皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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弾十六さん |
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平均点: 6.13点 | 書評数: 459件 |
No.15 | 6点 | どもりの主教- E・S・ガードナー | 2018/11/04 17:52 |
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ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第9話。1936年9月出版。ハヤカワ文庫で読了。 22年前が1914年と明記。舞台はLAとSF。レインコートで雨に濡れる登場人物の姿が印象的(皆、傘をささない) ドレイクは風邪をひき、p.125でAge before beautyとのセリフ、やはりメイスンより年上?自動車はステップが立派な30年代のもの。メイスンの冒険は控えめ、バーガーもまとも、ホルコム出番なし。誰もが嘘をついているように思える技巧的な筋立てですがギリギリ成立し、パズルのピースが上手く嵌ります。 ハヤカワ文庫では、ラスト後、助手ジャクスンが顔を出し第11話に続く…実は差し替えで米初版はちゃんと第10話に続きます。 銃は32口径コルト自動拳銃(M1903ですね)とメーカー不明の38口径リヴォルヴァが登場。 |
No.14 | 5点 | 検事方向転換す- E・S・ガードナー | 2018/11/04 08:46 |
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ダグラス セルビイ第6話。1944年1月出版。Country Gentleman誌連載(1943-11〜1944-3)
犬を連れた検事。名前を当てたのはパーキンス。傘を持ち歩くのは男らしくない。戦時色が1カ所だけ、コーヒーは贅沢品で配給券のことを心配するセルビイ。A.B.C.の邸宅初登場。召使いはフィリッピン人です。法廷シーンはありません。ガードナーらしく起伏に富んだ話ですが、A.B.C.との対決もあまり盛り上がらず、解決は唐突です。 |
No.13 | 6点 | 夢遊病者の姪- E・S・ガードナー | 2018/11/04 08:37 |
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ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第8話。1936年3月出版。ハヤカワ文庫で読了。 Jackson2回目の登場。「事務員」と訳されていますが原文ではlaw clerk(弁護士の助手、書記、事務員、法修習生などの意味)と表現されています。(前作ではyoung lawyer) 見張りや尾行もこなしており、後年の「前例至上主義者」の弁護士とは別人のような活躍。受付のスミス嬢と呼ばれた女性は、この作のみの登場。ブラックストーンの大理石像(お気に入りの帽子掛け)が初登場。物語の舞台がカリフォルニアの実在の地名(ハリウッドとサンタ バーバラ)なのはシリーズ初。謎がうさんくさくて(夢遊病って…)メイスンの行動や策略も控えめ。ホルコムやバーガーとの掛け合いも低調。ちょっとヒネリの効いたネタですが… なおサッジャー博士の「夢遊病と月光」Sleep Walking and Moon Walking: A Medico-Literary Study by Dr. J. Sadger of Viennaは架空の書物ではなく、独初版1914年、英訳1920年の実在本。 |
No.12 | 7点 | 検事鵞鳥を料理する- E・S・ガードナー | 2018/11/04 00:32 |
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1942年1月出版
ダグラス セルビイ第5話。Country Gentleman誌連載(1941-9〜1942-1) 赤ん坊の世話をする検事セルビイ。A.B.C.再び登場、セルビイはその才能に魅せられます。ボブ テリイは保安官補に昇進。法廷シーンは検屍審問。ブランドン夫人にせっつかれ、セルビイは経略をたて、真相に至ります。解決は鮮やか。 銃は保安官の牧場時代の古い45口径、ブランドン夫人も銃は得意のようです。 |
No.11 | 8点 | 門番の飼猫- E・S・ガードナー | 2018/11/04 00:08 |
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ペリー ファン評価★★★★★
ペリー メイスン第7話。1935年9月出版。Liberty連載(1935-5-15〜9-17) ハヤカワ文庫で読みました。 カール ジャクソン初登場。(one of his assistants, young lawyer) バーガー検事とのやりとりから「義眼」のすぐ後の事件です。冒頭2章ですぐに戦闘モードに入るメイスン、この流れが良いですね。本作はデラがシリーズ中随一の大活躍。(メイスンとデラの歳の差about 15と言う場面あり、ただし冗談めかしているので事実では無いかも) 休暇はN.Y.K. Line(日本汽船)でホノルル、ヨコハマ、コーべ、シャンハイ、ホンコンへ…とデラがメイスンに勧めていますが、これは後年実現されます。ちょっと腕を上げたホルコムとのドタバタ。とてもまともな判断力のバーガー。メイスンの策略は結構合法的。法廷では意外な証人が召喚されます。ところでFranklin teethはベンジャミン フランクリンがつけてたような古い義歯という意味? |
No.10 | 6点 | 検事出廷す- E・S・ガードナー | 2018/11/03 03:48 |
