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寿司芸者さん
平均点: 6.43点 書評数: 30件

プロフィール | 高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.30 6点 震度0- 横山秀夫 2026/09/17 13:39
地方警察本部の範囲に留めたが故に、非常にリアルな権力闘争劇が描かれている。

キャリア×ノン・キャリアという良くある構図に陥らせず、
意味を求めにくい準キャリア、均質なだけに微差に激しく競る地元部長、キャリア間対立(東大VS私大?)、
更には、熟年夫婦のそれぞれ迄を複雑に交差させた人物配置の妙で、一気に読ませてくれる。

5番アイアンが最大のヒントだったということか。
それにしても冬木部長は立ち回りが小物。。。

いや、しかし最大の不満は、阪神淡路大震災という遠景が全く機能していないことではなかろうか。
ここは期待外れだったなぁ。

No.29 7点 凶犬の眼- 柚月裕子 2026/09/16 14:03
順当な続編。前作の。

日岡の手柄譚。なぜガミさんの後継と世に見られるかの背景付けとして妥当、納得。
なぜ国光がいきなり、そこまで入れ込んだのかは不透明だが。

事実に基づくセミ・ドキュメンタリーとのこと、クライマックスはフィクションだろうが疾走感よし。
順当な続編だけに、前作を読んだ人にしか刺さらないだろうなぁ。

No.28 6点 氷菓- 米澤穂信 2026/09/10 19:55
まぁラノベ。けして悪くない意味で、青春ラノベ。

全員が文献(?)を持ち寄って、パズルのように推理を組み立てる場面は面白かった。
きっと後の作品のどれかで、ブラッシュアップして換骨奪胎して生まれ変わらせているのだろう。

ってぐらいに、国民的作家の若く青き頃を垣間見ることができる、好事家には垂涎の逸品。
やぁ、良かった良かった。

No.27 8点 64(ロクヨン)- 横山秀夫 2026/09/07 10:09
対立構造の妙、劇中劇の驚、家出話の残響。
実によく練られた逸品。

キャリアVS県警、刑事部VS警務部、広報官VSマスコミという対立は判り易い、が安直だ。
警察内部に、マスコミ接点に長けた横山氏は流石だ。重層的に組み合わせて、味わい深い対立を構成した。

14年前の誘拐は本作の主題だ、きっと解決されるのだろうとは予想する。
しかしまさか、新たな誘拐を発生させて、14年前をなぞらせながら真犯人を焙り出すとは驚天動地。

そこまで練り上げながら、文庫で上下2巻を費やしながら、プロローグの家出話は終息しない。
え、帰って来ないの? 悲劇展開は避けたいぜ? なんか心の整理的な描写は付けてたけど...

それが残響となり、読後も鳴り続ける。
実によく練られた逸品...

No.26 8点 孤狼の血- 柚月裕子 2026/08/20 13:10
キャラが良い! みな魅力的。
悪徳な大上、陰のある晶子、天才児一ノ瀬、次代を継ぐ日岡…
彼らの会話と動きを読むだけで満足いく面白さ。

ミステリーとしては特に謎は無く、ラストの仕掛けもふーんって感じ。
そこが本作の魅力でも重点でもないのだろう。

刑事×ヤクザ×あの時代! この掛け合わせで独特の空気感が濃密に造られている。
女性の筆とは思えぬ圧巻のピカレスクでした。

最後、次世代にキチンと継がれる展開は嬉しかった。
読むしかないだろう、後2冊ある続編もっ!

No.25 6点 眼球堂の殺人~The Book~- 周木律 2026/08/04 11:30
堂に回転機能と水没機能が備わっているのはダイナミックで奇想、お見事。

序盤の立面図から何かトリックがあると疑って読んだが...”死角で見えない柱”って必要だったかな?
各柱はどれも館から見て裏側があるのだから、そこに幾らでも隠れ部屋は設けられそうだが...。
メイントリックに瑕疵があると興が削がれるなぁ。

全体的に冗長な文章であり、表現も恥ずかしい箇所が多い。探偵像も厨二的だ。
今後に期待!

No.24 7点 ルパンの消息- 横山秀夫 2026/08/04 10:36
ミステリーの面白要素がテンコ盛り! 読書コスパ抜群って感じ。
スパイ大作戦、3人の並行聴取、迫る時効、レズビアン、盗聴、三億円事件......え?三億円事件っ!?

