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ʖˋ ၊၂ ਡさん
平均点: 5.92点 書評数: 96件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.16 9点 虚無への供物- 中井英夫 2021/12/31 11:17
過去のミステリの名作が次から次へと引用されるので、古典的名作を読んでいないと、面白さは半減するどころか、登場人物が話している内容が理解できないだろう。また、これまでの推理小説の壮大なパロディとも考えられ、その意味でもアンチ・ミステリである。
登場人物の名前からして嘘っぽく、いかにも「虚構のお話です」という体裁だが、実はそこに作者の仕掛けがあり、メタ・ミステリの元祖と呼ばれる所以となっている。「現実と虚構」をテーマにした純文学としても読める。大長編だが、全編のほとんどが会話なので読みやすい。

No.15 4点 ドグラ・マグラ- 夢野久作 2021/12/31 11:06
精神病院を舞台にしている。事件としては、解放治療を主張し、病院を解放治療の場とした正木博士の、胎児の時に体験した先祖が起こした歴史的な事件を呼び起こして、同じシチュエーションで人を殺せるというものである。
探偵小説というより、不可思議な話である。精神医学、心理学などの理論が煩わしいくらい展開する。

No.14 6点 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? - 詠坂雄二 2021/10/18 15:17
とある事件の犯人と関係者の日常を、心理描写も交えて淡々と描くこの小説は最後の謎が解き明かされる直前まで、まるで犯罪実話のような展開。
ところが「なぜ大量殺人鬼である犯人がこの事件に限って被害者の首を切っただけなのか」という謎の解明になったとたん、本格ミステリ的カタルシスが訪れる。
確かに意表を突く真相だが、これを効果的にいかすだけならば、もっと別の書き方にしてもらいたかった。

No.13 9点 女王国の城- 有栖川有栖 2021/10/18 15:08
姿を見せない名探偵、江上二郎を探しに宗教団体の聖地「神倉」を訪れた後輩たちが殺人事件に遭遇し、囚われの身となるのが発端。
入れない、出られない不思議な城で起きる連続殺人の呈示と謎解きの鮮やかさ。
城がなぜ存在しなければならなかったかという理由、犯人の指摘の論理が明快なだけでなく、バイクによるアクションシーンもあり飽きさせない。濃密な世界を堪能させてもらった。

No.12 7点 試行錯誤- アントニイ・バークリー 2021/08/06 16:46
心臓病で余命幾許ない男が、社会に害をなす人間を殺害すべく奔走し、挙句は無実の男を救うために自分を有罪にしようと裁判を起こすという破天荒な物語。
全編ブラックユーモアに満たされているのに、後味はやたらと良いという不思議な作品。

No.11 5点 沼地の記憶- トマス・H・クック 2021/08/06 16:35
過去と現在を曖昧にするような描写が顕著。回想から現実にさりげなくて滑り込ませている。かなり読みづらい。
モザイクのように描いて、情報を小出しにして、最後に一つの絵を見せるという手法は美しいし、本格の手法ではあるのだが…

No.10 7点 シンプル・プラン- スコット・B・スミス 2021/08/06 16:25
プロットは単純で意外性や謎解きの楽しみは薄いが、オハイオ州北部の片田舎で平凡に暮らす新婚の男が、ちょっとしたきっかけから、次から次へと自分の意思とは別に深みにはまっていく過程を怖いほどに見事に描いている。
小説の中の物語が私たちの日常生活でも起こり得るのではないかという臨場感、恐怖感がすごい。

No.9 7点 ホワイト・ジャズ- ジェイムズ・エルロイ 2021/07/22 14:33
主人公の悪徳刑事クラインの一人称を通して描かれる。異常に短く、記号で切り刻まれた電文のような文体によって、より物語はスピードを増し、四部作全体を通して、物語の水面下で進んできた最大の陰謀へと突き進む。
四部作のラストを飾るにふさわしいカタルシスを味わえる作品。

No.8 8点 第二の銃声- アントニイ・バークリー 2021/07/22 14:24
殺人そのものは単純なもので、入り組んだトリックなどとも無縁だが、丁寧にこしらえた設定ゆえに、前提が一つ変わるだけで推理も大幅な修正を強いられる。そのどんでん返しにも似たダイナミックな方向転換が読みどころ。結末は予想をはるかに超えてくる。

No.7 8点 毒入りチョコレート事件- アントニイ・バークリー 2021/07/22 14:15
一つの事件について六人の探偵役が六つの推理を示すという趣向が絶妙で、日本でも多くの追随作品が生まれた。
その魅力とは、仮説構築とその崩壊が繰り返される快感だろう。難解なパズルに挑む時の思考、ある種の悦楽。後のブランドやデクスターの作品にも見られる、本格の醍醐味の一端を明示した記念碑的作品。

No.6 8点 満願- 米澤穂信 2021/06/29 17:31
人の願望が、謎を呼ぶ。人間の醜さ、愚かさが怖いほど迫ってくる。作者らしいほろ苦さも味わえる。

No.5 7点 王とサーカス- 米澤穂信 2021/06/29 17:23
正しさとは何か。誰も傷つけず、傷つかず幸せになることは出来るのか。幸せの裏に必ずしも悪がないとは言い切れない。深く考えさせられた一冊。

No.4 6点 アイネクライネナハトムジーク- 伊坂幸太郎 2021/06/29 17:13
登場人物が皆、現在、過去、未来のどこかでつながっている。悲しい話や別れもあるが、自分の価値観や運命を見つめ直し、幸せを感じることができる心地よい読後感。

No.3 7点 新参者- 東野圭吾 2021/06/14 16:19
迷路の出口を巡るドアを開き続けるように、事件の真相を探る加賀刑事。しかし、いくら開いても見えないものがあり、それが下町ならではの人情。江戸情緒が残る日本橋を舞台にしたことには大きな意味があるのでしょう。広い世代に好まれるミステリだと思う。

No.2 8点 追想五断章- 米澤穂信 2021/06/14 16:11
5つのリドルストーリーの意外な繋がりと、そこに秘められた意味をたった一行の結末で知る時に物語がひっくり返る。本好きにはたまらない要素たっぷりの一冊。少し湿り気を帯びた主人公の造形がリアルで、彼の行き先がとても気になった。

No.1 6点 ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。- 辻村深月 2021/06/14 16:03
母の呪縛から逃れられない娘の人生は、自分自身のことなのかもしれないと思わされた。タイトルの意味が分かったときは、目にこみ上げるものが。特に女性におすすめですが、女性を理解したい男性にも是非。

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