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ダグラス セルビイ第4話 1940年6月出版 Country Gentleman誌連載(1940-4〜6)
「燭をかかぐ」の18カ月後の事件。物語の舞台はマジソン郡の日陰、"川の南側"の町、ラス アリダス。マジスン シティに特急列車はとまらない。シルヴィアは6Bの鉛筆を使う。アイネズ再び、セルビイにつきまとい、シルヴィアをイライラさせます。検屍官パーキンスは今回の事件でセルビイ側に。法廷シーンは大陪審と陪審裁判。大陪審の陪審長は敵方でセルビイは苦戦、陪審裁判ではアイネズ弁護士と戦います。ちょっと入り組んだ筋立てですが、解決は割とスッキリしています。誠実に正義を追求するセルビイなので、メイスン流の派手なトリックプレイを期待してはいけません… 銃は38口径の銃(詳細不明)と保安官の大きな牧場用の拳銃が登場。レックスは銃の名手のようです。 |
No.9 | 6点 | 義眼殺人事件- E・S・ガードナー | 2018/11/03 03:35 |
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ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第6話。1935年4月出版。創元文庫で読了。 義眼講座から始まる物語。ホルコム刑事とのドタバタ劇は初期シリーズの名物。バーガー初登場。後年の「メイスンが憎い」狂人ではなく、無実の訴追を恐れるまともな地方検事です。メイスンの策略は無茶。(やってはいけないことを平然とやってしまいます) でも、この位のが面白い。 同時に3丁の銃が現れる豪華な事件です。一つは38口径コルト ポリスポジティブ(翻訳では「警察用の38口径のコルト」「コルト警察拳銃」)、二つ目は38口径S&W リボルバー、三つ目はショルダーホルスターに入った型式不明の拳銃。今までピストルと言えばコルトだったこのシリーズですが、やっとS&Wが出てきました… 幕切れにもオマケの45口径リボルバーが登場。ホルコムが男をあげて幕。 (以下2021-9-5追記) 実はcounterfeit eyeには「義眼」という意味はない。全文検索したが、この小説の本文でも「義眼」は glass eye または artificial eye。本文に11箇所出てくる counterfeit (eye) は全て「偽の(義眼)」を指している。調べるとcounterfeitには「偽造」の意味が強く、悪いニュアンス付きのようだ。なので新版を出すときは『偽造の眼球』を推します! |
No.8 | 7点 | 奇妙な花嫁- E・S・ガードナー | 2018/11/01 22:54 |
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ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第5話 1935年11月出版 Liberty連載(1934-7-7〜9-15) 創元文庫で読了。 curiousは知りたがりの意味が強いのでは?意地悪メイスンが冷たい対応を後悔して依頼人を探すことになる冒頭の流れが良い。かなりの危ない橋を渡りきる手腕(やり過ぎです…)が見ものです。そしてメイスンが泣く!(多分シリーズ唯一) 銃は32口径コルト自動拳銃、シリアル3894621が登場。WWIIのM1911A1を除きコルト社の拳銃で7桁シリアルは実在しないようです。389462の誤りと仮定するとM1903 Pocket Hammerless, 1921年製が該当。 最初の裁判は検察が間抜けすぎなので★一つ減点です。なおメイスンがカリフォルニア州の判例を使っており、ここで物語の舞台が加州であると初めて明示されました。 |
No.7 | 4点 | 検事円を描く- E・S・ガードナー | 2018/11/01 21:54 |
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ダグラス セルビイ第3話。1939年11月出版
やっと敵役の悪徳弁護士A.B.カー登場。55歳くらいのとても悪賢い男。保安官レックスは相棒だが警察署長ラーキンは敵側という関係。保安官の捜査権限が良くわかりません… 敵方新聞のボスも初登場、なかなかの策士です。前任検事ローパーも初めて顔見せ。五里霧中なのに誠実に正しくあろうとするセルビイ、その高潔さに周りは呆れ顔。 お待ちかねの法廷シーンが登場しますが、カー弁護士の狡猾さは紹介程度。今回のプロットは複雑さが少なく、解決も出来があまり良いとは言えない感じです。 銃は38口径リヴォルヴァ「コルト・ポリース・ポジティヴ」が登場。中桐先生は訳者あとがきでも「クラリオン新聞は朝刊紙で、ブレード新聞は夕刊紙」という鋭い分析を披露しています。他にも38口径のスミス・アンド・ウェッスンのリヴォルヴァ、保安官の45口径が登場。弾丸はピーターズ会社とウインチェスター会社のものが出てきます。 |
No.6 | 8点 | 吠える犬- E・S・ガードナー | 2018/10/31 21:26 |
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ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第4話 1934年6月出版 Liberty(1934-01-13〜1934-03-17)連載。創元文庫で読みました。 実はシリーズ第3話で、雑誌連載の都合上「幸運の脚」の後の出版となりましたが、冒頭を読めば「怒りっぽい娘」の次の話であるのは明白) 異常と疑われる依頼とメイスンの過剰な対応で冒頭からすぐに引き込まれます。ドレイク探偵局が活躍しすぎないのが良く、メイスンの大胆な行動(完全にやり過ぎです…)が痛快。意外と本格的な推理もあります。タフガイ刑事ホルコムは今作が初登場。フランク エバリー君がメイスンの陪審論を拝聴します。 作者もお気に入りの作品らしく、第10話や第18話など後年のシリーズ中で「吠え犬」は度々言及されています。 なお次の話に繋ぐラストの予告編は10作目まで(本国初版では)ちゃんと続いているのですが、ペーパーバック化に際して別のと入れ替えたり、再版時に削除されたりで、翻訳では結構バラバラになっちゃっています。 |
