救われた。

No.858 9点 本格ミステリー宣言- 評論・エッセイ 2010/09/27 23:37
島田荘司ファンの私にとって、当時島田の本格に対する姿勢、各作品の創作裏話、そして島田推薦の新本格作家達へのエールが込められた、島田の本格ミステリ愛に満ちた1冊。
この時点ですでに新本格作家達と島田の本格に対する価値観の乖離が垣間見えるが、まだ蜜月の日々であったのは間違いなく、あの頃はよかったと回顧に浸れる1冊でもある。

この頃の島田の考えにはまだついていけたんだけどなぁ・・・。

No.857 5点 複雑系ミステリを読む- 評論・エッセイ 2010/09/26 16:57
今回の論説集は、当時巷間で話題に上った「複雑系」、特に図象学における「フラクタル」を素材にして古典的名作から昨今の京極夏彦、西澤保彦達の、所謂「ニューウェイヴ本格派」達のミステリの解体に勤しんでいる。
俎上に載せられた作品群が、前2作の論説集よりも肌に馴染んでいるせいもあり、またモチーフを「フラクタル」に絞っているため、理解はしやすかった。
だがやはり暴走しているという感は拭えなかった。極めの一歩手前の領域で衒学する事が、この作者に必要なのだ。

No.856 3点 翡翠の城- 篠田真由美 2010/09/25 22:33
なぜか毎回のめり込めない作品世界に加え、今回は非常に複雑な姻戚関係の一族の内紛が物語の中心であったため、いつもよりもさらに作品世界に入れなかった。登場人物の中には姻戚でありながら、冒頭に附せられた家系図に乗っていない人物もあり、途中で理解するのを投げ出してしまった。

ミステリとして読むべきなのか、キャラクター小説として読むべきなのか、非常に判断の困るシリーズである。どっちの方向にも中途半端な印象を受けるため、読む側も軸足をどちらに置くべきか非常に迷う。はっきり云ってミステリとしては凡作である。したがってコミケで桜井京介らの同人誌が一時期隆盛を誇ったという背景からやはりこのシリーズはキャラクター小説として読むべきなんだろう。好きな人は好きなんだろうな、この少女マンガ的探偵譚が。

No.855 2点 創元推理18- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/09/24 22:08
とうとう平凡な同人誌のような内容になってしまった。
目次を見ても食指を動かされるようなコラムはもはや無い。東京創元社で囲われた単行本一冊を物にしていない名も知らぬ新人どもの寄せ集めに何処の物好きが¥1,600も出すんだろうか?
また評論はますますマニアックになり、いわば「創元語」とも云うべき暗号の羅列に成り下がり、ますます排他性が強くなった。次に何を期待すればよいのだろう。

No.854 7点 深夜の散歩- 評論・エッセイ 2010/09/23 16:41
ミステリマガジン誌上で連載されていた『深夜の散歩』、『バックシート』、『マイ・スィン』を収録。
もし『深夜の散歩』が最後に来ていたら、断然10点をつけたであろう。そう、何よりも『深夜の散歩』が素晴らしかった、いや素晴らし過ぎた。特に第一回目は歴史に残る名コラムと云っていい。
それに比べると『バックシート』は文学論に走りがちだし、『マイ・スィン』は個性が強過ぎる。

さて、僕も深夜の散歩に出掛けるとするか…。

No.853 1点 世紀末ミステリ完全攻略- 事典・ガイド 2010/09/22 22:04
独り善がりが過ぎるぞ!
酔っ払いが書いたような解説が続き、何ら共感する部分が無かった。人に読ませる、自分の考えを啓蒙するのではなく、単に自己満足を、大いなるエクスタシーを得ようとマスターベーションを繰り返しているのだ!正にドラッグガイドブックだ!
ミステリ・ジャンキーにはお誂え向きなのかもしれないが生憎とこちらはそれほど病んでない。
こんな本で儲けようとする根性が気に食わないし、買った俺にも腹が立つ!

No.852 9点 推理日記Ⅴ- 評論・エッセイ 2010/09/21 21:22
「小説を読む」もしくは「小説を書く」ということが如何に困難であるかを思い知らされた。
しかし、佐野洋はここまで深く考えながら小説を読むのか…。ひたすら脱帽である。
特に視点の問題。これに関しては非常に参考になった。が同時に自分も以前のようには己の湧き出る文章に委ねて文章を書けなくもなった。
ここであえて10点とせず、9点にしたのは、そのくどいまでの追求性にある。「何もそこまで…」と感じる部分が随所に見られたからだ。
だが、このシリーズ、全て通読はしてみたい。

No.851 7点 歓喜の島- ドン・ウィンズロウ 2010/09/20 22:18
1950年代の夜霧の雰囲気漂うハードボイルド調と、またしてもウィンズロウの新たな一面に触れられる作品である。古き良きアメリカ。まだ夢が夢として存在し、誰もが成功する可能性を秘めていた時代がセピア色の文体で語られる。行間には常にジャズが流れ、男と女は本心を揺蕩わせながらその日を生きるムードが漂っている。