供述される過去と捜査が進む現在を往復させながら、満載の要素を開示していく秀逸な構成。
なのだが、実際の三億円事件と絡めたのは好みが分かれるところ。
しかも「真犯人」という設定だしね。ちょっと興覚め。

鮎美と橘ということにして、幸子の正体告白という締めでも良かったんじゃないかなぁ。
ハイドによる凌辱も必要だったかなぁ、好みではない要素。
名手横山秀夫も若かったということか。

_____
橘が”古い金庫”から開けた描写、俺もおかしいなと引っかかってはいたんだけどなぁ~。
引っかかり止まりだったなぁ、閃光が走らなかった......。

No.23 5点 クライマーズ・ハイ- 横山秀夫 2026/08/04 09:10
いわゆる「ミステリー」ではない。
魅力的な”謎”も”謎解き”もない。

新聞社内パワーゲームの詳細描写や史上最大事故の緊迫した展開は、確かに読み応えがある。
しかし、それが読みたかったわけではない。
また、主役である悠木の優柔不断と無計画さ、そして昭和仕草には辟易させられる。
実在しそうにリアルだからと言って、小説を読んで眉を顰めたいわけでもない。

「山は誰をも正直にし、登山は素晴らしい」論を持ち出すのは別にいい。
であるならば、山での告白を利用して、大仕掛けの謎をスルスルと解きほぐす構成が読みたかった。
現代と17年前、山と下界、二つの時空差を利用してトリックを仕掛けて欲しかった。
名手横山秀夫モノとして大きく不満な一作。

______

いわゆる「悪いやつ」を敢えて挙げるとするならば、
悠木をデスクに据えた局長の粕谷が、手腕的に一番「悪い」かな......。

No.22 8点 第三の時効- 横山秀夫 2026/07/28 23:33
むうっ、面白い。出色の出来。

全六篇の短篇集、事件やトリックに相互のつながりは無い独立小品。
しかし! 読み通せば浮かび上がる、我を張りながらも通底で絆を見せるF県警強行犯の絵巻物。

三人の班長がいい。「理詰め型」の朽木、「謀略型」の楠見、そして「閃き型」の村瀬。
事件のリアルさも良い、小気味よく曝されるトリックも見事、だがそれ以上に、三人と三つの班の、浮かび上がる競争心、猜疑心、巧妙心、…そして最後に団結心。
『花を持たそうとしたのだ、退官間近の伴内に』という部分、ムネアツでしたねぇっ!

何かに似ている、この読後感とムネアツ感と思ったら、少年漫画『キングダム』に瓜二つ!
そこに気づけば、おおっ、もっとだ、もっと読みたいぞと中毒の様に求めてしまう。
だがしかし…いまだF県警強行犯シリーズがまとまった文庫はこれ一冊のみだ。。

残念過ぎる、だから期待している。次の短篇集を、いやなんなら大長編でもいいぞ!
刑事部長や課長の代替わりまで描く大河叙事詩になってくれっ!

No.21 7点 葉桜の季節に君を想うということ- 歌野晶午 2026/07/23 11:12
活劇風にサクサク展開するので読み易いし、普通に面白い。

年齢の叙述トリックにはまるで気付かず、結局「綾乃の孫娘」ワードの出現まで掛かった。
「おじいさん」「おかあさん」呼びや、唯一老年と判明していた「節子」を偽名で当初から登場させていた等のトリックは「ほー」と感心しながら楽しめた。

しかし、老年でも意気軒高を示す描写が少々あざと過ぎるか?
色恋ぐらいは良いとして、高校の先輩後輩だ、来年に大学受験を控える、あげくは丸山町で売春だと…
あまり気持ちよく鮮やかな騙し方ではないよなぁ、と。

そして何より不可解だったのは、過去のヤクザ潜り込みパートは要りますか?
活劇要素だというのは分かるが、何かしら現代の活躍や謎に紐づいているべきではないか?
もう一つ繰り返される土葬墓の掘り返し描写も意味不明、士郎さんを埋めた時の描写?要る?
読み込めてないのかもだけど、この辺りがカシャカシャカシャッと嵌ってくれると
うおーっ、傑作だ、気持ちいいーって感じたと思う。

作者の意図や、評者の解説などあればぜひ読んでみたいもの。

No.20 8点 13階段 - 高野和明 2026/06/13 18:31
2人の青年にまつわる2つの筋が絡んでいく展開はスリリングで読み応えある‼️

ミスリードを味わったのも満足度高いし、バディ旅行記めいた設定も読んでいて小気味良い。ただ、キーコンセプトであるはずの「階段」の位置付けは少々物足りなかった、もっと謎の根幹かと期待したのに。。