No.5 | 6点 | 検事燭をかかぐ- E・S・ガードナー | 2018/10/31 20:41 |
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ダグラス セルビイ第2話。1938年11月出版 Country Gentleman誌連載(1938-9〜1939-1)
検事になる前の弁護士時代のセルビイは富豪の娘アイネズとテニスや乗馬を楽しむ仲、新聞記者シルヴィアはアイネズをライヴァルと見なしているようです。証拠もないのに突っ走るセルビイ。二転三転する筋書きは作者お得意のもの。無謀な若き地方検事の突撃は吉と出るのか?ラストの対話が結構意外でした。なお、法廷シーンは今回も出てきません。 小さな町の物語なのでレギュラーキャラがこれからも増えていくのかな?と今作を読んだ時には期待してたんですけどね… |
No.4 | 8点 | 幸運の脚- E・S・ガードナー | 2018/10/30 20:55 |
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ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第3話 1934年2月出版 創元文庫で読みました。 目まぐるしい展開でタクシーや飛行機を使い飛び回るメイスン。何度も追い詰められますが、あの手この手で切り抜けるところが非常に楽しいです。残念ながら法廷シーンはありません。 メイスンのタバコはマールボロ。15章でメイスンが田舎者風に喋るのですが(Thash=That's, Shalesman=Salesmanなど)これはどこ訛りなのでしょうか。 ところで数回「ロスアンゼルス」と訳文にありますが、原文ではthe city(p11)とかhere(p86)とかで明言を避けています。意味のない補い訳はやめて欲しいですね。(ハリウッドという単語も出てきません。内容的にはバレバレですけど…) |
No.3 | 6点 | 検事他殺を主張する- E・S・ガードナー | 2018/10/29 20:49 |
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ダグラス セルビイ第1話。1937年1月出版 Country Gentleman誌連載(1936-9〜1937-1) 連載時のタイトルはThe Thread of Truth。
メイスンものでは間抜けな敵役のD.A.を主人公にして、どんな話になるのか、そこが興味深かったのですが、本作には法廷シーンが無く、ちょっと拍子抜け。ガードナー得意の複雑に入り組んだ筋立てで、サスペンスの盛り上げ方は上手です。地味で真面目な主人公ですが、公務と自分に忠実な姿は、わがまま放題、金使い放題の自由人メイスンより好感が持てます。でもやはり主人公に華が無いのは残念ですね。 |
No.2 | 7点 | 怒りっぽい女- E・S・ガードナー | 2018/10/29 20:22 |
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ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第2話 1933年9月出版 ハヤカワ文庫で読みました。 デラはabout twentyseven。この頃のメイスン事務所の従業員はデラ(タイピスト、速記者兼秘書: a typist, Della Street, combination stenographer and secretary この順番がちょっと意外でした…)と見習い弁護士のフランク エヴァリー(今回、ちょっとだけ活躍)の二人だけ。本作には事務所の間取りの紹介もあります。(応接間2つ、図書室、速記室、私室2つ) ドレイク登場は12章から、この位の塩梅が良いですね。(ドレイク探偵の尾行講座や意外な過去も語られますのでドレイクファンは注目) 前作と異なり、本作ではメイスンが無敗(絞首刑なし)を自慢しています。法廷場面はシリーズ初。異例の弁護が炸裂します。ハヤカワ文庫のカヴァー絵の車は時代が違いますね… (どう見ても1950年代の車です) |
No.1 | 7点 | ビロードの爪- E・S・ガードナー | 2018/10/27 11:22 |
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ペリーファン評価★★★★☆
1933年3月出版。ペリー メイスン第1話。 弁護士が行動派探偵という設定は先行例があったのでしょうか?開始早々にパンチを繰り出す荒ぶる弁護士、それが初期ペリーです。デラはapproximately twenty sevenで、シリーズ唯一ちょっとだけ生い立ちが語られます。デラのセリフでI've known you [Mason] for five years (...) Some of your clients got hung. ということはメイスンは無敗ではなかった?今作ではメイスンの無茶な行動は控えめですが、依頼人に翻弄されながらも上手く切り抜ける姿が見もの。法廷場面はありません。ところで私が見た原文では、デラの人物紹介がDella Street – who was a faithful Girl Friday (also Sunday and Monday, if not quite always).となっていました。(正しい意味がよく判りません…) 銃は32口径コルト・オートマチック、シリアル127337が登場。シリアルから判断すると1912年製のM1903 Pocket Hammerless, Type IIIだと思われます。 ところで原文にはロサンジェルスもカリフォルニアも出てきません。(いつ明示されたかは、その作品の評に書くことにします) |