そんなウィンズロウの新境地を切り開く作品だが、それでもやはり今までの作品と同様に政治家のスキャンダルが物語の要素だというのもそろそろ飽きてきた。思えば第1作の『ストリート・キッズ』もこの次期大統領候補と目される上院議員の、スキャンダルを未然に防ぐだめに不肖の娘を確保するという内容だった。この政治的スキャンダルはウィンズロウ作品にはけっこう取り扱われているテーマであり、純粋にスラップスティック・アクションに徹した『砂漠で溺れるわけにはいかない』からウィンズロウの新境地への幕開けと思っていただけに本書のプロットは期待とは違ってしまった。

No.850 8点 ニューウェイヴ・ミステリ読本- 事典・ガイド 2010/09/18 00:29
新本格だけを焦点にしたミステリガイドブック。
だが新本格そのもの自体がマニアックな領域であるためか内容もマニアックなものとなっており、本来初心者のための案内書という意味でのガイドブックとしては不合格と云わざるを得ない。
その最たる一因は掲載されている評論が難し過ぎる。もっと平易に判りやすく出来ないものか。恐らく編者にしてみれば十分満足のいく一冊だろうが、それは編者の自己満足に過ぎない。

No.849 5点 これがミステリガイドだ!- 事典・ガイド 2010/09/16 21:40
『ミステリマガジン』誌上での連載評論を読んだときに著者に興味を持ち、半ばその反動に後押しされながら購入したのだが、やや期待外れの感が…。
確かに論客であるのは認めよう。だがあまりにも己の知に走り過ぎていやしまいか?抽象的表現が多くて要旨が掴みにくいのだ。それは過去に自分が読んだ本の書評に関してもそうだった。あとやたらと“世紀末”を煽るのもいささか気疲れがした。

No.848 5点 創元推理17- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/09/14 12:10
副題になっている『ぼくらの愛した二十面相』の脚本が想像を巡らせるだけで愉しいものだったが、しかし評論はもう少し解り易くならないもんかなぁ。ああいう堅苦しい評論を読むと、推理小説が如何に排他的で閉塞されたジャンルなのかをまざまざと見せつけられる。理解できる者だけついて来なって、それじゃあ余りにも冷たいでしょう。

No.847 8点 このミステリーがすごい! 傑作選 - 事典・ガイド 2010/09/14 00:34
「傑作選」と銘打ちながらも、内容は「覆面座談会集」に過ぎなかったことは残念。
それなのに8点を与えたのは、やっぱりそれでも面白かったから。
作者・出版社が丹精に仕上げた作品群を捏ね繰り回して、時には一笑に附すような傲慢さ、不遜さが顕著だが、それはそれ、人間の心の深い部分で誰しもが持っている負の部分をストレートに表現しているという点で、評価できるし、羨望すら感じる。

No.846 4点 シャーロック・ホームズの災難(下)- アンソロジー(海外編集者) 2010/09/12 21:40
下巻はユーモア作家たちと研究家諸氏によるパスティーシュが収録されているが、正直長編で「これは!」と思うものはなく、スティーヴン・リーコックの「名探偵危機一髪」、正体不明の作家A・E・Pの「シャーロック・ホームズの破滅」、医学博士ローガン・クレンデニングの「消えたご先祖」など一発オチのショートショートに光るものがあった。

このアンソロジーは歴史に埋もれそうになりつつあったホームズのパスティーシュを残すための文学的功績以外、その価値はないだろう。

No.845 4点 シャーロック・ホームズの災難(上)- アンソロジー(海外編集者) 2010/09/11 23:33
巻頭言によれば本書が世界で初めてのホームズパロディ短編集だそうだ。

全部で4部構成となっており、上巻には第1部探偵小説作家編と第2部著名文学者編が収録されている。

上巻では有名なモーリス・ルブランの「遅かりしホルムロック・シアーズ」と「稀覯本『ハムレット』」が個人的ベスト。クリスティやバークリー、そして編者のクイーン自身の作品もあるが、あまり出来はよくはなく、寧ろ肩の力を抜いて気楽に書き流している感がある。
高名な大家、マーク・トウェイン、O・ヘンリーによる作品はなんだかホームズの人気を妬んでいる節も無きにしも非ず。

う~ん、下巻はどうなんだろう?

No.844 7点 東西ミステリーベスト100- 事典・ガイド 2010/09/09 21:43
こうさんに云われるまで気付かなかったが、確かに新本格以前の、しかも東野圭吾登場以前のミステリシーンで、何がベスト100だったのかを知るのに貴重な1冊。
個人的には新本格を読んだ以後に手に取ったため、掲載されている作品に古さを感じたことが先に立ったので、この評価になってしまうが、今埋もれつつ名作を知る上でもずっと手元においていたい1冊。

No.843 3点 創元推理16- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/09/08 21:17
巻を重ねるごとに内容が乏しくなっていき、単なるマニアの会報になってきた。休刊になるのもむべなるかなといった感じだ。
本巻で定期購読は打ち止め。その後の内容は知らない。

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