悪事を働きし者達がほぼ皆応報を受けていて、読後の納得感は高いが、それでも冤罪で10年収容の樹原と完全被害者の友里は救われないなぁ。。

No.19 8点 メインテーマは殺人- アンソニー・ホロヴィッツ 2026/06/10 13:30
緻密な構成。面白い。読後にペラペラと読み返したくなる魅力もあり。

巻末解説にもあるが、「情報の渡し方と組み合わせ方」が秀逸!
69頁の”語られない第五の鍵”と170頁の”息子による母の回想”とが、239頁の”鍵がスイッチを入れる瞬間”につながるとかね。
知的エンターテイメントっ!

が、しかしフェアかというと疑問は残る。RADAの集合写真まで読んだとて、果たして真犯人を突き止められる読者はいるものか?
「芝居好きなのは血筋かしら?」で察しろと…? 『十二夜』の登場人物って、『レアティーズ』からのスペル自動修正機能って…。

う~ん、教養が足りないな。。

No.18 7点 君のクイズ- 小川哲 2026/06/02 13:33
巧緻な構成! ゼロ文字押しが、次第に高い蓋然性を帯びていく過程はスリリングな知的遊戯っ! ただ結局は、メタ的状況から読み解いた、というのは平凡な結論でもある。それでも、とても読み易いし満足度の高い逸品!

No.17 8点 新参者- 東野圭吾 2026/05/31 15:57
くわぁー、気持ちいい快作っ!
サクサク、パチパチと、パーツ同士が小気味よくハマって完成するEasy Gradeのガンプラみたいな逸品

商店街の古き良き日常がウェルメイドに描かれる短編が8本続く、
それぞれ無関係な小さな事件と謎が解き明かされるに従い、
大きなメインストーリーと謎が立ち上がり第9話で綺麗に収まる

理系な作品(?)かな、脱帽の構成力でした。お勧め!

No.16 5点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2026/05/14 15:32
叙述とまでは言えない描写。読み易くて、まぁ楽しめた。
総出で大掛かりに仕掛けているのは悪くないが、ただ起点となる犯罪性が薄いだけに、隠された真実なども乏しく、また意外性にも欠けており、ミステリーとしての満足度はイマイチ。謎解きらしき部分も少なかったかな。

No.15 9点 かがみの孤城- 辻村深月 2026/05/13 00:37
繊細に、それでいて周到に描かれた傑作。
ミステリーではないかもしれないが、それはどうでもいい程の傑作。
安易な展開に逃げ込まず、7人、いや8人全員を闘士として描いた力作。
今も昔も、未来も、若者は傷付きながらも闘い抜くのだという青春賛歌にして応援歌。

No.14 7点 ロートレック荘事件- 筒井康隆 2026/05/06 17:49
雰囲気のある文章。技巧に富んだ作品。
本トリックのオリジナルともいえる一作であり、今呼んでも読みごたえはある。
しかし、章ごとの「おれ」が異なる表記は・・・いまひとつ納得できず。
アンフェアとまでは言えないが。。

No.13 8点 『アリス・ミラー城』殺人事件- 北山猛邦 2026/05/02 17:00
重厚、芳醇、面白い!

探偵同士の対決感もあり、古城の雰囲気もあり!
まぁまぁ納得のトリック満載。少々、物理トリック多すぎるか?

・・・しかし、まぁ、最後は叙述、ということ?

No.12 9点 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 2026/04/27 18:00
圧巻!
ほんとうに、たったの1行で世界をひっくり返してみせてくれた。
全く予想だにしていなかった構造に震えます。

文章や語り口も、作者若かりし頃の作品でありながら、
落ち着いていて読み易く、雰囲気を感じさせてくれた。

一点、「二十八日午後十時四十五分」の表記だけわからない。なぜだ……?

No.11 6点 盾と矛- 方丈貴恵 2026/04/24 11:44
良作だとは思う。

探偵側と隠蔽側が競う設定は独創的であり、推理で明らかになる事実は意外性に富んでおり、テンポよく読めて、楽しめた一作。ラスト、もうひと捻りの展開があれば、更に満足でした。

文体や描写には、幼さを感じる個所も多々。”ミステリーはトリックが醍醐味”は否定しないが、軽く浅く見えてしまう描写は雰囲気を壊してしまうのも事実。


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